映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
【映画】私の中のあなた
2009年 米国 1h55 原題 My Sister's Keeper
鑑賞@松江SATY東宝 監督 ニック・カサベテス
出演 キャメロン・ディアス アビゲイル・プレスリン
「もう姉のドナーにはならない」という宣伝文句から、よくある姉妹の葛藤ものかと思ったが、英語の題は「妹の番人」。それから連想するのは「私は弟の番人ではない」つまり人類の始祖アダムの子カインが弟アベルを殺して「弟はどこにいる?」と聞かれた時の答で、旧約聖書の創世記にある。ではこれは姉妹殺しのストーリーだろうか、そんな、ある緊張とともに映画を見始める。
まず驚くのは、11歳のアナ(アビゲイル・ブレスリン)が、自分は難病の姉の治療のため、身体部分を提供するのを目的に「作られた」子供だと観衆に告げることだ。その妹が、突然、「私の身体は私のもの。もうこれ以上協力できない」と、両親を提訴する。
親子対立の裁判ものかと思うと、また違う。てんかんの持病を抱え介助犬が付き添う弁護士とか、子供を亡くした女性判事(ジョン・キューザックの姉)とかが登場する。白血病の子供同士の微笑ましい恋愛も。色々あるが端折って、さいごは、医療技術の発展に乗ってどこまでも進む現代人に疑念を呈し、大自然の一部として生きることが幸せではないかと示唆する。運命と「戦う」のでなく「受入れる」ことをよしとする、いわば宗教的な方向を目指す。「千の風になって」に近いといえようか。
しかし、先日見た「闇の子供たち」(阪本順治監督)では、日本人の子供の為にタイの貧しい子供の臓器が売られるという実話にショックを受けた。アメリカは豊かな国であるが、臓器の為に次の子をわざわざ作るという発想はどうかな。一般に「子供を作る」というが、その子自身のためではなく、自分たちのために作るんじゃないかと普段から思っている私である。
ブログを読むと「大泣きした」という感想が意外に多くてビックリした。映画を見て泣けばいい、という人が多いのは日本特有の現象だろうか。
考えることは多かったが、殆んど泣くことはなかった。何よりも母親の浅ましさ。わが子のためにがんばる母親って、傍から見ると格好の良いものではない。それは電車の中で先にもぐりこんで席をとる子供が見っともないのと似ている。しかも、難病の長女の為に他の子供たちも、夫も、自分さえも犠牲にしている。ひたすら突っ走るために病気の子ども自身の望みさえ見えなくなる。それを修正するのが、夫であり、娘であり、長男である。弁護士資格を持つ知的なはずの女性がここまで狂うのが、母性というものの恐ろしさか。
アナ役のアビゲイルは、映画の中でも「一見ガール・スカウトのよう」と言われるが、賢くて溌剌とした表情は、少女期のジョディ・フォスターを思わせて、なかなか好感がもてた。「リトル・ミス・サンシャイン」で踊っていたチビ娘もここまで成長したのか。また「失読症」の兄(エヴァン・エリングソン)も、影の薄さが印象的で良い感じ。キャメロン・ディアスは、これまでしばしばおバカな娘を演じており、今回はじめて母親役を与えられたが、髪振り乱した母親にそのイメージが巧まずして生きている。
鑑賞@松江SATY東宝 監督 ニック・カサベテス
出演 キャメロン・ディアス アビゲイル・プレスリン
「もう姉のドナーにはならない」という宣伝文句から、よくある姉妹の葛藤ものかと思ったが、英語の題は「妹の番人」。それから連想するのは「私は弟の番人ではない」つまり人類の始祖アダムの子カインが弟アベルを殺して「弟はどこにいる?」と聞かれた時の答で、旧約聖書の創世記にある。ではこれは姉妹殺しのストーリーだろうか、そんな、ある緊張とともに映画を見始める。
まず驚くのは、11歳のアナ(アビゲイル・ブレスリン)が、自分は難病の姉の治療のため、身体部分を提供するのを目的に「作られた」子供だと観衆に告げることだ。その妹が、突然、「私の身体は私のもの。もうこれ以上協力できない」と、両親を提訴する。
