映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
【本】ニュースキャスター
2008年04月14日 / 本
副題 エド・マローが報道した現代史
著者 田草川(たさがわ)弘 中公新書 1991年
Edward R. Murrow(1908~1965)
先日、たまたま、エド・マローとマッカーシーを特集したCBSの番組「sixty minites」(2005)を見た。
本人の姿と声に触れて思うのは、映画「グッドナイト&グッドラック」のデヴィッド・ストラザーンのような秀麗な2枚目というより、ニクソンが面ヤツレたような外見だが、声や話し方はラジオ出身だけあり素晴しく(これが逆だったらコトだ)、番組の終りの挨拶「Good Night and Good Luck」の発音は短くキリッとしていて、想像以上の魅力だった。この声でこんな風に「それでは御機嫌よう」と言われたら、「えっ、もうおしまい?ちょっと待って!」と追っかけたくなりそうだ。
また一方、彼ともあろう人がと言われた娯楽番組 「Person to Person」でも意外に好演。有名人や映画スター宅の訪問だが、質問は口数少なく要を得ており、デリカシーが感じられる。かれの生い立ちは貧しいが、ロンドン時代に上流階級との交際で身につけた部分ででもあるのか。洗練された紳士の話し方とはこれかと思わせる。同様に時代の刻印を帯びているのが、煙草・酒の濫用(それが56歳という早死の原因だったかも知れない)とズボン吊りスタイルだ。
彼の話しぶりに魅力があるのは、多分その経歴のせいでもある。ナチスドイツの進攻直後のウィーンや、ドイツ空爆下のロンドン、解放直後のブッヘンワルト収容所からの中継、24回にわたる英国空軍機への命知らずの同乗など、戦時の取材活動はいずれも感動的で生々しいが、
何よりも1950年代のアメリカでマッカーシーの赤狩、つまり共産色撲滅運動に誰もが怯えきっていた時、人気番組「SEE it Now」で敢然とマッカーシー批判を展開し、世論の潮流を変えたことが、米国民の高く評価するところだと思う。
しかし、エド・マローの時代はやがて去り、米国のTVは報道から娯楽の時代に移り行く。視聴率と言う魔物のせいだ。去り際に彼の呈した苦言は実に感動的で、今の時代のTVにもいっそうよくあてはまる。
翻って今の日本に「ニュースキャスター」と呼べる人がいるのかどうか。TBSのニュース番組における久米宏とか古館伊知郎も格好だけ。みのもんたはその地位に憧れていたそうだが、しょせん無理だろう。北朝鮮国営放送のアナウンサーの口調は日本では冗談の種になっているが、日本のアナウンサーだってそれをどれ位上回っているか。その原因は視聴者のレベルにあるのではないだろうか。
映画のパンフを2年ぶりに見直しているうち、参考文献を読みたくなり、この本を図書館から借りてきた。ところが、前に一度借りていたのだ。読んでいる内にならまだしも、大分経ってふと読書メモを見て初めて気づいたのだから、ガックリ来る。当時の日記には「エド・マロー論ニュースキャスターを読んで3AMになる」とあるから、そのときは夢中になったのだろうに。記憶力の無さを反省もせず、言い訳を。
学者が著した新書版なので、彼の生い立ちから生涯の軌跡の隅々まで行き届いてはいるが、映画を上回る感動は得られなかったのだろう。感情が動かなかったため、記憶に残らなかった。映画やTVを見た後で、もっと知りたい部分を補完するだけの読書になった。結局今回も似たようなことになった。次のような事実を知りえたのは同書のお陰だが。
エド・マロー は
★「20世紀で最も重要な100人のアメリカ人」(1991年ライフ誌)に、そして
★「米国の歴史を変えた50人」(1987年エスクワイア誌創刊50周年記念号)にも選ばれている。
著者 田草川(たさがわ)弘 中公新書 1991年
Edward R. Murrow(1908~1965)
先日、たまたま、エド・マローとマッカーシーを特集したCBSの番組「sixty minites」(2005)を見た。
