映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
〔本〕岸壁の母
2006年11月03日 / 本
著者:端野いせ
1976年 新人物往来社
(図書館より)
作者は明治32年(1899年)生まれで当時75歳。
女学校をようやく卒業しただけで、その後は生活苦のため教養を
積むひまがなかった。その素朴な語り口は時に浪曲調の感傷に陥る
が不思議に魅力がある。
ひとりも証人が登場しない、本人だけのとつとつとした述懐は、
日本文学の私小説の伝統を引き継いでいるようにも見える。
白けるようだが、客観的に見ると、20歳にならぬうちに志願して
満州に渡り、関東軍に入隊した息子は、母親から逃げ出した
ような感じを受ける。
これは昭和50年(1975年)に彼女が得た情報だが、あれほど
母が帰国を待ち焦がれていることを知りながら、息子は中国に
住み着いてしまったようだ。
また、もしほかの人であれば、別の選択をしただろう機会に、彼女は
何回も遭っている。しかし、そのたびに、彼女の持ち前の傾向
が、困難な途を選ばせた。
その傾向が養われた背景には、留守勝ちの父(外国航路の船員)
とそりの合わない継母に挟まれて育ち、しかも一人娘だった
という事情ー彼女は対人関係が苦手だったーがある。
同名の映画の原作「未帰還兵の母」(1974年)は、この本と殆んど
同じ内容だが、表紙が、しわを深く刻んだ彼女の顔の絵(ゴーリキー
の「母」のような)だったのが、こちらの本では波頭きらめく青い
日本海の写真に変わっている。より一般受けすることをねらったのか。
1976年 新人物往来社
(図書館より)
作者は明治32年(1899年)生まれで当時75歳。
女学校をようやく卒業しただけで、その後は生活苦のため教養を
積むひまがなかった。その素朴な語り口は時に浪曲調の感傷に陥る
が不思議に魅力がある。
ひとりも証人が登場しない、本人だけのとつとつとした述懐は、
日本文学の私小説の伝統を引き継いでいるようにも見える。
白けるようだが、客観的に見ると、20歳にならぬうちに志願して
満州に渡り、関東軍に入隊した息子は、母親から逃げ出した
ような感じを受ける。
これは昭和50年(1975年)に彼女が得た情報だが、あれほど
母が帰国を待ち焦がれていることを知りながら、息子は中国に
住み着いてしまったようだ。
また、もしほかの人であれば、別の選択をしただろう機会に、彼女は
何回も遭っている。しかし、そのたびに、彼女の持ち前の傾向
が、困難な途を選ばせた。
その傾向が養われた背景には、留守勝ちの父(外国航路の船員)
とそりの合わない継母に挟まれて育ち、しかも一人娘だった
という事情ー彼女は対人関係が苦手だったーがある。
同名の映画の原作「未帰還兵の母」(1974年)は、この本と殆んど
同じ内容だが、表紙が、しわを深く刻んだ彼女の顔の絵(ゴーリキー
の「母」のような)だったのが、こちらの本では波頭きらめく青い
日本海の写真に変わっている。より一般受けすることをねらったのか。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 〔映画〕父親... | 〔本〕地上 » |
コメント |
コメントはありません。 |
コメントを投稿する |