Keira Knightley | "Tell Me If You Wanna Go Home" (Begin Again Soundtrack) | Interscope
2022-01-16 | 小説
Keira Knightley | "Tell Me If You Wanna Go Home" (Begin Again Soundtrack) | Interscope
POLTA『遠くへ行きたい』【MV】
守ってあげたい
Marion - I Go To Sleep (1967)
あなたのとりこ シルヴィ・バルタン
(ちんちくりんNo,67)
「悪かった、かほる」
「何が」
僕は夕食中にヒロコさんに向けた言葉が適切ではなかったと思っていた。僕の「お見送り―」という発言によってヒロコさんは「私が見送る必要はない」と言い切った。それは、いくらかほるが事前に分かっていた事だとしても、かほるを傷つけたに違いない。親から一度否定された事を再度否定されるのは辛い。しかもそれを他の者の余計な一言によって、見せつけられるような形でされた時の気持ちはいかばかりか。僕はそれをしてしまった。だから僕は二階のかほるの部屋に戻ってからすぐに謝ったのだ。
「いや。お見送りのこと。余計なこと言ってしまって」
「ああ、気にすることないわよ。ああいうのが何時ものヒロコさんだから」
「気にならないの」
「気にならないっていうこともないけれど、自分の主義は絶対曲げない人だから」
「主義。主義でもう会えなくなるかもしれない子供の見送りさえもしないのか?」
「不器用な人だから・・・。ああいう形でしか愛情を表せない」
「愛情って、あれがか」
「私がいうのも変だけど、本当はアメリカにもついて行って、向こうで一緒に暮らしたいとまで、そういう気持ちで一杯なんだと思う。だけどそれが良いことだとは考えていないのよ。だから、突っ張ってる。必死に。それこそが愛情」
「・・・俺には分からない」
「分からなくて当然。私みたいに十八年共にしなきゃね」
笑いながらも、かほるの瞳は"寂しい〟と叫んでいるような気がした。お前も突っ張りだよな、と思った。
もう寝ようということになり、「はて、俺は何処で寝ればいいのだ」と思った。バカな話だが、僕はそれまでそのことについて全く考えていなかった。いや、下の何処かの部屋だろうくらいは思っていたのだが、かほるが押入れを開けて「布団を私のベッドの隣へ」と言ってきた時、さすがに「まさか」と思い、大いに戸惑った。
「なあ、同じ部屋に寝ろということか」
「そうよ、何か変?」
「変って・・・。男と女が同じ部屋で寝るということの方が変じゃないか。ましてやお前は未成年。倫理に反する」
「ヒロコさんに許可とったわよ」
「ヒロコさん。許可したって、何故。心配じゃないのか」
「ガールフレンドの家に来て、手を出す男っていうのは、それまでの男ってことよ。海人さんがそうじゃないことを祈るわ・・・だそうです」
ああ、そうだった。ついさっき学んだはずじゃなかったのか。かほるの母親が世間の常識とは違う所で生きている女性だということを。僕は何だかバカらしくなって、布団を敷き終わると着替えもせずにさっさと横たわり、夏掛けを被った。
それからどのくらいの時間が経過したのだろうか。僕は目を覚ました。頭がはっきりしない。その状態のまましばらく天井を見つめていたら、点灯管のみが灯る暗い中、目玉の表面に出来た邪魔な被膜を一枚ずつ剥がすかのように、辺りを段々認識できるようになってきた。
ふと視線を感じて頭を動かした。目が合う。かほるがベッドの端に横たわり、枕に顔半分をうずめ、片方の目で僕を見つめていた。いつから・・・。
見られていると、気になって眠れない。
さっさと、先に寝ちゃった癖に。
そうしないと煩悩に取りつかれる。
・・・煩悩。
そう、煩悩。・・・ずっと起きてたのか。
・・・うん・・・なんかね、眠れない。
そういうものだろうな。生まれ育ったところから離れるんだし。無理もない。
そのような会話をボソボソとしていたが、途中でかほるは急に黙ってしまった。何かを考えているようだった。次の一言が出なくて困っているのか。敢えて僕からは問いかけないようにした。
しばらくしてかほるは、吹っ切ったように息を吐き出してから口を開いた。
そっち行っていい?
