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【本】フロイト〈シナリオ>

1987年 人文書院 著者 J.P.サルトル 訳者 西永良成

サルトルが1958年にジョン・ヒューストンに頼まれ映画脚本として執筆した、フロイトの若き日の伝記。初稿は上映すると7時間以上にもなるので、推敲したらもっと長くなったとか。ヒューストンとの意見の違いも甚だしく、とうとうサルトルは、放り出してしまい、ほかの人が仕上げて、映画化された。題名は「フロイド、隠された欲望」1962でモンゴメリー・クリフト主演、残念ながら未見である。

若い頃の知り合いで「サルトルは戯曲以外全部読んだ」と言う男性がいた。サルトルは小説や評論はわかりにくいが、戯曲はその点まだ解りやすいと思うのだが。特に「蝿」は好きだった。主役エレクトラをペンネームに採用したくらい。(別に私がエレクトラコンプレックスを持っているわけではないが)

最近サルトルに関する本を3冊読んだ。
「図解サルトル」(永野潤)ナツメ社
「サルトルの晩年」(西永良成)中公新書
そしてこの「フロイト」だ。
気に入った順は、「フロイト」が1番、「図解」が2番、「晩年」が3番。

閑話休題、このシナリオでは、フロイトがウィーンの神経科の医者として、ヒステリー女性患者の治療のため催眠術を利用していたが試行錯誤の末、精神分析に辿り着くまでを、具体的に女性たちの例をあげて描いている。フロイトが意識下で強い父親を渇望し、自分の上司などに次々と父の代用品を求めたが、フロイトの方が才能が勝るため、挫折の連続で、ついに父離れして自立するまでの長い歴史を感動的にのべている。サルトルも父親とは特別な関係があったようなので、自分と重ねていたのかも知れない。

昔、もう30年くらい前、2年間の中東勤務からの帰途、ヨーロッパを回った。その際ウィーンではフロイト記念館を訪ねたが、診療所のあとらしく、暗い荘重な雰囲気だった。一方夕闇の公園で白い長いドレスの女性と黒服の男性の一団がワルツを踊っているのも遠目に見た。緑あふれる街の対照的な思い出だ。
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コメント
 
 
 
Unknown (Lamblin)
2009-10-25 08:36:24
Bianca 様 おはようございます。
 見るとはなしに眼にした今朝のTVに宍道湖が映され、久しぶりにBianca 様のブログを訪ねた様なことでございます。
折に触れ訪問していましたが、少しく間が空きました。無責任な印象ですが、常連の方々のコメントが少なくなり、新しい方が参加されたのでしょうか。
ところで「ヒューストンとの意見の違いも甚だしく、とうとうサルトルは、放り出し」たとは愉快ですね。平凡な身にも生真面目に対応しますと大凡その様な結果になると想像されますから、サルトルほどの方は相当の覚悟をしてから手掛けたと思われますが、それでも放り出すようなことになったのでございましょうね。
拝見して居りませんので全て断片からの想像にすぎませんが、正直さの反映のようで嬉しいものがございました。
コメントではなく、お久しぶりのご挨拶でした。
 
 
 
Lamblinさま (Bianca)
2009-10-25 10:41:30
お久し振りでございます!こうやってたまに寄っていただくのも嬉しいです。固定化は面白くありませんので、機会を捉えて方々に赴き、新ブログと新顔を獲得します。サルトルが引き受けたのは、お金がほしかったということも。ヒューストン監督は男性的な映画がお得意ですが、この時もハリウッド受けする冒険映画をもくろんでいたようです。つまり、フロイトの精神的冒険。精神分析王国USAならではの発想ですね。関係者で合宿までしてがんばったようですが、結果は「アンナ頑固な奴は居ない」とヒューストンが自伝言い、サルトルもぼやきの限りを手紙に書きで破局したとか。
 
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