「悟浄歎異(中島敦)」より終結部
三蔵法師について天竺を目指す
沙悟浄の手記
冒頭の「孫行者(そんぎょうじゃ)」とは
孫悟空のこと。
沙悟浄は三蔵法師のことを
「師父(しふ)」と尊敬する。
俺(沙悟浄)が思うに
孫悟空は行動的大天才であり、
猪八戒は享楽的リアリストである。
それに引き換え俺は、
頭で考えるばかりで行動に移せない。
自分は常に調節者、忠告者、観測者に
過ぎないのか。
悟空からまだ何も学べていない。
「悟浄歎異(中島敦)」より
夜、星を見上げて野宿しながら、
悟浄は悟空、八戒、師父三蔵法師について
あれこれと思いを巡らす。
特に三蔵法師についての深く美しい洞察が、
胸をほのかに温かくする。
中島敦(1909年~1942年)は
東京生まれの小説家。
漢学の家系に生まれ、
東京帝国大学国文科卒業。
持病の喘息により、
才能を惜しまれながらも死去。
代表作は「山月記」「弟子」「光と風と夢」など。
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動画を公開していなかったので
公開して再投稿します。
蠅 横光利一
宿場の饅頭屋のそばにとまっている
一台の乗り合いトテ馬車。
乗客が次々と集まっているのに、
なぜかなかなか出ようとしない。
ずいぶんと経ってから
やっと動き出したその馬車には、
猫背の馭者と六人の乗客、
そして一匹の眼の大きな蠅が乗っていた。
夏の炎天下、
様々な人生を背負った人々を乗せ
馬車は畑や森を次々と抜けていく。
かの眼の大きな蠅は
車体の屋根の上にその身を休ませ、
馬車と共に揺れて行く。
そして馬車の行く手には
運命の道が待っていた・・・
高校の国語の教科書で
初めてこの小説に出会い、
深く印象に残った。
同じ作者の他の作品も読んでみたが、
残念ながら
あまりピンとこなかった記憶がある。
蠅(横光利一)
横光利一(1898年~1947年)
福島出身の小説家。
菊池寛に師事。
川端康成、片岡鉄平らと
「文藝時代」を創刊し
新感覚派の中心として活躍。
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形 (菊池寛)
侍大将の中村新兵衛は、
武勇で知られた士であった。
長さが三間もある大槍を持ち、
猩々緋(しょうじょうひ)の服折(はおり)と
唐冠(とうかん)の兜とを身に着け、
戦場では『槍中村』として
向かうところ敵なしであった。
そんな新兵衛はある日、
初陣に臨む主君の子に頼まれて
服折と兜とを貸す。
そして新兵衛は、いつもと違う装束で
敵陣に突っ込んでいくのだが・・・
形(菊池寛)
猩々緋 = 鮮やかな深紅色
服折 = 鎧の上に着る陣羽織
唐冠 = 唐の冠を模した兜
縅(おどし)の裏をかいて
= 鎧の胴の裏まで突き通って
菊池寛(1888年~1948年)は、
香川県松山市生まれの
小説家、劇作家、出版社の経営者。
文芸家協会を設立し、
芥川賞、直木賞の設立者でもある。
著作は「父帰る」「恩讐の彼方に」「真珠夫人」
など多数。
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