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ポワチェの少女

24年前の秋、欧州をひとりで旅した時、ケルンからパリまで、
たまたま同じ車室になったフランスの少女エステルは忘れられない。

ジャンパーと白いスニーカーという服装がさりげなくて気に入った。
「服装に掛けるお金があったら旅行する」という点で意見が一致し
彼女は17歳だが両親が5歳のとき離婚し、子供なんか嫌いで、
同棲しても結婚する気はないというのもわたし好み。

ドイツの刃物で有名なゾーリンゲンの男友達を訪ねての帰りで、
今日からもう高校のテストが始まってるんだけど・・・と笑っている。

外国人と話すのは好きで、この間もレニングラードの旅人と話したが
向うの生活は大変らしい(1984年のこと)と、眉をひそめる。
ボーヴォワールやデュラス、MLF(女性解放運動)も知っていた。

お互いに英語は外国語だから遠慮もなく、飽きることなくしゃべり続けた。
ドイツ土産のチョコレートを「彼の家族が、持って行け行けとうるさくて。
あの人たちとにかく良く食べるのよね」と出し、私もお相伴に預かる。

ポワチエの近くの村に住む彼女はパリが嫌いなようだ。
「地下鉄のスリに気をつけて。パリは街が汚いし、
人種差別主義者が一杯いるよ。私のような地方出身者も差別してる」
と、おめでたそうな日本人の私への注意を残していった。

私のアルバムと住所録には彼女の写真と住所が残っている。
一度彼女の写真を送ったら「渡仏の際には連絡して」という葉書が来たが
外国にはそれっきり行っていない。

今頃どうしているだろうか。伸び伸びとした美しさを持ち、
知的で行動的な彼女、きっとどこかで活躍していることだろう。

「日本の古民家、仏に移設」という今朝の新聞記事の中に出てきた
地名「ポワチエ」が、こんな記憶を呼び覚ました。

→「マーガレットと素敵な何か」2012-4-15
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