弁護士辻孝司オフィシャルブログ

京都の弁護士辻孝司のブログです
弁護士の活動、日々感じたことを弁護士目線でレポートします
弁護士をもっと身近に・・・

一隅を照らそう ~天台宗人権啓発公開講座2012~

2012-10-24 20:26:45 | インポート

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1200年前、延暦4年(785年)のこと、伝教大師最澄は比叡山延暦寺に草庵を結び、延暦寺へと発展しました。

そして、延暦25年(806年)、伝教大師最澄は天台宗を開きます。

その天台宗宗務庁で開催された人権啓発公開講座2012に参加してきました。

会場は比叡山の滋賀県側の麓の大津市の「坂本」

古い寺社町の風情が残り、美しい琵琶湖の景色が広がります。   

   

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京都から死刑制度廃止をめざす弁護士の会代表の堀和幸弁護士が
「弁護士会の死刑に対する取り組み」について講演されました。

日弁連や京都弁護士会の死刑廃止に向けての取り組みや、死刑に関する韓国と日本の異同について、宗教関係者や参加者に説明がされました。
(詳しくは同会のHPをご覧下さい。 http://www7.ocn.ne.jp/~kyo_shmk/1852.html )

弁護士会ではなかなか宗教団体とのコラボレーションは難しいのですが、有志の弁護士の会だからこその企画です。

  

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天台宗 一隅を照らす運動キャラクターの「しょうぐうさん」です。

天台宗も死刑を廃止すべきとしています。

「天台の主張」 http://www.tendai.or.jp/shuchou/02.php


警察学校で講演してきました! 2012.10.23

2012-10-23 13:08:49 | インポート

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京都府警本部で、これから刑事として活躍していく警察官のみなさんに、

「弁護士から見た警察捜査について」と題して、講演してきました。

  

弁護士が何を狙っているのか? 

→ 「捜査官のエラーを狙っている」

取調べでの不用意なひとこと、弁護士が接見に来たときの対応、供述調書の扱い、証拠作成や証拠の保管でのミスなど・・・・・

こういったエラーを探して、証拠化していくのが弁護人の仕事だということをお話ししました。

そして、裁判員裁判に耐える捜査のためには、捜査機関は徹底してフェアでなければならないと話をしてきました。

  

また、PC遠隔操作事件に触れて、なぜ、虚偽自白が生まれたのか、無実の人がなぜ犯行動機や犯行時に使ったハンドルネームの由来まで自白してしまったのかを問いかけました。

再審で無罪が明らかになった布川事件の時も、無実の人が、行ったこともない被害者の自宅の様子や侵入経路を詳しく自白していました。

捜査官 : 「どこから侵入した?」

被疑者 : 「さあ・・」

捜査官 : 「普通の家はどこから入れる?」

被疑者 : 「玄関ですか・・・」

捜査官 : 「強盗が玄関からは入らんだろう。他にないか?」

被疑者 : 「え~と、窓ですか?」

捜査官 : 「そうや、よく思いだしたな。で、どこの窓や?」

被疑者 : 「どこの窓って言われても。。。。 居間ですか?」

捜査官 : 「いや、違うな。他にも窓はあるだろ。」

被疑者 : 「和室。。。」

捜査官 : 「違う。もっと、他にもあるだろ。」

被疑者 : 「あっ、トイレ!」

捜査官 : 「そうや! よく思いだしたな。エライぞ!」

   

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捜査官の巧みな誘導で、侵入経路が自白されていったそうです。

こういう自白をするとき、被疑者は決して嫌な気持ちでいるわけではないそうです。

一旦罪を認めた以上、ちゃんとつじつまが合うように説明しなくてはならないという気持ちになり、捜査官に助けを求め、ヒントを出してくれる捜査官に感謝し、正解を見つけるとうれしくなるそうです。

PC遠隔操作事件の自白も、こんな風にして作られたんでしょうね。

  

参加していた若手の警察官の方からも、
「覚せい剤を何回も繰り返しているような人の弁護は嫌になりませんか?」
「否認しているけど、本当はやっているんです。と告白されたら、弁護士はどうするのですか?」
といった鋭い質問をいただきました。

ブログには書けない本音トークで答えてきました。   

   

   


PC遠隔操作で誤認逮捕!!

2012-10-22 21:42:40 | 社会・経済

パソコンにウィルスを送り込み、遠隔操作で脅迫文を送りつけた。

ウィルスに感染したパソコンの所有者が誤認逮捕された。

この事件の報道が連日続いています。

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ハイテク犯罪に警察がついて行けず、真犯人に翻弄され、誤認逮捕をしてしまう。

確かに問題だけど、そういうことも仕方がないかなぁ・・・と警察に同情もします。

      

しかし、驚くべきことは、そうして誤認逮捕された人の何人かが自白していること!!  

無実なのに、「自分がやりました。」と認めてるってどういうこと???

報道によると、「楽しそうな小学生を見て脅してやろうと思った」という動機や、HPに書き込んだ際のハンドルネームの由来まで自白している?????

どうして無実の人が、具体的な動機や由来を話せるの?
いったい誰が考えたの? 

意味わからない! あり得ない!! 

