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橋本関雪展

中国への憧れ、動物への親しみ 孤高の日本画家
橋本関雪(1883-1945)展 島根県立美術館で8月5日から9月14日まで

蒸し暑い中を会場にたどり着いたが、なぜか敷居が高く感じられる。気合をいれるためまず館内カフェで珈琲を飲んだ。ちょうど今日は珈琲が無料になる日なのだ。(詳細は文末)。

いざ中に入ると、すぐにこの画家に親しみを感じた。彼の絵は、言いたいことがハッキリ表現してある。だから、さほど努力しなくてもすっと分る。
「孤高の日本画家」と言われるように弟子や師友に恵まれなかったらしい。
その代わりと言うか、生育時の知的環境と遺伝に恵まれていた。恵まれすぎていたのがむしろ災いして画家としては余計な教養の持主だったのかも。

新南画といわれる画風で中国南方の船と漁師を描く『南国』は色がきれいで大沢昌介を思い出す。『失意』は、都落ちした杜甫が落魄の歌手と出会う図。『意馬心猿』は目つきの鋭い馬と、それを覗う猿が描かれている。京画壇の大御所・竹内栖鳳との確執を表しているという解説が目を引いた。
他に、動物の絵が多い。中国との戦争が進むと共に、テーマが中国から動物に変わっていく。一時は50匹の犬を飼うほどで、動物好きは生涯変らない。幼い時に母が家を去り、老いて妻に先立たれたというから、寂しさのゆえもあったかも。グレイハウンドとボルゾイが3匹いる絵は印象的だ。20代で日露戦争に従軍したように、年をとっても戦争には協力的で、ペン部隊で南方に出かけ、1942年に民族衣装の女性の「防空壕」と言う作品を残している。

13歳で既にプロの画家に煙たがられるくらい腕がよく、20才で竹内栖鳳の画塾に入った初日に、人も無げに喋りまくったそうだ。それでは周囲とうまくやって行くことは不可能で、結果として「孤高」にならざるを得ない。敗戦を知らず、61歳で死んでしまった彼の容貌は、どこか幸田露伴に似ている。露伴の死もその前後だ。

ついでに先月から私が入会したこの美術館について一言。
この美術館の「パスポート」は3000円で1年間いつでも入れる。
宍道湖を見晴かすロビーや、土産物店や、図書室、レストラン・カフェ、快適な化粧室もなかなか魅力的だ。5つの入館スタンプが貯まると、カフェで珈琲の無料サービスがある。また閉館時間が、日没から30分後というのは独特だ。宍道湖が夕陽の名所であることを思い出させるし、自然とともにあった近代以前の感覚を呼び醒まされる。
以上、ちょっとわが町の美術館を自慢して見た。

展覧会は、姫路、富山、松江の順で、つぎは京都に行くそうだ。

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (おキヨ)
2009-08-11 22:00:36
橋本関雪・えーと代表作は?と検索して・・・わかりました!^^
〔月下の狸図〕ですね。図録で見た気がします。
画壇で交じり合わない人は結構多くてそういう画家たちは人と違う力を持っていますよね。孤高にならざるを得ないと思います。
この年代に並ぶ日本画家達はほんとうにきりりと背筋の伸びた絵を描きましたね。
 
 
 
おキヨ様 (Bianca)
2009-08-13 05:18:48
コメント有難うございます!返事が遅くなってごめんなさい。横山大観など有名な日本画家に比べて知名度が低いのは、顕彰してくれる弟子が少なかったせいではないか、また時期が戦争末期であったから益々そうなったのではと言うことです。代表作が「月下の狸図」ですか?そういえば、彼の顔はどことなくこの動物に似ていますね・・・・・・。
 
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