面子(メンツ)を重んじるといわれる中国人。贈り物は大きさにこだわるらしい▼中国語学者の小野秀樹さんの知人が北京を訪れ、旧知の中国人に連絡をとると、巨大な果物かご二つを手土産に宿泊先に来た。北京滞在は短く一人では食べきれず、検疫の関係で日本にも持ち帰れない。困惑するほどの量こそ、中国人の誠意の表現らしい▼高価なら値札を張ったまま贈る人もいる。中国人にとって誠意とは可視化されるべきもの。ブランド品好きも外観でそれと分かるからで「一品一品手作り」などと説明を要する価値はピンとこないらしい。小野さんの著書に教わった▼新型コロナウイルスをめぐる日本政府の水際対策は、中国人の目に「不誠実」と映るのか。中国本土からの入国者に空港での検査などを求める方針に、中国政府は「差別的」と立腹。お返しとばかりに日本人へのビザ発給手続きを停止した▼たしかに日本の空港では中国便の客だけ別扱いで、そこで可視化される風景は「差別的」ととられる恐れはある。中国での感染爆発は深刻で陰性なら問題なく入国できるのだから差別の意図はないと説明しても、先方は目に映る態度こそ日本の真意の表出と思うのかもしれない▼面子をつぶされたらしい隣国の怒りはいつ鎮まるのか。大きな買い物袋を抱えて歩く人々が戻ってきてほしいというこちらの期待は偽りなく、大きいのだが。