情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

日本政府が国民を小馬鹿にしたある事例~証拠隠滅のおまけつき

2006-09-03 00:24:41 | 適正手続(裁判員・可視化など)
共同通信(←クリック)の【朝鮮戦争の際、北朝鮮沖で機雷の掃海作業中に死亡した元海上保安庁職員の遺族が「国に殉じた戦死者だ」として靖国神社に合祀(ごうし)を求める申請書を提出したが、拒否されていたことが2日、分かった。】という記事に【合祀を申請したのは、弟の坂太郎さん=当時(21)=を亡くした大阪市浪速区の会社役員、中谷藤市さん(79)。中谷さんによると、坂太郎さんは1950年10月、極秘編成された海上保安庁の特別掃海隊員として北朝鮮沖に出動し機雷に触れて死亡。しかし戦争放棄をうたう憲法が施行されていたため同庁は口外を禁じ、事故記録も廃棄されたという。】との記述がある。

この件の詳細は,中国新聞の特集(←クリック)で,次のように書かれている。

■■引用開始■■

「海の神様」で知られる香川県仲多度郡琴平町の金刀比羅宮。五月二十七日、山口県大島郡沖浦村(現大島町)出身の中谷藤市さん(73)=大阪市浪速区=が長い石段を上った。海上自衛隊が毎年、旧海軍記念日のこの日に営んでいる掃海殉職者慰霊祭に出席するためだ。

 ●大島出身者

 一九五〇年、中谷さんの弟、坂太郎さん=当時(21)=は海上保安庁の機雷掃海隊員として、極秘裏に朝鮮半島沖に出動した掃海艇に乗り組んでおり、十月十七日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)元山沖で機雷に触れ、亡くなった。

 金比羅山にある掃海殉職者の慰霊碑には、戦後、瀬戸内海などで機雷を除去する仕事で死亡した七十九人の名が刻まれる。その中に、坂太郎さんもいる。だが、ただ一人の「戦死者」であることは記されていない。「弟が朝鮮に行ったことは当時、固く口止めされた。最近でこそ堂々と話せますが…」。中谷さんは、弟の名をなぞった。

 「下関に集結せよ」。五〇年十月初め、日本各地の海上保安庁の掃海部隊に、指令が下った。朝鮮戦争に派遣する「日本特別掃海隊」編成のためだった。

 開戦当初、北朝鮮軍は進撃を続け、釜山近くまで達する。九月、米軍を主体とする国連軍は反攻を開始。元山上陸など重要作戦に欠かせないのが、北朝鮮軍が敷設したソ連製機雷の除去。米軍は終戦直後から国内での掃海を続けてきた日本の出動を強く求めたのだ。

 ●下関に参集

 下関市の唐戸桟橋に集まった掃海隊員たちは、初めて朝鮮戦争に「参加」することを知る。「平和憲法があるのに外国の戦争に行っていいのか」と、艇ごとに議論が続けられた。

 「われわれは軍人ではないと荷物をまとめようともした。だが、米軍に命令されたのだからやめるわけにはいかないと…」。広島県賀茂郡黒瀬町に住む元掃海隊員の川原次郎さん(73)は明かす。ほとんどの隊員が朝鮮半島へ向かった。

 元山沖には、掃海艇四隻を中心とした船団が到着。湾内の無数の機雷を処分する作業を命じられた。沖合には、上陸に備え米軍の空母や戦艦が待機。日本の掃海隊は作戦自体に組み込まれていた。川原さんは新婚早々だったが、「国内で掃海経験は十分ある。やるしかないと覚悟を決めた」。

 十月十二日、米軍の掃海艇二隻が触雷し沈没。五日後、中谷坂太郎さんが乗っていた呉の掃海艇「MS―14号」が水面下の機雷に接触する。ペアを組む別の掃海艇にいた川原さんは、その瞬間を目撃した。「こっぱみじんでした」

 呉市に住む高木義人さん(72)はMS―14号の生存者だ。「午後三時ごろばーんと音がして体が飛んだ。みんな甲板にいたのに調理員の中谷君だけが、食事の準備で、船倉に降りていた」。坂太郎さんの遺体は見つからず、高木さんら他の十八人も重軽傷を負った。

 ●30年も封印

 残った三隻の掃海艇は、現場を離脱して帰国、指揮官らは解任される。しかし、掃海隊派遣は続き、十二月までに七回、延べ千二百人が半島沿岸で掃海。海上保安庁は翌年、鋼鉄製の「モルモット船」も走らせ、機雷が処理されたのも確認した。

