フランシス・ノーラン嬢は前日の11時にココアを飲んで意識を失ったのだそうだ。さらに話を聞いてみよう。
「ガイ・クラレンドンとはいつからのお知り合いですか?」
「はじめて会ったのは、コーネリウス・オールドワイン氏の別荘でのことです。3月のことです。なにかのパーティの席で、妹は高さ6、7メートルもある噴水に登ってそこから池に飛びこんだらしいのです。そのため妹は肺炎にかかり、わたしは妹を連れ帰るためにその別荘まで出かけるはめになりました。ガイはその別荘にいたのです」
「そのときクラレンドンさんは、すぐにそのう、あなたにいい寄って...」
「いいえ。それどころかわたしには目もくれませんでした。ですから数週間たって彼が突然、わたしの家にやってきたときには、本当にびっくりしました。5月10日のことです。いまも忘れません、すばらしい午後でした。ガイは約束もせずに訪問したことの不作法を詫びてから、また来てもよいかとたずねたのです。それがきっかけとなって、わたしたちはちょくちょく会うようになりました。馬車で遠出をしたり、ピクニックに行ったり、楽しい日々でした。そしてガイはわたしを愛しているといい、結婚を申しこまれました。それなのに、どうしてわたしがガイを殺すなんて...」