本人の姿と声に触れて思うのは、映画「グッドナイト&グッドラック」のデヴィッド・ストラザーンのような秀麗な2枚目というより、ニクソンが面ヤツレたような外見だが、声や話し方はラジオ出身だけあり素晴しく(これが逆だったらコトだ)、番組の終りの挨拶「Good Night and Good Luck」の発音は短くキリッとしていて、想像以上の魅力だった。この声でこんな風に「それでは御機嫌よう」と言われたら、「えっ、もうおしまい?ちょっと待って!」と追っかけたくなりそうだ。
また一方、彼ともあろう人がと言われた娯楽番組 「Person to Person」でも意外に好演。有名人や映画スター宅の訪問だが、質問は口数少なく要を得ており、デリカシーが感じられる。かれの生い立ちは貧しいが、ロンドン時代に上流階級との交際で身につけた部分ででもあるのか。洗練された紳士の話し方とはこれかと思わせる。同様に時代の刻印を帯びているのが、煙草・酒の濫用(それが56歳という早死の原因だったかも知れない)とズボン吊りスタイルだ。
彼の話しぶりに魅力があるのは、多分その経歴のせいでもある。ナチスドイツの進攻直後のウィーンや、ドイツ空爆下のロンドン、解放直後のブッヘンワルト収容所からの中継、24回にわたる英国空軍機への命知らずの同乗など、戦時の取材活動はいずれも感動的で生々しいが、
何よりも1950年代のアメリカでマッカーシーの赤狩、つまり共産色撲滅運動に誰もが怯えきっていた時、人気番組「SEE it Now」で敢然とマッカーシー批判を展開し、世論の潮流を変えたことが、米国民の高く評価するところだと思う。
しかし、エド・マローの時代はやがて去り、米国のTVは報道から娯楽の時代に移り行く。視聴率と言う魔物のせいだ。去り際に彼の呈した苦言は実に感動的で、今の時代のTVにもいっそうよくあてはまる。
翻って今の日本に「ニュースキャスター」と呼べる人がいるのかどうか。TBSのニュース番組における久米宏とか古館伊知郎も格好だけ。みのもんたはその地位に憧れていたそうだが、しょせん無理だろう。北朝鮮国営放送のアナウンサーの口調は日本では冗談の種になっているが、日本のアナウンサーだってそれをどれ位上回っているか。その原因は視聴者のレベルにあるのではないだろうか。
映画のパンフを2年ぶりに見直しているうち、参考文献を読みたくなり、この本を図書館から借りてきた。ところが、前に一度借りていたのだ。読んでいる内にならまだしも、大分経ってふと読書メモを見て初めて気づいたのだから、ガックリ来る。当時の日記には「エド・マロー論ニュースキャスターを読んで3AMになる」とあるから、そのときは夢中になったのだろうに。記憶力の無さを反省もせず、言い訳を。
学者が著した新書版なので、彼の生い立ちから生涯の軌跡の隅々まで行き届いてはいるが、映画を上回る感動は得られなかったのだろう。感情が動かなかったため、記憶に残らなかった。映画やTVを見た後で、もっと知りたい部分を補完するだけの読書になった。結局今回も似たようなことになった。次のような事実を知りえたのは同書のお陰だが。
エド・マロー は
★「20世紀で最も重要な100人のアメリカ人」(1991年ライフ誌)に、そして
★「米国の歴史を変えた50人」(1987年エスクワイア誌創刊50周年記念号)にも選ばれている。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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Biancaさんがご覧になったのはCS放送でしょうか。私はここ数年、ニュース番組はおろかテレビ番組そのものをほとんど見ていないので、ニュースキャスター諸氏の立ち振る舞いもよく分からないのですが、まあ視聴率至上主義というのはどこの国でも見られる現象なのでしょうか。最近では「山口県光市の母子殺害事件」についてかなり感情的な報道が行われている、というBPO(放送倫理・番組向上機構)のコメントが印象に残っています。
ちょっと話が逸れますが、この映画を見た前後に読んだ『ネット社会の未来像』(春秋社)の中では、イギリスBBCのプロデューサーの「たとえ国民のうち500人しか理解できない内容であっても、そういうものを述べ伝える公共性もある」という発言が紹介されていて興味深かったです。
映画鑑賞後、ネットで検索などしてエド・マローがすばらしいキャスターだった(らしい)ということを知りました
こちらんでご紹介されている本も機会があったら読んでみたいです