テレビの人気タレントを隣に・・・ 2015-06-25 20:24:09 | 小説 テレビの人気タレントを隣にしながらも周りの誰もが気がつかないでいると思った。それだけでもう、もともと小心な幸男の荷に重い。かっての二十歳の恋人を誇りにするのは、心臓の鼓動のみのことにしている。幸男は急いでタクシー乗り場へとかけつけていっている。 (つづく)
「いいことなのかわるいことなのか、・・・ 2015-06-24 20:43:34 | 小説 「いいことなのかわるいことなのか、どうですか、ぼくたちには皆目わかりませんよ」 「宇礼市の発展が、でしょうか・・・・・・」 理恵には敏彦がうらめしく思われている。 「つもる話はタクシーに乗ってからに。ここでは目立ちすぎます」 幸男は少し声がふるえ、彼自身を内心嫌悪した。演技を続けるのは当然無理だった。 (つづく)
真正面に見る、城と満開の桜に、理恵は・・・ 2015-06-23 20:57:50 | 小説 真正面に見る、城と満開の桜に、理恵は目の焦点をあわせる。昔に比べて増えたビルと、新芽の街路樹沿いにメーンストリートが直線に伸びていて、 「それは、ふるさとの山にむかいて、て感じじゃないのは確かですわ」 と言った。幸男の言葉を誘ってみたものだ。隙を見てちらりとふりかえる。敏彦が人通りに向き、あちらこちらによそ見していた。 (つづく)
毎年、家族連名で届いた年賀状の・・・ 2015-06-22 20:40:52 | 小説 毎年、家族連名で届いた年賀状の礼を、理恵はその他の口実が見つからなくて言った。駅頭に佇む時、その一歩手前で声をかけてみたことから幸男の気持ちが和らいだらしく、 「宇礼は少しは変わっていますか」 「ええ、それはずいぶん」 「初中見なれていますとそうは思われませんが」 と幸男は意識してよそよそしくそう言う。 (つづく)
「いってらっしゃい」・・・ 2015-06-21 20:37:24 | 小説 「いってらっしゃい」 「パパいってらっちゃい」 オーバーな、ちょっと角の店にいってくるだけなのにと思うが幸男は口にしないで言った。 「すぐもどるからね」 (つづく)