マリの朗読と作詞作曲

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待つ(太宰治)

2022年01月28日 | 小説の朗読

 

 

太宰治の短編小説「待つ」は、

省線のその小さい駅に、私は毎日、

人をお迎えにまいります。」

という一節で始まる。

省線とは、省線電車のこと

 

わたしは小学校に上がる前、親に連れられて

荻窪駅でこの省線に乗り降りした記憶がある。

チョコレート色の

鈍重な感じのする車両であった。

太宰は20代の終わり頃、荻窪に住んでいた。

彼の死の二年後に荻窪で生まれたわたしは、

案外、彼がなじんだのと同じような風景を

見ていたのかもしれない。

わたしが小さい頃の荻窪駅は、

古い木造の建物だった。

改札係は木製の低い柵に囲まれた中に立ち、

切符切りバサミをカチカチと鳴らしていた。

 

 

荻窪駅前から続いている

薄暗く狭い通路の両側には市場があった。

漬物や鮮魚などの猥雑なにおいに満ちており、    

夕方になると買い物かごを下げた主婦で

ごった返していた。

今の大きな駅ビルなどウソのような

昔々のことである。

 

太宰は、自分が住んだことのある

荻窪や三鷹周辺をイメージして

この「待つ」を書いたような気もする。

 

待つ(太宰治)

 

 

太宰治(1909~1948年)は、

青森県津軽出身の小説家で、

「晩年」「人間失格」「斜陽」

「走れメロス」「富岳百景」

などの著作がある。

 

ダメ人間だった太宰だが、

その著作では

ヒトの心情を見事にすくい上げ、

語り口のうまさと相まって

人気の高い作家である。

 



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