 吉田茂首相(当時)は憲法に抵触する可能性から、犠牲者が出た事実はもちろん日本特別掃海隊の存在すら公表せず、隊員たちにもかん口令が敷かれた。

 だが、戦後三十年余りたって当時の海上保安庁長官の手記が出版され、全容が明らかになる。坂太郎さんが叙勲を受け、朝鮮戦争での「戦死」が公認されたのは、七九年のことだった。

 金刀比羅宮での慰霊祭。掃海部隊のOBでつくる「航啓会」の細谷吉勝会長(62)=呉市=は、式辞の中で日本特別掃海隊に触れ、「翌年の講和条約を有利に運ぶのに、大きく貢献した」と評価した。

 以前は事実を隠す国に憤りを感じた中谷さんは最近、「弟の死が必ずしも無駄ではなかった」と思い始めている。そして「歴史のかなたに忘れられることがないように」と願う。

 海上保安庁の掃海部隊の人材とノウハウは日米安保体制のもと、五四年に発足した海上自衛隊にそっくり引き継がれた。「その伝統は、掃海部隊の二度目の海外派遣であるペルシャ湾掃海(九一年)に生かされた」と細谷さん。そして今、周辺有事で米軍が期待する分野の一つが、海自隊の掃海能力だとされている。

 かつては国家機密だった日本特別掃海隊の秘話。今では海自隊は「海外派遣の先人」として、当たり前に紹介するようになった。

■■引用終了■■

このような重大な出来事が戦後の民主主義政府のもとで長年国民に秘密にされ続けたのはなぜか?これは,公務に関する記録を勝手に廃棄する先進国が日本だけであることと無関係ではないはずだ。情報流通という観点から,公務員が記録を破棄した場合,重大な処罰を科すシステム,国賠などで書類が紛失した場合,国,地方公共団体が責任がないことを立証する責任を負うようなシステムを直ちに設けるよう呼び掛けていく必要があるのではないでしょうか?そうでないと,今日も記録が破棄されていく…。




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法テラスに「健全な」拒否反応~契約してしまった人も再考されたい

2006-09-02 20:29:24 | 適正手続(裁判員・可視化など)
検察官が牛耳る法務省管轄下の日本司法支援センター「法テラス」が担当国選弁護人を決めるという新制度設計に反発して,法テラスの下での国選弁護は受けないという人が増えている件について(ここ参照←クリック),8月末までに,東京弁護士会では,国選登録者は,現制度の国選弁護人のわずか3割の764人,新しく導入される起訴前国選(被疑者国選)にいたっては,類似の現行制度である当番弁護の登録者に26.5%の364人しかいないという。この傾向は,第一東京弁護士会,第二東京弁護士会でも同様で,特に第二東京弁護士会では,国選登録者は,現行の15%だという。このままでは,各弁護士会がノルマを達成できそうもない。

【法務省設置法附則第4項は、「当分の間、特に必要があるときは、法務省の職員(検察庁の職員を除く。)のうち、百三十三人は、検事をもってこれに充てることができる。」と定めている。この規定に基づき、法務省の要職(官房長・局長レベルを含む。)は検事が、検事としての官職を保持したまま兼任、併任(ともに法務事務官の官職に付される)又は充職(法務事務官の官職を付されない)の形で占める例が多い。ただし、法務事務次官については、検事出身者が、一時的に検事の官職を解かれて就任するのが慣例である。 】(ウィキペディア)という実態の法務省管轄下の法テラスに国選弁護人を指名させることの異常さは,とっても分かりやすい。

各会の執行部は,法テラスとの契約を行うよう,ビラを配布するなど必死だ。私はむしろ,すでに契約をしてしまった方々に,弁護人としての倫理を考慮し,契約を取り消すよう呼び掛けたい。



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調停委員の国籍条項問題,共同が配信~いま,歯止めを掛けなければ…

2006-09-02 08:39:52 | 適正手続(裁判員・可視化など)
共同通信が,調停委員の国籍条項問題を取り上げ,多くの地方紙が掲載した。【調停委員に国籍の壁 在日弁護士拒否相次ぐ】という見出しのもと,以下のような記事となっている。

■■引用開始(北海道新聞←クリック)■■
 弁護士でも日本国籍がないとの理由で、離婚などの仲裁役を務める家事調停委員や、裁判官の手助けをする司法委員になれないケースが各地で起きていることが31日、分かった。

