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ヤマホロシ(山保呂之)又はツルハナナス(蔓花茄子)


よその家の庭に咲く小さな白い花に目を奪われ、垣根越しに撮影していると、声をかけられて一瞬ひるんだ。考えてみれば、犯罪の準備と見えなくもない行為である。そこで怪しい人物に思われないようにニコニコしながら、花があまりきれいなのでというと、納得した様子の男性「その花はですねえ、えーと、なんといったかな?家内に聞いてみましょう」と、携帯電話を取り出して、尋ねている。どうやら彼は外から帰宅したところだったらしい。

あれはいつごろだったか、少なくとも1年半か2年以上前だと思うが、その場所を通るたびに、はてあの名前は「ヤマ」で始まるはずだが、ヤマアラシではないし、ヤマボウシでもヤマフラシでもヤマフスマでもない、弱法師(ヨロボウシ)みたいでもあったなあと、思い出せない。パソコンの画像とか日記とかに残ってないかを調べたが見つからず、考え続けるうちに、ある時、日記にハッキリとその名が記してあるのを見たと思ったら、夢だった。この執念、まるでノーベル賞の受賞者なみだ。途中省略して、結局「ヤマホロシ」だとわかった。

ついでだが、「ヤマホロシ」は「山保呂之」と記憶すると、意外とパッと記憶に蘇る。漢字は右脳に訴えるせいかもしれない。日本語に漢字とカナがあるのは、こういう時は便利である。戦後日本語をローマ字表記にしようとか、明治時代にフランス語を国語にしようとかいう話すらあったというが、そうならなくてまずよかった。

後で分ったが、ツルハナナスが本当の名前だという。ヤマホロシは日本に古くからある別の植物の名前だが、1990年代に、両者が同じ植物だと思った園芸店のひとが、ナスでは野菜と間違われると、こちらを採用したらしい。私見だが、保や呂や之というやさしい字ではなく、蔓と茄というややこしい字が混じっているのも、敗因かなと思う。一旦広まった名前は、まちがいであろうと消えず、こうなったらずっと併記するべきか、それとも、正しい名前だけを出すべきか。常に二つの名前がついてまわる点で想い出すのが……

NHKのアナウンサーに新人のとき美貌と東大卒で目立った女性がいた。Kというちょっと珍しい苗字だったが結婚して平凡な苗字に変わり、知らぬ間に離婚して再婚したが、そのたびに新しい姓が字幕に出る。釈然としない思いがした。離婚再婚を繰り返すという事がけしからんというのではなく、そういう私事を視聴者がニュースの時間に自然と知らされるということにだ。また、初めの結婚では2つの名前さえ覚えればよかったが、再婚では3つを思い出さねばならない。パソコンのように、上書きで消えるわけではないのだ。彼女自身が「結婚しました」「別れました」「再婚しました」と、嬉しさのあまり公表したいのであれば彼女にとっては好都合だが、芸能ニュースでもないのに知らされるのは、どうしたことか。相手の男性は離婚しようと再婚しようと、公表しなくても済む。選択的夫婦別姓制度があれば、あるいはNHKが仕事上で通称を認めれば、全国の視聴者の頭をこういう些事で煩わせずに済むのである。

ヤマホロシ  山保呂之
ツルハナナス 蔓花茄子

こう並べてみると、上が男の、下が女の姓名のように見えるのが妙だ。


→「無防備」14-1-10
→「入梅の風景」14-6-12
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