辺野古埋め立て申請時期 思惑が交錯
2013年1月7日 沖縄タイムス
政権交代後の自公政権も堅持する米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設。民主党は衆院選で惨敗したが、次期政権への移行期に滑り込みで環境影響評価(アセスメント)の補正評価書を県に提出し、昨年12月27日に公告・縦覧が始まった。制度上はすぐにでも移設の最終手続きとなる仲井真弘多知事への公有水面埋め立て承認申請は可能。だが、高度な政治判断を要するため発足したばかりの第2次安倍晋三内閣の方針は固まっておらず「すぐ出したい」「地元や米国の状況を見てから」と政府・与党内ではさまざまな思惑が渦巻く。(東京支社・銘苅一哲)
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公有水面埋め立ての手続きは、事業者の沖縄防衛局が仲井真知事に承認を申請し、知事は事業計画、環境アセスメントをチェック・評価し承認するかどうかを判断する。一般的に、その判断には約1年かかるとされている。
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仲井真知事は地元の名護市の反対を理由に、以前から「辺野古は事実上不可能」と主張。申請への回答は、環境影響評価の中身が環境への適正な配慮がなされているかどうかに加えて、名護市や県内政治情勢を踏まえて結論を出すとみられる。
申請する側の政府も知事の判断を左右する県内の状況を踏まえタイミングを見極めるが、関係省庁の考えはまだ一致していない。
最も早い時期を想定しているのは防衛省で、内部では補正評価書の公告・縦覧と同時に申請する案も浮上していたほどだ。
しかし、考えは必ずしもまとまっておらず「今申請しても知事はじめ県議会、全市町村が辺野古反対の状況は同じ。(2014年1月ごろの)名護市長選の結果を見てからという選択肢もある」(同省関係者)と慎重論もある。
実際に、仲井真知事は昨年12月27日の新閣僚へのあいさつ回り後、記者団に承認申請が出された場合の対応を問われ「防衛省は(申請を)やるんですか?」とけん制。県幹部も「すぐに出すならどうぞ、という感じ。(防衛省の)自爆になるだろうが」と冷ややかだ。現状で知事が県外の考えを変える要素は見当たらない。
■弱まる米の圧力
外務省は防衛省ほど急いでいない。原因は日米交渉筋が「米側は辺野古移設への関心が低くなっている」と明かすように、従来ほど辺野古推進に圧力をかけてこない状況にある。「米側には、これだけ(移設作業が)前に進まないなら老朽化する普天間の補修も日米で合意しているし、しばらく使用できるならそれでいいという考えがあるようだ」(同筋)
こうした米側の変化は県側にも漏れ伝わり、県幹部も「米側は誰も真剣にやっていない」と指摘するが、「もし移設作業をやめたら(県民にとって)万歳となればいいが、そうはならない」と普天間が返還されないままの固定化を懸念。求めるのは普天間を返還する県外への移設だ。
■予算案計上が鍵
安倍首相による申請時期の判断は自民党内での議論も重要となる。安全保障政策に通じる石破茂幹事長は衆院選で公示と最終日に沖縄応援に入るなど、普天間をはじめとする基地問題に党内で最も関心を寄せる。
石破氏は政府与党として辺野古移設の姿勢は崩していないが、県外を主張し当選した県選出・関係国会議員5人との会談では「(県外がベストという)気持ちは分かる」「県外が頭にないわけではない」と一定の理解を示した。党本部と県連の「ねじれ」を解消するため、埋め立て申請の最終判断は一定の時間がかかる可能性もある。
政府関係者は「年が明けてすぐに自民党内の各部会が始動する。民主党と比較し、自民党は党の意思がそのまま政府の決定となるケースが多い」と党内の動きを注視し、こう付け加えた。「2013年度予算案に辺野古埋め立てそのものの事業費を初めて計上するかどうかも、申請時期をどうするかの判断材料になるだろう」