余命宣告② 房総の山寺
わたしはもうすぐ72歳になります。
これまでもう充分に生きて来ました。
自ら死のうと思ったことはないけれど、
人生百年?
うわ、それは勘弁して、
というのが正直なところです。
十年くらい前、房総の山寺に
自分用の樹木葬用地を買いました。
海に囲まれた千葉県にすんでいても、
海は潮風がべたついていやだから
土に戻りたいの。
樹々や草を渡る風の音や小鳥の声が好きで、
飽きることがありません。
春には命が芽生え、
夏は雲の峰が湧き、
秋は木の実や紅葉が照り映え、
冬は寒さに身を固くし、
春にまた命の季節が巡って来る。
そしてそうこうするうちに
私は完全に土に戻っている。
冷たい墓石の下よりも
ずっといいと思ってのことです。
余命宣告③に続く
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