何故。
海人を襲いに行くの。
おお、俺はいけないのに、かほるは構わないのか。
そうよ、今はそういう時代なんだから。
かほるはベッドから降り、まるでそれが当たり前であるかのように、ごく自然に僕の寝床に滑り込み、僕の胸に耳を当てた。
心臓の鼓動。
安らぐ私の心。
ねえ、このまま抱きしめて。そうすれば眠れるかもしれない。
ああ。
僕はかほるの腰に手を回し彼女を優しく抱きしめた。
心と心がひとつになったような愛おしさと安らぎ。
そうして僕らは互いの体温を確かめ合い、そのまま深い眠りに落ちたのだった。
POLTA『遠くへ行きたい』【MV】
守ってあげたい
Marion - I Go To Sleep (1967)
あなたのとりこ シルヴィ・バルタン
(ちんちくりんNo,67)
「悪かった、かほる」
「何が」
僕は夕食中にヒロコさんに向けた言葉が適切ではなかったと思っていた。僕の「お見送り―」という発言によってヒロコさんは「私が見送る必要はない」と言い切った。それは、いくらかほるが事前に分かっていた事だとしても、かほるを傷つけたに違いない。親から一度否定された事を再度否定されるのは辛い。しかもそれを他の者の余計な一言によって、見せつけられるような形でされた時の気持ちはいかばかりか。僕はそれをしてしまった。だから僕は二階のかほるの部屋に戻ってからすぐに謝ったのだ。
「いや。お見送りのこと。余計なこと言ってしまって」
「ああ、気にすることないわよ。ああいうのが何時ものヒロコさんだから」
「気にならないの」
「気にならないっていうこともないけれど、自分の主義は絶対曲げない人だから」
「主義。主義でもう会えなくなるかもしれない子供の見送りさえもしないのか?」
「不器用な人だから・・・。ああいう形でしか愛情を表せない」
「愛情って、あれがか」
「私がいうのも変だけど、本当はアメリカにもついて行って、向こうで一緒に暮らしたいとまで、そういう気持ちで一杯なんだと思う。だけどそれが良いことだとは考えていないのよ。だから、突っ張ってる。必死に。それこそが愛情」
「・・・俺には分からない」
「分からなくて当然。私みたいに十八年共にしなきゃね」
笑いながらも、かほるの瞳は"寂しい〟と叫んでいるような気がした。お前も突っ張りだよな、と思った。
もう寝ようということになり、「はて、俺は何処で寝ればいいのだ」と思った。バカな話だが、僕はそれまでそのことについて全く考えていなかった。いや、下の何処かの部屋だろうくらいは思っていたのだが、かほるが押入れを開けて「布団を私のベッドの隣へ」と言ってきた時、さすがに「まさか」と思い、大いに戸惑った。
「なあ、同じ部屋に寝ろということか」
「そうよ、何か変?」
「変って・・・。男と女が同じ部屋で寝るということの方が変じゃないか。ましてやお前は未成年。倫理に反する」
「ヒロコさんに許可とったわよ」
「ヒロコさん。許可したって、何故。心配じゃないのか」
「ガールフレンドの家に来て、手を出す男っていうのは、それまでの男ってことよ。海人さんがそうじゃないことを祈るわ・・・だそうです」
ああ、そうだった。ついさっき学んだはずじゃなかったのか。かほるの母親が世間の常識とは違う所で生きている女性だということを。僕は何だかバカらしくなって、布団を敷き終わると着替えもせずにさっさと横たわり、夏掛けを被った。
それからどのくらいの時間が経過したのだろうか。僕は目を覚ました。頭がはっきりしない。その状態のまましばらく天井を見つめていたら、点灯管のみが灯る暗い中、目玉の表面に出来た邪魔な被膜を一枚ずつ剥がすかのように、辺りを段々認識できるようになってきた。
ふと視線を感じて頭を動かした。目が合う。かほるがベッドの端に横たわり、枕に顔半分をうずめ、片方の目で僕を見つめていた。いつから・・・。
見られていると、気になって眠れない。
さっさと、先に寝ちゃった癖に。
そうしないと煩悩に取りつかれる。
・・・煩悩。
そう、煩悩。・・・ずっと起きてたのか。
・・・うん・・・なんかね、眠れない。
そういうものだろうな。生まれ育ったところから離れるんだし。無理もない。
そのような会話をボソボソとしていたが、途中でかほるは急に黙ってしまった。何かを考えているようだった。次の一言が出なくて困っているのか。敢えて僕からは問いかけないようにした。
しばらくしてかほるは、吹っ切ったように息を吐き出してから口を開いた。
そっち行っていい?
何故。
海人を襲いに行くの。
おお、俺はいけないのに、かほるは構わないのか。
そうよ、今はそういう時代なんだから。
かほるはベッドから降り、まるでそれが当たり前であるかのように、ごく自然に僕の寝床に滑り込み、僕の胸に耳を当てた。
心臓の鼓動。
安らぐ私の心。
ねえ、このまま抱きしめて。そうすれば眠れるかもしれない。
ああ。
僕はかほるの腰に手を回し彼女を優しく抱きしめた。
心と心がひとつになったような愛おしさと安らぎ。
そうして僕らは互いの体温を確かめ合い、そのまま深い眠りに落ちたのだった。