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日本人の鼻


文章教室 (2007年2月21日) 課題「香水」  

 香水の産地として世界的に名高いフランスには、「ル・ネ(鼻)」という称号をもつ調香師がいるとのことである。かれらは嗅覚に優れていて、ふつうの人が八種類くらいの匂いしかかぎ分けられないのに対して、訓練の結果、二千種類もかぎ分けらる人がいるそうだ。わたしは幼いときからアレルギー性鼻炎で、嗅覚が劣っているので、たぶん、ふつうの半分の、四種類くらいしか嗅ぎ分けられないと思う。
 それで思い出すことだが、ある日、アパートの隣人が「月下美人が咲いたからいらっしゃい」と呼んでくれた。私が、花に鼻を近づけて「うーん、においがしていますね」というと、呆れて、次から二度と呼んでくれなくなった。月下美人の匂いは、部屋いっぱいにむせるようにたちこめるものらしい。
 香水というテーマから遠ざかってしまった。体臭を消すのが目的で開発され
た香水は、もともと清潔好きで匂いの少ない日本人には必要の無いものだった。いつの間に、これほど流行ったのだろう。食生活の欧米化とともに、体臭が強くなったのか、それとも、ひとつの外来文化として取り入れて楽しんでいるのか。
 そういえば、ル・ネ(鼻)は、嗅覚の鋭敏さをたもつため、煮たり焼いたりしない、生の食べ物をとるようにしていると言っていた。生ものが好きで、香道の伝統のある日本人は、もともと嗅覚に優れた民族であるかもしれない。香水は、単なる異国趣味だとしても。
       07年2月5日作成7日提出21日返却    

【八木先生評】香水がこれだけ普及するようになったのは、やはり戦後のことでしょう。でも、日本はそれなりの香りを楽しむ伝統はありました。

「わすれなぐさ」の香水から、この作文を思い出した。
課題の「香水」をそのまま使っている人が20人の半分くらいいたが、みやびとは縁の遠い私は、考えた末にこういう文になった。八木先生は奥様のすすめとかで日頃香水を使っておられるようで、返って来た作文にその匂いが残っているときいたことがある。

→「わすれなぐさ」21-6-8
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