映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
上野正彦「死体に聴け」
2011年04月30日 / 本

2006年インデックスコミュニケーションズ刊。
著者の上野正彦氏はよくTVで見るが、眉の濃い印象的な顔で1929生まれ。東京都の監察医として勤務した30年間に2万体の死体に接したそうだ。
タイトルに「死体」を含んだ本を数多く書いている氏だが、今回初めて読んだ。内容は啓蒙もあり、主張もあり、面白話もあり、一般人への忠告もあり、と色々な要素が少しずつ盛り込まれているが、文章の切れ味がなく読後感はいまひとつ。定年退職した地方公務員の自分史を交えた気楽なおしゃべりのようなものか。
それでも気になる部分が多々あり、そこをもっと掘り下げてほしかった。例えば、医学部を出たが「死の哲学」を知りたくて、すぐに医者にならなかった。とか、結局は死=Nothingである、と悟ったとか、監察医制度は全国で5箇所、東京23区・横浜・神戸・大阪・名古屋にしかないが、死ぬ場所で死体が差別されるのはよくない。全国にこの制度を広めるべきだ(これは縄張り意識とはどうちがうのか?)とか、「現場保存」が先行して救える命を失うこともあるので、まず人命を救うべきだ(これは医者らしい言葉だ)、とか。TVドラマの監察医の描き方が不正確だ(我々素人は誰もドラマで詳細を見ているわけではない。興味を持つのは彼等自身だけではないか)とか。死は全てが自然死と変死に二分され、意外に変死の数が多い。というのは、医者に一定期間かかってから死に、その医者の死亡診断書がもらえるものが自然死、それ以外は変死とされるから。そう言えば親戚にも風呂場で倒れていた叔母とか、入浴中に亡くなった義兄などがいるが、あれは変死と言うべきなのか。
それ等について詳述したり熱くなったりしないのは、東京人の照れか、公務員の事なかれ主義の習性ゆえか。徹頭徹尾ただ呟いているだけである。出版業界の事情もあるのだろうが、こういう似たような本を幾冊も幾冊も出版することに何か意味があるのか疑わしく思う。事実を詳細に伝えるか、主張を明快にするか、さもなくば文章の良さで読ませるか、どれかにしてほしい。彼の風貌とタイトルには以前から興味があっただけに、少し期待を持ちすぎたのかもしれない。
著者の上野正彦氏はよくTVで見るが、眉の濃い印象的な顔で1929生まれ。東京都の監察医として勤務した30年間に2万体の死体に接したそうだ。
タイトルに「死体」を含んだ本を数多く書いている氏だが、今回初めて読んだ。内容は啓蒙もあり、主張もあり、面白話もあり、一般人への忠告もあり、と色々な要素が少しずつ盛り込まれているが、文章の切れ味がなく読後感はいまひとつ。定年退職した地方公務員の自分史を交えた気楽なおしゃべりのようなものか。
それでも気になる部分が多々あり、そこをもっと掘り下げてほしかった。例えば、医学部を出たが「死の哲学」を知りたくて、すぐに医者にならなかった。とか、結局は死=Nothingである、と悟ったとか、監察医制度は全国で5箇所、東京23区・横浜・神戸・大阪・名古屋にしかないが、死ぬ場所で死体が差別されるのはよくない。全国にこの制度を広めるべきだ(これは縄張り意識とはどうちがうのか?)とか、「現場保存」が先行して救える命を失うこともあるので、まず人命を救うべきだ(これは医者らしい言葉だ)、とか。TVドラマの監察医の描き方が不正確だ(我々素人は誰もドラマで詳細を見ているわけではない。興味を持つのは彼等自身だけではないか)とか。死は全てが自然死と変死に二分され、意外に変死の数が多い。というのは、医者に一定期間かかってから死に、その医者の死亡診断書がもらえるものが自然死、それ以外は変死とされるから。そう言えば親戚にも風呂場で倒れていた叔母とか、入浴中に亡くなった義兄などがいるが、あれは変死と言うべきなのか。
それ等について詳述したり熱くなったりしないのは、東京人の照れか、公務員の事なかれ主義の習性ゆえか。徹頭徹尾ただ呟いているだけである。出版業界の事情もあるのだろうが、こういう似たような本を幾冊も幾冊も出版することに何か意味があるのか疑わしく思う。事実を詳細に伝えるか、主張を明快にするか、さもなくば文章の良さで読ませるか、どれかにしてほしい。彼の風貌とタイトルには以前から興味があっただけに、少し期待を持ちすぎたのかもしれない。
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