今年もあっという間に12月になった。そこでこの一年を振り返ってみよう。この一年で政治も経済も様変わりをした。安倍内閣誕生後、まず「デフレを止めよ」の大目標の元、異次元の(安倍へ総理の言)金融緩和を実施した。それではなぜデフレは悪いのか。少しだけ書いてみる。
デフレ下では需要が減少(消費・投資・輸出)し、雇用も減少する。失業率はアップし、人件費を削減するために非正規社員の比率が増加する。当然格差が拡大する。デフレは1998年から始まった。当時失業率は3%だったが、2002年には5%にもなった。
実質所得は、2011年は2000年に比べて8%も減少、実質賞与は21%減少した。消費も8%減少し、パイは減少している。
個人消費で減ったモノは、①被服・履物27% ②交際費20% ③教育14% ④娯楽7%となっている。このような状況の中では、今後もデフレが続くと予想するようになる。だから積極的な行動を起こさなくなる。物を買うのも先延ばしにする。物の値段が下がるとお金の値打ちが上がる。過剰な円高をもたらすことになる。
リーマンショック後、日本の主要産業だった家電や自動車産業が苦境に陥った主たる要因は、超の付く円高であった。こういう状況では生産は縮小し設備投資も抑制される。値下げ競争が激しくなり、生産拠点を人件費の安い東南アジア(当初は中国)に移すことになる。こうして日本国内では、モノ造りが空洞化していく。デフレスパイダルの始まりである。
学校で習ったインフレとデフレ。どちらも国民生活に大きな影響があるが、我々世代はインフレ下であったので、デフレの事は深く学ばなかった。日本にはデフレは起こらないように思っていた。ところがバブルの崩壊を機に、今まで右肩上がりを疑わなかった不動産が値下がりを始めた。これは一時的な現象で、生産できない土地などは、すぐに値上がりに転じると思っていた。
ところが、生産拠点が海外に移ることになって、土地も人も海外で調達することになれば、これは生産だけではなく土地も間接的とはいえ輸出してしまうのと同じことになる。このようなデフレ下では、財政も悪化していく。所得税も法人税も減少していく。90年度には税収が60兆円だったが(これは日本にとっての最高額。バブル下であった)、2012年度には42.6兆円と30%も減少している。
財政赤字を縮小しようと歳出を削減すると、それ自体がデフレを加速し、結果として税収はますます縮小すると言う悪環境に陥る。ざっと解説するとデフレを克服しないと大変な状況になるということが分かる。
このような状況下の中で昨年の12月、自公の連立政権の安倍内閣が発足した。デフレを克服することが安倍内閣の近々の課題であった。まず異次元の金融緩和が実行された。リーマンショック後に、アメリカや中国が自国通貨を大量に市場に流したのでドル安に市場は流れた。
しかし日本だけは貨幣をわずかな量しか増やさなかった。戦後の悪夢だったハイパーインフレを極度に恐れたからである。こうなると当然値打ちのある円が買われて超円高になるのは必然である。一年前が一ドル80円内外である。これでは自動車や家電はやっていけない。特に家電は韓国のサムスンを始めとする企業に浸食されていった。
それを克服すべく、安倍内閣のデフレ脱却の一の矢は、異次元の金融緩和であったが、それは市場の(主に金融機関)国債を日銀が大量に買い取ることであった。これによって円の貨幣量が増えるから円安に振れるのだが、しかしこれだけでは、日銀の各市中銀行の当座預金に巨額の預金が溜まるだけになる。民主党政権の時の金融緩和はほぼここで止まった。
安倍内閣は、この大量の預金を融資と言う形で市場に出すことを考えて、第二の矢として積極的な財政出動を景気対策として打ち出した。それの代表は昨年の補正と今期の予算で合わせて10兆円の公共投資であった。その結果、円安と財政政策が重なって自動車や建設業界に仕事が増え始めたし、そして輸出企業が息を吹き返すことになった。景気回復は通常大企業の製造業から始まるが、今回は建設・不動産とのツートップである。建設分野は、リホーム等の分野で中小企業も仕事が増加し始めている。
しかし来年4月からの消費税引き上げの影響による駆け込み需要との見方も強く、経営者は疑心暗鬼でもある。消費税引き上げの影響による景気の腰折れを恐れた政府は、5兆円の経済対策を決定している。その上前回の3%~5%への消費税の引き上げ時に比べて、駆け込み需要と思えるものはなだらかであり、消費税引き上げ後も極端な景気にブレーキはかからないものと思われる。
それでも、これだけでは景気の持続性が薄く、デフレ脱却まで届かないと思われる。そこで第三の矢は成長戦略である。続いて第四の矢は東京オリンピック招致である。次に先日アメリカのFRBの次期議長が、「アメリカの金融緩和」を継続すると取れる発言をしたことと、ドイツが大連立を発表して政治の安定が図られて、経済も伸びるとの観測が市場で広がり、この二つが相まって、ニューヨーク市場で史上最高値をつけ、日本でも1万5千円後半を付ける等の活発な動きとなっている。為替も円が売られドルやユーロが買われる動きが活発になり、102円台となっている。まさに6年ぶりのことである。
一方政治でも注目すべきことがらがあった。秘密保護法案ではなく、沖縄自民党県連が辺野古への基地移転を容認する決定に転向したことである。先に国会議員団の中から辺野古容認への転向者が多数あり、今回は県議会の自民党会派からの転向は、今月にも辺野古沖の埋め立て許可を決断する時期が迫っている仲井間知事に何らかの影響を与えるのではないかと言う憶測が浮上している。
