映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
モノレール文庫
2007年06月14日 / 雑
1時間つぶさねばならず、あいにく本も携帯電話も持たず、本屋はまだ開いていないという時、どうするだろうか。喫茶店に入る?煙くさい中で1時間はつらい。
きのう、そういう場面にあって、ひらめいたのは…近くのモノレールの駅に行き、最低の切符(200円)で入ると、空気は清浄で、読書にピッタリの明るさの、いす・テーブル・自販機に本棚のそろった場所がある。
「モノレール文庫」とは、我が家の近くを通るモノレール(21.2kmで世界最長がギネス認定済み、停車駅には伊丹空港や万博公園などがある)が設けている本棚だ。客が置き忘れた本を元に始めたらしい。モノレールのどの駅にもあるのは、この電鉄会社が、空港並みのユッタリした空間を享受するゆえだろうか。ここで一冊を選び、車中で読んで、降りた駅で戻すことも出来る。日頃あまりこの路線を利用しないけれど、趣旨が気に入って、不要の本を寄付したこともある。
とにかく、昨日はたった300円で(飲み物代100円で)1時間近く楽しく過ごせた。他には相客もなく、なぜか一羽の雀が、もの慣れた様子で飛びまわっていた。床に落ちたパン屑目当てだろうか?初体験なので、改札口を出るのに駅員に「ちょっと忘れ物をして」と言い訳したが、もしかしたら不要だったかも。
そして、帰りがけに一冊の文庫本を発見した。深田久弥「知と愛」角川文庫1954年刊。 この小粒な小説自体のことではない。この作家は「日本百名山」などで有名であるが、創作家として北畠八穂を裏切ったという過去もある。
私が気に入ったのはその古色蒼然たる佇まいだ。今から見ると包装過剰で、紙のカバーと、薄いパラフィン紙と、その下の帯がすべてそろっている。カバーには「墨田區石原3丁目電停前西本書店」(都電はバスに変わり、この本屋も今はないだろう、あったらゴメンナサイ)そして、扉には付けペンで書いたらしき女性の名前と住所とが。
さらに帯の折り返し部分には表側に文庫版「バートン版千夜一夜物語」全20巻、裏側に文庫版「ニーチェ全集」全23巻とある。中を見ると「角川文庫目録」として、かの懐かしい国別目録が。
中でも日本文学は、5頁で古典15点と現代320点。樋口一葉に始まり、露伴、鴎外、漱石、荷風、実篤、直哉ETC、詩、俳句、短歌にいたる堂々たる陣営。三島や太宰も、この中では小僧にしか見えない。それらが「現代文学」に分類されているという事に注目である。「古典」は古事記、万葉集、枕草子、伊勢・竹取・源氏・今昔物語、歎異抄、西鶴が3点に芭蕉とそろっている。そのあと仏文学が2ページ余(220点)独が53点、露が33点、英41点、米22点と続く。
しみじみと、かつて日本をおおっていた読書愛、文学熱を顧みたことであった。今の日本を牛耳っている世代には、別世界の事件のように見えるだろうなぁ。
この詳細な記述でお判りのように、この本は家に持ち帰った。いけないのかな?それから、私は愛書家でも、古書マニアでもない。古本は50~100円均一専門だ。
ただし、過去追慕主義者ではあるようだ。♪しづのをだまき繰り返し~~~
コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )
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家にある本寄付に行きたいですわ。
難波の花月の前の大きい本屋さんの中に、各階にイスとテーブルが置いて、適当な本さげて来て、時間待ちに読むのもいいものです。
土曜日曜はいっぱい、間の日にいく、若い人あまり座らない、私のような人が座れる本屋は好き。阪急梅田の本やは疲れてしまう。