うさとmother-pearl

目指せ道楽三昧高等遊民的日常

蛍の里

2005年06月19日 | お出かけ
6月も半ば、蛍の季節である。今日の日曜はきっといろいろな蛍飛ぶ所が人で賑わうんだろうな。
私も人波避けて明日あたり、蛍を見に行こうと思う。
私の住む町の東端に蛍の里がある。ここに毎年通うようになってそろそろ7年。この場所は昔から知っていたのだが、7年前に初めて行った時は、思わず立ち尽くしてしまった。地元の人が保護する、街ではだれでも知っている場所であるが、隠れ里のような場所だ。川の下のほうに車を止め、坂を上っていくと、そこは小山に囲まれた田圃である。町の明かりはほとんど届いてこない。夜の中、かすかな月明かりとほのかな蛍の光だけが、田や周りの山や小川や畦を照らしている。
ここに帰ってこられてよかった、と思えた。初めてきた場所なのにそう思えた。そうして少し泣いてしまった。今の日本では「となりのトトロ」くらいにしか残っていない里山の風景だった。
蛍の名所はいくつかあるだろうが、すぐそばの道から車のライトが見えたり、住宅街の明かりが見えたりするものだ。ここは違う。人工の明かりが全くない中で蛍たちが飛ぶ。
ずっとずっと変わらぬ風景なのだろう。私の父母や祖父母やその前の人々が生まれる前からここでは蛍が飛び、私が怒ろうが、泣こうが、死のうが、この里で蛍は飛び続けるんだろう。
何かに祈りたくなる場所だ。

実は、この場所を2年前に市は整備してしまった。蛍を見に来る人のために橋がかけられ、歩道が作られ、ちょっとつまらない場所になってしまった。悲しい、ことだった。

こどものころ、起きると枕もとのコップが逆さに伏せられ、中に蛍がいたことがあった。夜、カブで出かけた父が私のためにとってきてくれた蛍だった。薄い光を少しだけ放って、すぐ死んでしまった。早くに死に別れた父が私にしてくれた、それほど多くはないことのうちの悲しい思い出である。
コメント (15)
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