親子対立の裁判ものかと思うと、また違う。てんかんの持病を抱え介助犬が付き添う弁護士とか、子供を亡くした女性判事(ジョン・キューザックの姉)とかが登場する。白血病の子供同士の微笑ましい恋愛も。色々あるが端折って、さいごは、医療技術の発展に乗ってどこまでも進む現代人に疑念を呈し、大自然の一部として生きることが幸せではないかと示唆する。運命と「戦う」のでなく「受入れる」ことをよしとする、いわば宗教的な方向を目指す。「千の風になって」に近いといえようか。
しかし、先日見た「闇の子供たち」(阪本順治監督)では、日本人の子供の為にタイの貧しい子供の臓器が売られるという実話にショックを受けた。アメリカは豊かな国であるが、臓器の為に次の子をわざわざ作るという発想はどうかな。一般に「子供を作る」というが、その子自身のためではなく、自分たちのために作るんじゃないかと普段から思っている私である。
ブログを読むと「大泣きした」という感想が意外に多くてビックリした。映画を見て泣けばいい、という人が多いのは日本特有の現象だろうか。
考えることは多かったが、殆んど泣くことはなかった。何よりも母親の浅ましさ。わが子のためにがんばる母親って、傍から見ると格好の良いものではない。それは電車の中で先にもぐりこんで席をとる子供が見っともないのと似ている。しかも、難病の長女の為に他の子供たちも、夫も、自分さえも犠牲にしている。ひたすら突っ走るために病気の子ども自身の望みさえ見えなくなる。それを修正するのが、夫であり、娘であり、長男である。弁護士資格を持つ知的なはずの女性がここまで狂うのが、母性というものの恐ろしさか。
アナ役のアビゲイルは、映画の中でも「一見ガール・スカウトのよう」と言われるが、賢くて溌剌とした表情は、少女期のジョディ・フォスターを思わせて、なかなか好感がもてた。「リトル・ミス・サンシャイン」で踊っていたチビ娘もここまで成長したのか。また「失読症」の兄(エヴァン・エリングソン)も、影の薄さが印象的で良い感じ。キャメロン・ディアスは、これまでしばしばおバカな娘を演じており、今回はじめて母親役を与えられたが、髪振り乱した母親にそのイメージが巧まずして生きている。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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いつも犠牲を強いられ、後回しにされているアンやジェシーが哀れで仕方ありませんでした。
私も「闇の子供たち」を見ましたが、「人道上許されないことだ」と、理性ではちゃんと分かっていても、我が子を助けるためにはブレーキが利かなくなる親心というものが理解できませんでした。
それは私自身が親になったことがないため、想像することは出来ても、我が事のように、我が身を重ねて見ることが出来ないから、理解できないのかな?と思いました。
心のままに「理解できない!狂気じみている!どんなに子どもを愛していても、どんなに子どもを助けたくても、人の道に反する悪魔からの誘いには、NO!と言える母親でいたい」と言ってしまったら
「あなたには子どもがいないから、親の気持ちが分からないのよ」と言われそうで(それは私が一番言われたくない言葉...)
必死になってしまう母親の気持ちは一応、歩み寄って理解したい...と思って、柔らかく感想を書きました。
すみません、こんな所で弁明してしまって...
>あなたには子どもがいないから、親の気持ちが分からないのよ
という言葉、私も若い頃はよく言われました。そんな時には>ああ、分らないわねえ、分りたくもない。
と答えてやればよいと思いつつ、一度も言ったことがありません。(気の利いた言葉は瞬時に出ないもの)相手の言論を封じ込めるような暴力的なセリフを吐く人とは付き合わないことに決めてから、楽になりましたけど。
私も母性ということに関して貴女とやや似た考えを持っています。底知れない不可解な不気味なもの。。。
〔私の中のあなた〕という映画はその一部をえぐりだしたものでしょうか?観たい様な観たくないような映画ですね。
私も〔子供のない人にはわからない〕というセリフ何度も聞かされたので、その類の話題では先に自分から〔子供がない私が・・・〕と枕詞のように使ってから言い出すようにしています^^
子供のない女の目から見た母親というものはどのように見えているか子を持つ女は知らないのです。
用心の為書きますがすべての母親とはいいません。