映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
映画「小さいおうち」
2014 松竹 136分 松江SATY東宝にて 1月27日鑑賞 原作 中島京子
監督 山田洋次 出演 松たか子 黒木華 吉岡秀隆 倍賞千恵子 中嶋朋子 妻夫木聡
原作は2010年直木賞受賞作。
女中という立場は否応なく家の秘密を知ってしまうので小説の恰好の語り手にも素材にもなる。今とちがい高度成長期の前までは、この職業につく人が珍しくはなかった。我家にもいた。谷崎順一郎の「台所太平記」が週刊誌に連載されたのに触発されて母も代代の家事使用人のことを書こうと試みたが「つい感情的になってどうも書けない」と挫折したことがある。
(概略)
昭和初期、東京郊外に佇む赤い屋根の家に奉公する女中タキが見た、ある“恋愛事件”。その時、タキが“封印した秘密”が、60年の時を経た平成の今、タキにつながる青年(妻夫木聡)の手で紐解かれていく。
小説は未読だが映画を見ようと思ったのは「徹子の部屋」で松たか子を見てから。黒いセーターに装飾品も化粧気もあまりなく、口数少ないが、言葉遣いや話の内容に知性が窺われ、一口で言って神秘的であることに興味をひかれた。そういう意味では、同性異性を問わず人を魅きつけてやまない女性という作中人物になりきったのかと思いきや、映画の彼女は明るく浅薄な感じすらするので、次の作品の役の雰囲気なのかも。
中島京子は1964年生まれで、戦前戦中のことはもっぱら新聞雑誌小説などの資料から得たようである。
実際に人々がどういう感じで生きていたのか、今映画やドラマで見るように、戦争が日常の一切をカーキ色に染めていたわけではないということが、この映画を見るとわかる。「南京陥落」もお祭り騒ぎで受け止められて「真珠湾攻撃」も、またしかりである。逆に言えば、いま私たちが生きている間にも、どこかで何かが起きており、ただ気が付かない、知らないだけかもしれない。
さてこの映画はそういう日常の細部を描くことにかけては優れているが、肝心の奥様(時子)の秘密が、観客にはとっくにわかっているのに女中(タキ)には分っていないという時間差がある。また最も大きな秘密が、タキの心の中には秘められているらしいのだが、
山田監督の映画にはこれまで不倫は描かれていなかったようだ。少なくとも実行に至ったものは。そういう意味ではこれは新機軸と言えるかもしれない。また、タキと時子の関係について惜しむらくはもっと鮮明大胆に打ち出してほしかった。
若い日のタキを演じた黒木華は如何にも昔の日本女性らしいうりざね顔で、慣れない和服と割烹着で家事をこなすのにさぞ苦労したことだろう。現代のたきは倍賞千恵子で、少々若いときと顔かたちが違うと思ったが、一人で生きてきた女性らしい強さが出ていた。「男はつらいよ」の妹さくらも、似たような性格ではないだろうか。
なお、中嶋朋子演じる睦子は宝塚の男役のような雰囲気であり、時子の魅力の証人とはなるが、出演時間が短いのであまり印象に残らない。原作ではその性質がもっとはっきりと描かれているのではないだろうか。と原作を読もうとしたが貸出中で、この分だと、半年くらいしないと読めないのかも知れない。
松たか子
→「ヴィヨンの妻」 9-10-16
女中
→「猿橋勝子と吉岡弥生」13-12-26
山田洋次
→「学校」 13-11-14
→「おとうと」10-2-14
→「母べえ」 08-2-3
吉岡秀隆
→「ゴールデンスランバー」10-2-6
→「はやぶさ遥かなる帰還」12-9-3
関連する絵本
→「ちいさいおうち」08-08-14
当時の映画
→「愛染かつら」10-5-29
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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ごぶさたしていましたが、センター試験の記事を読んでお元気そうなのがわかりました。ブログずっと続けてるんですね。自分は続かなくなってしまいましたが、なんとか元気にやってます。
こんなに早くお返事下さるとは…。JTさんのことを忘れるはずはありません!私が「村乙女」と名乗っていたころ以来のおつきあいですもの。JTさんは思いやりと優しさ、私と正反対の性格だと思いますが…私の知らない若い世代の感覚を教えてもらい、刺激を受けました。ブログをまだ続けているという粘り強さは女性だからかも知れませんね。「センター試験」でも果敢に戦っていたでしょう?鳶にたいしても反撃するくらいですからね。たまには記事を書いてみては?
そうですね。
たまには、書いてみようかな・・・
ぜひ”Big Screen"でJT節を聞かせてください!
小さいおうちは、本を読んで、映画を観たんですよ。妹たちと3人で。私も徹子の部屋を観ました。あなたと同じような印象でした。3人とも「ちよつと違うねえ」という感想でした。松たか子があの時代の世間知らずのお嬢さんという感じが出ていなかったように思いました。彼女の気の強さが前面に出ていたようで。タキさんは、あんな感じでもあり、ちよつと違うようでもあり、ですね。残念だったのは鎌倉で密かに逢っているいるところを、タキさんは見てしまうんですが、その場面が映画ではありませんでした。その時代の鎌倉を映像化するのが難しかったのでしょうか。