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【本】ひとりでも生きられる

著者はこの本を出して一年せぬうちに得度して瀬戸内寂聴となったが、当時はまだ瀬戸内晴美だった。
青春出版社1973年の版であるが、わずか3ヶ月で74版というから、人気沸騰のベストセラーだったわけだ。
今見るとずい分古ぼけて、表紙が擦り切れている。しかし、図書館の薄暗がりの中で、なつかしい文字が私をひきつけた。

実際のところ、人は誰もひとりでは生きられないが、このタイトルがまるで福音のように力強くひびくのは何故だろう。

当時のわたしは独身で、中身よりはこのタイトルに力づけられた。著者が御仏に帰依してからは、もはやこのような威勢のよいセリフを吐かなくなったのではないかと思うが、よくは知らない。私も数年後に結婚して、差し当たっては恩知らずにも本のことも忘れていた。
このタイトルは、当時、独身女性を励ます応援歌のようなものだったのだろう。
また、結婚していても、色々な事情でこの言葉をお守りにした人も居たかもしれない。今読んでみたら、内容はかなり荒っぽくて、勢いだけで書いているように見え、寂聴になってからの彼女の発言の方がやはり説得力があるように見える。当時はそれだけ精神的に煮詰まっていたのだろうか。今の彼女に、この本についてどう思うか、感想を聞きたい気もする。彼女は、出家して「しまった!」と思ったこともあると、どこかで言っていた。しかし、もう後戻りはできない、そういう場所に自分を追い込んだのも良かったのかも知れない。

→「女子大生・曲愛玲」6-10-23
→「孤高の人」    11-2-8

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