2006 No.11 9/23-9/25
作者:井坂幸太郎(新潮文庫 629円)
評価・・・★★★★☆ 4.5
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ネタばれ注意!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
不思議な構成のストーリーでした。
一見無関係と見える5人の人物(その中でメインは4人)の、それぞれの1日が同時進行のように展開していきます。
「きっと5人の人生がこの先リンクしていくんだろうな~」とそこまでは誰もが予想するでしょう。
案の定、そのとおり物語は進行していきます。接点は1匹の老犬だったり、ある人物だったり、場所だったりします。それぞれの人物は個々では無関係だけど、知らないうちにあるモノや人などを介して他人の人生とわずかにリンクしている・・・
「自分の人生も他人と無数のつながりを持ちながら展開しているんだろうな~」と、つい人生の不思議について想いを馳せてしまいました。
が、ここで忘れてならないのは、この小説の挿画にエッシャーのだまし絵が使われていて、作品中ではエッシャーの絵画展が開催中で、エッシャーの絵についての記述が何度も出てくること・・・
実は同時進行していると思われていた4人のある1日(あるいは数日間)は、同時進行していなかったことが終盤で明らかになります。違う時間軸で展開していたそれぞれのストーリーを、あたかも同時進行していたかのように構成していたのです。
そしてそれに気づいたとき、それまで読み過ごしていたいくつかのエピソードが意味を持って浮かび上がってきました。
まさに「だまし絵」のような物語の構成。
多少ムリなエピソードもありましたが、上質のミステリを読み終えたときのような満足感が読後に得られました。
*参考* エッシャーの公式ホームページはコチラ
“Downloads”のページの"Ascending and Descending"
(上昇と下降)という作品が挿画に使用されています。