東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2024年08月28日 | Weblog

諸説あるが、『怒りの葡萄(ぶどう)』の米作家、スタインベックは大学生のとき、先生にこんなことを言われたそうだ。「ブタが空を飛んだとき、君は作家になれる」▼英語の「flying pigs(空飛ぶブタ)」は現実には起こらないことのたとえ。先生は未来のノーベル賞作家に「君が作家になれることはない」と言ったことになる。ひどい言葉を生涯忘れなかったか、スタインベックは翼の生えたブタを自分のシンボルとし、サインに添えていた▼もう1頭、いや何百、何千の空に浮かぶブタの話を。この方もサインにブタを描いた。子どもたちに人気の『はれときどきぶた』(岩崎書店)などで知られる児童文学作家、矢玉四郎さんが亡くなった。80歳▼『はれぶた』の発表は1980年。子ども時代、矢玉さんの荒唐無稽な物語に夢中になった方は多いだろう。小学3年の則安君が「あしたの日記」に書いたことは全部本当になる。明日の天気は「はれときどきぶた」。次の日、こうなった。「ぶた、ぶた、ぶた、ぶただらけ。ぶたは、いまにもふってきそうだった」-▼『はれぶた』から読書の楽しさを知った方もきっといる。親が読んでと押しつける本ではなく子ども自身が読みたがる本を残した▼発表当初、斬新な内容に評判を心配する声もあったそうだが、ロングセラーとなり、今も読み継がれる。ブタは空を飛んだ。