goo

結婚の条件

協力隊で海外に行く前、結婚するために譲れない条件として、
「料理」をあげられ、家事のなかでもとくにそっち方面が苦手な私は、
「困ったな」と思いつつ、時期的に後戻りも出来ず、承諾した。

が、程なく、彼は必要に迫られれば、台所に立つ、ということを、私は発見する。

まだ住所も決まらぬホテル住まいの頃だった。
イスラム教の休日である金曜日の朝、目を覚ますと
「究極のチャーハンを作るぞ!」と宣言し、自分から進んで始めた。

最初の作品は、油の温度が低すぎたか、炒め物がベタベタしたが、
私は欠点には目をつぶり、ひたすら良い所をほめた。
なるたけ、台所を彼にゆずる方向に持って行きたかったから。

彼の長所は、味覚が発達し、手先が器用で、盛り付けがきれいなこと、
何より興味を持って研究熱心なことである。
今でもテレビの料理番組はよく見るし、とくに「どっちの料理ショーは大好きだ。

なぜあんな条件を持ち出したかと聞くと、
彼は独身時代、大半は寮とか知人の家に居候するとかし、
アパートでもガスさえ引かず、家では水をのむばかりという生活をしていたらしい。
しかしもともと、代々職人の家系なので、食べることにはうるさい。

私は、幼時からキリスト教に親しんでいた母から、「なにを食らい、
なにを着んとて思いわずらうことなかれ」と口癖のように聞かされていた。
そのせいか、わが家の食卓でうまい、まずいということばを聞いたおぼえがない。

これほど生い立ちの違う二人がいっしょに暮せるということも不思議である。
結婚の条件が、必ずしも本人の思うほど絶対的ではないということだ。  

文章教室 自由課題 2005年6月14日作成 6月20日返却

【八木先生評】
夫婦というのは初めに思わなかったようでウマが合ったりするものです。
アテはずれということも多々ありますが。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
« 義母の静かな日々 ポニョ 3回目 »
 
コメント
 
 
 
Unknown (kazukokawamoto)
2008-10-26 13:40:20
私たちの夫婦もまったく違う性格で、私は料理にあまり自信がなくて、どっちといえば、嫌いでありました。主人は上手でした。だから美味しい々といって作ってもらっていました。
 
 
 
Unknown (おキヨ)
2008-10-26 13:48:48
男は、料理を当然のごとくするという女が側に居る限りしない、居なければ上手にこなすものだそうですね。当然の事でしょうが そうだったのか!という思いもしました。たしかに私が10日留守しても夫は元気で生きています。しかも男料理は美味い!長年損したような。。。

私も美味しい不味いはあまり言いません。昔は品の悪いことではなかったですか?今〔おーいーしーいいぃ!!〕という言葉はびこっているのはテレビのせいですかね。



 
 
 
kazukokawamotoさま (Bianca)
2008-10-26 23:16:41
アラ意外!貴女は主婦の鑑で、何でもスイスイとこなしているように見えましたが、まさか家と同じとは。男性とは、おだてれば何でも喜んでやる生物なんですね。家の外からはうかがい知れないだけかぁ~
 
 
 
おキヨ様 (Bianca)
2008-10-26 23:28:08
そうそう、どんな社会でも、男性の集団でも、家事は立場の弱いものがやらされるみたいです。とはいえ、おキヨ様は絵も描かれるので、きっと料理自体がお好きで、お上手なんでしょうね。(この前の牡丹餅なんか、実に美味しそうでした。)
このごろの〔おーいーしーいいぃ!!〕は、味覚の表現力のなさと人間の幼稚さを丸出しにしていて、日本人の恥だと思います。私はグルメ番組大嫌いですが夫は大好き!ヤレヤレです。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。