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バルト海クルーズ

20年余り前、北ヨーロッパを旅行したとき、一晩だけ豪華客船に乗った。
北欧では有名だという船会社シリアラインの、58000トンの船だ。
夕方ヘルシンキの港を出て、国境を越え、翌朝ストックホルムに着く。
免税店、ディスコ、ビュッフェ、温水プール、スパ、カジノなどがあり、まるでホテルのようだ。

ひとり旅の私は、ユーレイルパスのおかげで、乗船する機会を得た。

夜9時過ぎると、早寝する人のために座席は真っ暗になる。
表に出ると、若者たちは酔っ払い、そこここにキスし合うカップルがいて、
ディスコからはにぎやかな音楽が聞こえる。

このお祭ムードにつられて、わたしも免税店に飛び込んでみたり、
カフェテリアで軽いビールとオープンサンドをとったりした。

と、若者が話しかけて来た。金髪でネクタイをし、ちょっといける顔立ちだ。
フィンランド人で21歳だという。しばらく話したあと、真夜中過ぎ、眠りに
行く私に、彼は「よくお休みなさい」とやさしく言った。
軽い失望を感じていたかもしれないが、表情には出ていない。

もっとも、寝ている私の座席のすぐ前の通路の床で、若いカップルが
くんずほぐれつしていて、彼等が寝袋の中で位置を変える度に腕が当たるので、
「よく」は休めなかったのだが。

バルト海はなぜか磯臭さがなく、海面も穏やかだった。
あの貧乏旅行中、ただ一度の豪奢な夜として思い出される。
                
【八木先生評】これはいい体験になりましたね。ユーレイルもなかなか
       気の利いたことをやります。

文章教室 課題「船」 2006年4月18日作成5月17日返還

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21歳のフィンランドの若者との一件は
旅の間に話をできた数少ない例なので忘れられない。

「寝袋の中でくんずほぐれつ」の男女、翌朝目覚めた女の子が私の顔を見るなり「ヘイ!」それから「パラケオール(だったかな?)」と言った。たぶん「オール」とは「時間」だろうと思い、腕時計を見せてやると、クシャクシャに乱れた金髪の頭でそそくさと寝袋から出て行った。ともあれ、目が合えばちゃんと挨拶し、周囲の存在を意識している点、社会性のある若者たちだなあと、好感が残っている。
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コメント
 
 
 
Unknown (おキヨ)
2008-11-17 13:29:42
私が今でも捨てきれない豪華客船での旅20年前になさっていたんですね。お一人で。。。外国語堪能、単独世界旅行、Bianca様はいったいどういう女性?
日本を一歩も出たことのない私にはこの段階ですでにまぶしい存在です。

(私が飛行機も船も怖いといったら絶交でしょうね^_^;)
 
 
 
お薦めします (Bianca)
2008-11-17 22:09:24
おキヨ様、O型と反対にA型は外国の方が生き生き、のびのびするそうです。世界一周豪華客船の旅、是非なさって下さい。好奇心溢れる話好きな旦那様は社交のよき仲介者になるでしょうね。でもおキヨ様なら、一人でも行けそう。きっと大丈夫ですよ。
 
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