一方で中国が設定した航空識別圏の問題は、大きな国際政治問題化している。ますます沖縄の安全保障問題の重要性が増す中での今回の転向は、注目するべき事柄である。---コラムより
デフレ下では需要が減少(消費・投資・輸出)し、雇用も減少する。失業率はアップし、人件費を削減するために非正規社員の比率が増加する。当然格差が拡大する。デフレは1998年から始まった。当時失業率は3%だったが、2002年には5%にもなった。
実質所得は、2011年は2000年に比べて8%も減少、実質賞与は21%減少した。消費も8%減少し、パイは減少している。
個人消費で減ったモノは、①被服・履物27% ②交際費20% ③教育14% ④娯楽7%となっている。このような状況の中では、今後もデフレが続くと予想するようになる。だから積極的な行動を起こさなくなる。物を買うのも先延ばしにする。物の値段が下がるとお金の値打ちが上がる。過剰な円高をもたらすことになる。
リーマンショック後、日本の主要産業だった家電や自動車産業が苦境に陥った主たる要因は、超の付く円高であった。こういう状況では生産は縮小し設備投資も抑制される。値下げ競争が激しくなり、生産拠点を人件費の安い東南アジア(当初は中国)に移すことになる。こうして日本国内では、モノ造りが空洞化していく。デフレスパイダルの始まりである。
学校で習ったインフレとデフレ。どちらも国民生活に大きな影響があるが、我々世代はインフレ下であったので、デフレの事は深く学ばなかった。日本にはデフレは起こらないように思っていた。ところがバブルの崩壊を機に、今まで右肩上がりを疑わなかった不動産が値下がりを始めた。これは一時的な現象で、生産できない土地などは、すぐに値上がりに転じると思っていた。
ところが、生産拠点が海外に移ることになって、土地も人も海外で調達することになれば、これは生産だけではなく土地も間接的とはいえ輸出してしまうのと同じことになる。このようなデフレ下では、財政も悪化していく。所得税も法人税も減少していく。90年度には税収が60兆円だったが(これは日本にとっての最高額。バブル下であった)、2012年度には42.6兆円と30%も減少している。
財政赤字を縮小しようと歳出を削減すると、それ自体がデフレを加速し、結果として税収はますます縮小すると言う悪環境に陥る。ざっと解説するとデフレを克服しないと大変な状況になるということが分かる。
このような状況下の中で昨年の12月、自公の連立政権の安倍内閣が発足した。デフレを克服することが安倍内閣の近々の課題であった。まず異次元の金融緩和が実行された。リーマンショック後に、アメリカや中国が自国通貨を大量に市場に流したのでドル安に市場は流れた。
しかし日本だけは貨幣をわずかな量しか増やさなかった。戦後の悪夢だったハイパーインフレを極度に恐れたからである。こうなると当然値打ちのある円が買われて超円高になるのは必然である。一年前が一ドル80円内外である。これでは自動車や家電はやっていけない。特に家電は韓国のサムスンを始めとする企業に浸食されていった。
それを克服すべく、安倍内閣のデフレ脱却の一の矢は、異次元の金融緩和であったが、それは市場の(主に金融機関)国債を日銀が大量に買い取ることであった。これによって円の貨幣量が増えるから円安に振れるのだが、しかしこれだけでは、日銀の各市中銀行の当座預金に巨額の預金が溜まるだけになる。民主党政権の時の金融緩和はほぼここで止まった。
安倍内閣は、この大量の預金を融資と言う形で市場に出すことを考えて、第二の矢として積極的な財政出動を景気対策として打ち出した。それの代表は昨年の補正と今期の予算で合わせて10兆円の公共投資であった。その結果、円安と財政政策が重なって自動車や建設業界に仕事が増え始めたし、そして輸出企業が息を吹き返すことになった。景気回復は通常大企業の製造業から始まるが、今回は建設・不動産とのツートップである。建設分野は、リホーム等の分野で中小企業も仕事が増加し始めている。
しかし来年4月からの消費税引き上げの影響による駆け込み需要との見方も強く、経営者は疑心暗鬼でもある。消費税引き上げの影響による景気の腰折れを恐れた政府は、5兆円の経済対策を決定している。その上前回の3%~5%への消費税の引き上げ時に比べて、駆け込み需要と思えるものはなだらかであり、消費税引き上げ後も極端な景気にブレーキはかからないものと思われる。
それでも、これだけでは景気の持続性が薄く、デフレ脱却まで届かないと思われる。そこで第三の矢は成長戦略である。続いて第四の矢は東京オリンピック招致である。次に先日アメリカのFRBの次期議長が、「アメリカの金融緩和」を継続すると取れる発言をしたことと、ドイツが大連立を発表して政治の安定が図られて、経済も伸びるとの観測が市場で広がり、この二つが相まって、ニューヨーク市場で史上最高値をつけ、日本でも1万5千円後半を付ける等の活発な動きとなっている。為替も円が売られドルやユーロが買われる動きが活発になり、102円台となっている。まさに6年ぶりのことである。
一方政治でも注目すべきことがらがあった。秘密保護法案ではなく、沖縄自民党県連が辺野古への基地移転を容認する決定に転向したことである。先に国会議員団の中から辺野古容認への転向者が多数あり、今回は県議会の自民党会派からの転向は、今月にも辺野古沖の埋め立て許可を決断する時期が迫っている仲井間知事に何らかの影響を与えるのではないかと言う憶測が浮上している。
一方で中国が設定した航空識別圏の問題は、大きな国際政治問題化している。ますます沖縄の安全保障問題の重要性が増す中での今回の転向は、注目するべき事柄である。---コラムより