日本の裁判官は、こんな具体的な動機や由来があると、「具体的で真に迫っており、犯人でなければ語ることが出来ない」と、単純に自白を信用して有罪にしてしまいます。

  

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明日、警察学校で刑事の卵の皆さんに講義をするのですが、この事件をどういうスタンスで伝えようか?

難しい・・・・ 「目の前の被疑者は犯人じゃないかもしれないと疑ってみてください。」

警察の常識とは全く正反対ですね。

   

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京都新聞の社説が、とても鋭く切り込んでいます。

【京都新聞社説】

「PC誤認逮捕  不当な取り調べ根絶を」

 身に覚えがないといくら否認しても逮捕され、長期間勾留された恐怖を警察はどう償うのか。
 パソコン(PC)を遠隔操作し犯罪予告メールを送った事件で警察庁の片桐裕長官は、警視庁、神奈川、三重両県警、大阪府警に逮捕された男性4人について、真犯人ではなく誤認捜査だと認めた。
 謝罪が順次進められており、刑事処分が取り消される。
 ずさんなハイテク捜査の見直しも急務だが、国民に不安を与えているのは、取調室で
聞く耳を持たず、無実の人を犯人に仕立て上げようとした捜査機関の体質そのものだ。
パソコンでインターネットを使う誰もが巻き込まれた可能性がある。戦慄(せんりつ)を禁
じ得ない。
 供述には虚心で向き合い、言い分に従ってアリバイ捜査で裏付ける。捜査の基本が、
ないがしろにされていた。警察と検察への信頼を根底から揺るがす事態だ。なぜ誤認逮
捕が相次いだのか徹底的に検証し、公表すべきだ。遠隔操作ウイルスは以前から存在
する。過去の同種事件も、調査が必要だ。
 誤認逮捕された4人のうち2人が否認から転じ、容疑を認める供述をしたことは看過できない。
 神奈川県警のケースでは、小学校への襲撃予告をしたとして威力業務妨害容疑で誤認
逮捕された大学生は、取り調べに対し、「楽しそうな小学生を見て脅かしてやろうと思っ
た」などと、具体的に動機を供述したとされる。
 なぜ無実の人から、こんな作り話が生まれたのか。捜査員の誘導や、自白を強要する
威圧的な取り調べがなかったのか。密室のやりとりを明らかにする必要がある。
 真犯人とみられる人物は、大胆にも「犯行声明」を弁護士らに送りつけてきた。ネットを
介し他人のパソコンを乗っ取るウイルスや偽装工作は巧妙で、警察が踊らされた面もあ
ろう。
 問題の根深さは、IPアドレス(識別番号)からパソコンを特定すれば「動かぬ証拠」とし
てきた捜査手法にある。これでは精度が低い時代のDNA鑑定を過信し、自白を強要して
無実の人を殺人犯に仕立ててしまった事件と同じ構図ではないか。
 警察は、真犯人逮捕と全容解明を急ぐとともに、信頼回復の道のりが険しいことを肝に
銘じ、捜査のあり方を見直してほしい。各事件の捜査経過や取り調べ中の発言も、公に
すべきだ。
 冤罪(えんざい)を防ぐには取り調べの録音・録画(可視化)が有効だ。捜査現場の抵抗
感が根強く、重大事件などでの一部試行にとどまっている。今回の反省を踏まえれば、罪
種を問わず、全面可視化が必要だろう。

[京都新聞 2012年10月21日掲載]


「法と心理学会」に参加しました! 2012.10.21

2012-10-21 23:37:41 | インポート

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東京の武蔵美術大学で開催された「法と心理学会第13回大会」に参加してきました。

私は、「司法臨床の展開~情状鑑定と裁判員裁判」のワークショップに、臨床心理士の先生方と一緒に登壇して、情状心理鑑定を依頼した殺人事件の裁判員裁判について報告しました。  

   

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刑事裁判では行為と結果が刑罰を決める大きな要素ですが、裁判員は、それらに加えて被告人の更正可能性、再犯可能性といった「人」にも注目しているのではないか?

そうであれば、被告人を凄惨な事件を起こしたモンスターのままにしておいたのではどんどん重罰化してしまう。

それを避けるためには、どんなに理解困難な事件であっても、被告人の人間性を解き明かす努力をし、被告人もまた普通の人と同じように理解できる「人」であることを示さなければならない。

そのために、情状心理鑑定が裁判では重要になってくるといった話をしました。

もっとも、情状心理鑑定の結果が必ずしも被告人に有利に 働くとは限らず、また、
被告人の内面を公の法廷で暴露してしまうきわめて侵襲的な行為であって、被告人が望まない場合もあり得るので、弁護活動としては難しい面もあると問題提起しました。

はじめて、「学会」というものに参加させていただき、いろいろな研究者の皆さんの発表も聴かせていただきました。

目の前の事件処理という現実に追われてばかりいる身には、アカデミックな雰囲気がとてもうらやましくなりました。

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会場の武蔵野美術大学です。

JR国分寺駅からバスで20分と、少し不便ですが、緑のたくさんある環境のいい場所にあります。

周囲には津田塾大学や創価大学などたくさんの大学がありました。

美大らしく、キャンパス内には、図書館とともに美術館もありました。