からくの一人遊び

音楽、小説、映画、何でも紹介、あと雑文です。

気の利かない男

2016-08-08 | 音楽


「ねえ、化粧品買っていい?」

カミさんが珍しく私に猫なで声で、言ってきた。

「いいんじゃない」

私は何を今さらと思ったので適当な返事を返したところ、それが気に入らなかったらしく、一転、膨れっ面になってしまった。

「ねえ、どうでもいいと思っているんでしょう?」

「いや、そんなことは」
 
「嘘!顔に書いてある」

「いや、書いてあると言われても・・・」

「大体あなたって普段からそうよね。気が利きゃしない、こういう時は嘘でも”君がきれいになるのだったら”とかいうべきなのよ」

「俺が気が利かないって知っているだろ!そういうことは男だったら恥ずかしくて言えないものなのだよ」

私がそう反論すると彼女は膨れっ面をなおも大きく膨らませた。

「〇〇(次男の名前)とはえらい違いよね」

「えらい違い?〇〇とどこがどう違うんだよ」

「大学に合格が決まった日にね、私がこれで毎月のこづかいの分が浮くって言ったの。で、彼はなんて返したと思う?」

「・・・学費にでも回せって言ったんだろう」

「ううん、彼は”母さんの化粧品代にでも回してきれいになれよ”って言ってくれたのよ」

「・・・・・・」

「どう?偉いわよねえ、あなただったら100年たっても言えない言葉ね」

私ははっきり言って、次男はよけいなことを言ってくれたなと思った。

私は男は無口であるのが一番だと思っている。普段は無口でも、ここぞというときに優しく態度で示してやればいい。

次男のような”気の利いた言葉”など必要ないのだ。

「優しいわよねえ、あのこは・・・・」

カミさんはその時のことを思い出したらしくうっとり(?)した顔で空を見ている。

私はその顔を見て、なんだか段々悔しくなってきた。悔しくなってついこう茶化してしまった。

「そりゃ、あれだ。・・そうそう、君の顔みて”皺が多いなあ”って気の毒になったんだ」

その瞬間カミさんの膨れっ面は大爆発してしまった。

まわし蹴り一発!!

私は寸でのところでかわした。

「ふん!」

彼女は私の顔に唾でも吐きかけるような顔を見せると、その場をどんどんと足を鳴らして離れていってしまった。

後に残った私は後悔した。後悔してこう思ったのだった。

ほらね、だから俺に気の利いた言葉を要求するなっての。・・・男は無口が一番!これに尽きる。






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朝顔

2016-08-08 | 日記


朝顔です。元気に咲いていますねえ。
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