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今日の筆洗

2024年08月25日 | Weblog

男の前に今にも火の消えそうなロウソクがある。これはなにかと尋ねると死に神はおまえの寿命だという。「もうすぐ消えるよ」。三遊亭円朝作の「死に神」▼どうすれば助かるのかとすがる男に死に神が教える。自分の寿命のロウソクの火を別のロウソクに移すことができれば死なないという。男はやってみるが、緊張と恐怖で手が震える。「早くしねえと消えるよ」「消えると命がねえよ」。死に神の言葉にさらに焦る。「ほーら、消えた」…▼重責と緊張は分かるのだが、ロウソクの火をつなぐどころか、パイプを番号通りに並べることもできなかったとはくやしい。福島第1原子力発電所2号機から溶け落ちた核燃料(デブリ)を試験的に採取する作業は初歩的なミスが見つかり延期となった▼釣りざお式の装置を原子炉格納容器に差し込み、デブリを採取する予定だった。いざ採取というところで装置を押し込む5本のパイプの接続順が間違っていることが分かったそうだ▼パイプには順番を示す番号が記入してあったが、当日まで誰も間違いに気づかなかったという。理解しにくい「怪談」だろう▼廃炉に向けた作業が初手でつまずいた。初手で幸いというべきか。ミスは起こるものと再認識し、確認の大切さをかみしめたい。2051年まで続く予定の難作業である。このミスを長い旅を慎重に歩く「お守り」としたい。