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【映画】おはん

1984年 東宝 112分 原作 宇野千代 監督 市川崑 出演 吉永小百合 大原麗子 石坂浩二 ミヤコ蝶々 香川三千 常田富士男 桂小米朝 横山道代 浜村純 鑑賞@松江テルサドームシアター

大原麗子(09年8月3日没)の追悼上映。これは大昔に見た覚えがあると日記を見たら珍しく沢山書いているので、引用することにする。

1985年4月7日(日)
「おはん」(中野名画座 5:20-7:10)
Kが行こうというので(Kとは夫のこと)さしたる期待もなく行く。「散々喧伝された吉永小百合のヌードなんか見たくもない」と思いながら。それは嬉しくも裏切られた。
ユーモラスでとぼけてて、なおかつ美しく、情感溢れる、一本芯のとおった近来にない日本映画の傑作である。市川崑監督ときけばうなづかれる。
まず、男女の伝統的固定観念を木端みじんに打破るような、一人の男と二人の女が出てくる。優柔不断で生活力がまるでなく、ただ涙もろく思いやりのある2枚目半の男。それに、凄腕の事業家で、ゾッとする位美しくて、しかもこまやかな思いやりと激しい愛情とで男につくす芸者やの女主人と、ひたすら男を愛し、言うなりに妻の座をひき、言うなりに関係を戻そうとするが、また身を引く、かわいい女。あまりあかぬけない。いつも赤い足袋にピンクか何かの腰巻をした、ぼってりとした体つきの女がいる。この二人の女が初めて会う時は、互いに一定の距離をもって相対し、決してつかみ合いを演じたりしない!子供も出て来るが、実にいい感じでフーっと消えてゆく。芸者になりたての16歳のおせんも、蝶々のおばあさんも、よい。

・・・などと長々と感想を書いてほめちぎっているが、今回の感想とは大分違う。
24年前の自分と今の自分が、何故こう違ってしまったのかと、しばし考えた。

市川崑への無条件の尊敬がやや薄れた。吉永小百合への評価はまるで変わったわけではないが、この日はKに影響されて好意的な見方をしている。「男女の伝統的な固定観念をこっばみじんに打ち砕いた」も、違う。24年の間に世の中も変ったのか、私の見識が変ったのか、こう言う男女は例外ではなく、よくあることなのだ。

おはんはただ可愛い女ではなく、むしろラストシーンなど格好よい女に見える。蝶々の演技はバツグンにうまいし、夫の石坂浩二、芸者の大原麗子の人物像はくっきりと描かれているが、おはんの吉永小百合、どうもイメージがはっきりと結べない。それは、このおはんが宇野千代のナルシシズムの産物だからではないか。実際の生活で宇野千代は経済力もあり、男が心変わりしたらアッサリと立ち去る強さを持っていた。だから、むしろ男が未練を残してしまう。こんな私っていい女だと、自分に惚れているのじゃなかろうか。少なくとも映画からはそういう感じを受ける。小説はまた違うかも知れないが・・・・・・。


市川崑
「さよなら市川崑監督」8-2-21
「日本橋」     8-7-26
「黒い十人の女」  8-8-23
「女経」     14-2-4
「野火」     14-4-2
宇野千代
「いつも新鮮な世界にいる姑」11-1-2
「岩国にヘルマン・ヘッセ展を」13-9-29
吉永小百合
「母べえ」8-2-2
「おとうと」10-2-14
「コクリコ坂から再び」11-7-26
石坂浩二
「ラストゲーム最後の早慶戦」10-7-25

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