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藤原正彦「若き数学者のアメリカ」

1986年新潮文庫(初出1977年)

藤原正彦(1943~)の20代末のアメリカ滞在記で、日本エッセイスト・クラブ賞を受けている。両親ゆずりの文章の才と純粋な人柄、その奇矯なまでに直情的な行動は小説よりも面白い。あとがきで詩人の吉増剛造も感嘆している。

1.彼は女性とデートというものをしたくて、蹴球の券を二枚買い、会う女性ごと、手当たり次第に声をかけたが、十数人に当ってもついに成功しない。一度は同じ女性にまた声を掛けて笑われた。

2.彼はコロラド大学の1500人のストリーキング(一糸まとわず戸外を駆け抜ける遊び)を見学した日、家に帰ってからも興奮がさめず一人だけで冬の街路に全裸で駆け出した。

3.彼は夕食後に遊園地でブランコに乗るのが習慣になっていた。ある時、遊んでいた子ども(5歳)に「邪魔だ」と絡まれてから、逆にその子とすっかり仲良くなり、その付近のほぼ全員の子どもと仲良くなった。もともと、母親(藤原てい)からは、彼の子ども好きは精神年齢が近いせいだろうと言われていた。

4.彼はある女性から「デミアン」つまりヘッセの小説に出て来る人物の名で呼ばれて以来、本名は発音がむつかしいので、これを通称にした。それで「デミアン、遊ぼうよ!」と子どもたちは寄って来るし、やがて大人からも「デミアン、元気?」などと声を掛けられるようになった。

この天真爛漫な若き数学者が後に「国家の品格」を書くようになるとは。
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コメント
 
 
 
Unknown (kazukokawamoto)
2011-04-02 14:14:51
藤原正彦家の家族、大ファンです。父親「新田次郎、母親藤原てい、最近は妹の藤原咲子」この咲子氏の、父への恋文を読み終わった。てい氏の流れる星も、兄の品格も愛読しました。興味のある、それぞれの人生の歩みが描きだされています。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2011-04-03 05:37:48
kazukokawamotoさま
コメント有難うございます。今「国家の品格」再読中です。新田次郎の「孤高の人」山岳小説は読みましたが「流れる星~」は未読。しかし咲子さんは初めて知りました。「父への恋文」面白そうですね。
 
 
 
Unknown (桃すけ)
2011-04-04 16:49:26
国家の品格、私も読みました。弱いものいじめは卑怯だ、というのは母の口癖でした。私は経理ウーマンでしたが、経営は国語だとか、情緒で考え、それを数字に直す、とかしょうもないことを言って、私も会議で浮いていました。でも、その考え方は今も正しいと思っています。小川洋子との対談、「世にも美しい数学入門」も、おもしろかったです。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2011-04-05 05:51:21
桃すけ様
コメント有難うございます。へえー、会議で浮くぐらい、彼の説に心酔していたのですね。魅力がある人ですものね。小川洋子といえば「博士の愛した数式」を思い出しますが、2001年のNHKTVのテキスト、あとで本にもなった「天才の栄光と孤独」が良かったですよ。「国家の品格」は「品格」ブームを巻き起こしましたが、私はやはり30代の頃の文の方が好きですね。
 
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