 こうした採用拒否は法律上の明文規定がなく、各地の弁護士会は事態を重視。日本国籍の有無にかかわらず採用を求める意見書を裁判所側に提出するなどしている。

 これまで明らかになったのは▽神戸家裁が韓国籍の女性弁護士の家事調停委員採用を拒否(2003年)▽東京地裁が韓国籍の男性弁護士の司法委員採用を拒否(05年)▽仙台家裁が韓国籍の男性弁護士の家事調停委員採用を拒否(今年)-の3ケース。

 いずれも弁護士会が、候補者として推薦したが、日本国籍がないことを理由に裁判所が採用を拒んだという。

■■引用終了■■

破産管財人との比較をした日弁連会誌の記事(ここ←クリック)を一度引用したことがあるが,一般紙でも取り上げられたことで多くの方にこの問題を考えてもらえるのではないでしょうか?

昨日も触れましたが,杉浦正健法相が人権擁護委員を日本国籍を持つ者に事実上限定する案を提出しようという動きを見せている状況を考慮すると,ここで何とか歯止めを掛けないと外国人排斥が当然のようになってしまう…。外国人を差別するような時代遅れの国にしていいのでしょうか?





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「犬」によるコメントとジダンの頭をよぎったこと~辛淑玉「山椒のひとつぶ」より

2006-09-01 23:17:36 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
辛淑玉さんのコラム「山椒のひとつぶ」(月刊マスコミ市民9月号)にジダンの頭突き事件が取り上げてあった。暴力を止めようとする発言が誰に向けられているのか,そこに注目すべきだとする内容で,いまの「テロ」問題を考えるうえでも示唆的なもの。以下,部分的に引用してご紹介します。

■■引用開始■■

私は最近,非暴力を口にする人を見ると,その人は誰に対してそれを言い続けているのか,ということに目を向ける。多くは,叩かれる側には非暴力を要求するのに,叩く側の暴力には言及しないからだ。
私は,こういうコメントを発する人を「犬」と呼ぶ。

■■引用終了■■

……「テロ」の原因を見つめることをしないで,ブッシュや小泉・安倍の対テロ戦争に賛成する者は,「犬」以下の呼称をご用意しないといけないということですね…。何がいいやろか。でも,辛さんの「犬」発言も,犬にかわいそうな気もする…。

■■引用開始■■

サッカー協会は,マテラッツィ選手の発言(ホモ野郎,お前に姉貴は娼婦だ)を人種差別的ではないとしたが,これはまぎれもなく,異性愛の男による「女性」と「性的少数者」に対する差別であり,「人種差別」そのものである。暴力以外の何ものでもない。

■■引用終了■■

……産経新聞によると,【杉浦正健法相は1日午前の記者会見で、自民、公明両党が「与党人権問題等懇話会」で協議を再開した人権擁護法案について「来年の通常国会に提出したいと(懇話会に)伝えてある」と述べ、法案提出を前提にした議論の早期取りまとめに期待感を示した。
 法相は、日本国籍に事実上限定する案も含めて懇話会に報告したと説明。「与党の議論を待って修正案を取りまとめたい。できるだけ早期に(提出したい)と思っている」と強調した。】という。

暴力防止装置を利用して,国家による少数者への暴力を実現しようとしている日本。頭突きでは足りそうにない!!


■■引用開始■■

姉を娼婦だと言われたとき,彼の脳裏には,貧しい移民の子として育ったその生活が,走馬燈のように回ったのではないだろうか。移民の子どもが這い上がるには,母や姉,他の家族の多くの犠牲がなければならない。そうやって資源を一箇所に集中させることで,ようやく貧しさから這い上がるのだ。
母や姉の犠牲があったからこそ,今の彼がある,一瞬の間に,苦労した母の手や姉の背中や,二人の微笑や涙が思い起こされたのだろうと思えてならない。今の栄光を守るために姉や母への侮辱を受け入れることは,人間としての尊厳を捨て去ることであり,許せなかったのではないか。

■■引用終了■■

……こう解釈することも可能な経過であるにもかかわらず,あの程度の挑発は日常茶飯事だという言い方でジダンを批判するのはやはりバランスを失していると言えるのではないだろうか。発言した方が「挑発すること」を目的としている以上,暴力を受けた方は,痛くもかゆくもないのだから…。



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