二歳になる男の子の双子が窓から転落し、亡くなるという痛ましい事故があった。事故を聞いて、大半の人がこうした悲劇が起こり得るという現実に恐怖し、子を失った家族の痛みを感じるだろう▼こうした反応をするのは人間ばかりではないらしい。海外での最新研究によると魚も同じで、他の魚の恐怖を理解しているそうだ。その恐怖を自分のことのように考える▼脳内のオキシトシンというホルモンの働きによるものだそうだ。試しに実験用の魚からオキシトシンを除去すると共感力のようなものはなくなり、「反社会的」な動きを見せたという▼魚類がこの世に登場したのは約四億五千万年前だが、人間は進化上のご先祖様の時代から、そんな優しい能力を身に付けているのか。半面で他人の恐怖をまったく理解できない人もいるようだ。ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領が七月にもベラルーシに戦術核兵器を配備すると表明した▼ロシアにとっては目障りな欧米によるウクライナ支援を、核をちらつかせることでけん制しようという狙いらしい▼他人の恐怖を理解できないと書いたが、逆かもしれない。核への人間の恐怖を知り抜いた上でそれを冷酷に利用しているのだろう。核の拡散を許せば核使用のリスクはさらに高まりかねない。核配備に向かう、恐れ知らずの「怪魚」を落ち着かせる方法はないのか。