悪魔が農民に作物の半分を要求する。そんなおとぎ話がドイツにある。困った農民は知恵を絞った末、作物の上半分か、下半分かを悪魔に選ばせることにした▼ある年、悪魔は上半分だと言った。そこで農民たちはカブを植えた。下半分と言った年は小麦。役に立たない方を渡して、悪魔を出し抜いた▼おそろしい力を持つ悪魔をいかになだめて、共存していくかという話でもあろう。さて、われわれは悪魔をうまく出し抜けているか。新型コロナウイルスの国内初の感染者が確認されてから、三年となった▼三年で悪魔との付き合い方をかなり学習した。ワクチンや治療薬も手に入れた。上半分、下半分の話ではないが、感染拡大時には行動を控え、落ち着けば再開する。この戦術で日本の実質GDPはコロナ禍前の水準にまでなんとか回復。三年前に感じた恐怖やおびえは不安や心配のレベルに下がったか▼もっとも注意すべきは出し抜けるという油断と「なれ」である。最近の死者数はこの三年間で過去最悪レベル。その忌まわしい力は決して弱まっていない。警戒を緩めず、コロナを出し抜く方法を考えたい。闘いはまだ、とば口かもしれぬ▼おとぎ話には続きがある。だまされた悪魔は腹を立て、大きな石を投げつけた。ドイツ各地にはそんな石が今も残っているそうだ。出し抜いたようでも悪魔が何をするかは分からない。