「福島第一原発の3つの原子炉がメルトダウンの可能性」-。米国の原子力
規制委員会が事故直後の議事録を公開した中で、こうした議論が交わされて
いたという。日本のメディアも事故直後には「メルトダウンの可能性も」と
の書いたが、政府も東電も認めなかったため、単なる推測記事で終わってし
まった感じだった。
東電が「メルトダウン」と認めたのは、3カ月後の5月12日。それも、歯切
れが悪かった。「1号機の容器に穴があいて冷却水が漏れている」と発表。「メ
ルトダウンか」との質問に、やっと「その可能性は否定できません」と答え
た認め方だった。その翌々日の14日に2、3号機についてもメルトダウンと
認めたが、これも「最悪の場合は同じ状態…」と直接的な表現を避けていた。
水素爆発の直後、「メルトダウンの可能性は否定できません」と発表したら、
どうだっただろうか。メディアは「ほんとうのことを発表すべきだった」と
言ったものの、ストレートに発表すれば日本中が大パニックになっただろう。
政府も東電も最初からわかっていて、ショックをやわらげるために段階的に発
表してきた感じがする。どこかにメルトダウンでないことを期待しながら…。
戦闘に負けても「我が軍の損害軽微なり」と発表し、撤退することを「転進」
と言い換えた大本営発表とどこか通じる。そうメールに書いてきた友人もい
る。「日本にとって戦後最大のピンチ、国難のときに最悪の首相だった」と前
首相はいわれた。彼が、日ごろから人望があり、あのときに周囲に怒鳴り散ら
すのを抑えていたら、世間の評価は「パニックから日本を救った男」といわれ
ていたかもしれない。いくらなんでも、そんなことはないかー。