映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
【投稿】夫の喜寿
前回、「次の目標の人形」で夫の死後の心づもりをしていたので、一部の男性にショックを与えたYKさんが、実際はいかに細やかに配偶者に配慮しているかをしのばせる文章が届いた。肝腎の講演の中身は書いてないのがちと残念だが。
夫の喜寿
今月の十八日のことである。「郵便局ですが、現金書留です。認印をください」、と言ってきた。わが家では、祝いごとはない、家族みんな元気だ。何かしらと見ると、積寿会(夫が勤務し積水化学を定年した社員の会)である。夫は講座日で帰るなり、「積寿会からか、何だろう」と、不思議そうに封筒を切っていた。驚いたのか、「おい、オレ、十二月二十八日の誕生日には喜寿か。オマエは、今年は七十八歳になると言っていたなあ」、「え…なんで」。口喧嘩しても負けると思い、西暦で計算すると間違いない。おたがいに六十五歳が過ぎると、自分の年齢をうっかりしがちになるようだ。
次の日に、夫は、礼状を書いて机に置き、散歩に出かけた。盗み読みをしたわけではないが、「四年前に大病を三回繰り返しましたが、元気になって、習い事に精を出すことができるまでに回復できて喜んでいます。このたび、家族の誰一人、喜寿に気がつくことがなかったのに、会から祝っていただくとは、とても嬉しい限りです」という内容が綴られてあった。
両家の母たちは喜寿を祝ってもらうと、早死にするとか言って、断っていたが、夫の場合は、食道がん手術、次の年はリンパ腺癌で、二十四時間よる点滴抗がん剤、放射線治療、その年の秋には、動脈溜手術を乗り越えたのだから、これ以上、大病をするはずはない。家族を思えばこそ、がんばってくれたひとこまが胸中をよぎった。何か家族で祝ってあげなければと思いながら、夕食準備をした。帰宅した次男に、ことの内容を話し、長男と相談するように伝え、後は彼らに任せるつもりだ。
タイミングよく、夫は二十日の毎日新聞夕刊で、十一月三十日の毎日新聞オーバルホールの『村上春樹をたどる旅』広告を見て「数回広告しているなあ」と、関心あるようなつぶやくのが耳に入った。これだ、これに決めよう、と夫に話してみた。
夫は村上氏のフアンというほどではないが、数冊の作品を読んだ話は聞いている、講座でも取り上げ、話題の作家だから、興味があるようだ。一部は講演、二部はフリートーク、一息してJAZZよる演奏である。聞いてもいいなあ、でも終了が九時半か、と気になる様子だ。それから「帰宅するのが気になるなあ」と、躊躇している様子。これこそ喜寿祝いだ。近くの阪神ホテルで、泊まる方法もあると勧めた。「そうだな、大病後、温泉には行ってない、阪神はお風呂が冷泉だからなあ」と言いながら、久しぶりに笑みを浮かべていた。
早速、FAXで申し込んだ。定員になりしだい締め切り、多かったら抽選らしいが、二十六日には聴講券が届くそうだ。そわそわしながら、下のポストを見に行っていたが、午後の便で届いた。「届いたぜ」と満足そうだった。早速、パソコンで阪神ホテルへ予約を取った。私は村上氏の本は読んだことはないし、どこまで理解できるか分からないが、当日、充実した夫の顔を見るだけでも、至福の一日になるだろう。
課題―「自由課題」
提出日―平成二十二年十二月一日
夫の喜寿
今月の十八日のことである。「郵便局ですが、現金書留です。認印をください」、と言ってきた。わが家では、祝いごとはない、家族みんな元気だ。何かしらと見ると、積寿会(夫が勤務し積水化学を定年した社員の会)である。夫は講座日で帰るなり、「積寿会からか、何だろう」と、不思議そうに封筒を切っていた。驚いたのか、「おい、オレ、十二月二十八日の誕生日には喜寿か。オマエは、今年は七十八歳になると言っていたなあ」、「え…なんで」。口喧嘩しても負けると思い、西暦で計算すると間違いない。おたがいに六十五歳が過ぎると、自分の年齢をうっかりしがちになるようだ。
次の日に、夫は、礼状を書いて机に置き、散歩に出かけた。盗み読みをしたわけではないが、「四年前に大病を三回繰り返しましたが、元気になって、習い事に精を出すことができるまでに回復できて喜んでいます。このたび、家族の誰一人、喜寿に気がつくことがなかったのに、会から祝っていただくとは、とても嬉しい限りです」という内容が綴られてあった。
両家の母たちは喜寿を祝ってもらうと、早死にするとか言って、断っていたが、夫の場合は、食道がん手術、次の年はリンパ腺癌で、二十四時間よる点滴抗がん剤、放射線治療、その年の秋には、動脈溜手術を乗り越えたのだから、これ以上、大病をするはずはない。家族を思えばこそ、がんばってくれたひとこまが胸中をよぎった。何か家族で祝ってあげなければと思いながら、夕食準備をした。帰宅した次男に、ことの内容を話し、長男と相談するように伝え、後は彼らに任せるつもりだ。
タイミングよく、夫は二十日の毎日新聞夕刊で、十一月三十日の毎日新聞オーバルホールの『村上春樹をたどる旅』広告を見て「数回広告しているなあ」と、関心あるようなつぶやくのが耳に入った。これだ、これに決めよう、と夫に話してみた。
夫は村上氏のフアンというほどではないが、数冊の作品を読んだ話は聞いている、講座でも取り上げ、話題の作家だから、興味があるようだ。一部は講演、二部はフリートーク、一息してJAZZよる演奏である。聞いてもいいなあ、でも終了が九時半か、と気になる様子だ。それから「帰宅するのが気になるなあ」と、躊躇している様子。これこそ喜寿祝いだ。近くの阪神ホテルで、泊まる方法もあると勧めた。「そうだな、大病後、温泉には行ってない、阪神はお風呂が冷泉だからなあ」と言いながら、久しぶりに笑みを浮かべていた。
早速、FAXで申し込んだ。定員になりしだい締め切り、多かったら抽選らしいが、二十六日には聴講券が届くそうだ。そわそわしながら、下のポストを見に行っていたが、午後の便で届いた。「届いたぜ」と満足そうだった。早速、パソコンで阪神ホテルへ予約を取った。私は村上氏の本は読んだことはないし、どこまで理解できるか分からないが、当日、充実した夫の顔を見るだけでも、至福の一日になるだろう。
課題―「自由課題」
提出日―平成二十二年十二月一日
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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届いたのですね。申し込みよかったね。阪神ホテルで泊まれる。文化センターの近くでもと聞いていたのだよかったね。村上氏の講演聞くのも楽しみですよね。
YKさんのご主人とは、八木先生のブログ(2005年12月1日「照柿」)でかなり激しく論争したことがあるのです。「誰だこの女は、生意気なヤツだ」と言うご主人に「シーッ、教室の人よ」とYKさんがとりなしたそうです。計算するとあの翌年に大病をなさったようで、もしかしたら私にも責任があるのかもしれません。