財産目当てにフランシス・ノーランに近付いたクランレンドン氏は、何らかの金銭トラブルに巻き込まれていたのかもしれない。さらに話を聞いてみよう。
「では、ハリデイ特約ホテルに行ったことはどう説明します?」
「それは...まったくわかりません。前の2回のときと同じなんです」
「以前にも記憶をなくされたことがあるんですか?」
「ええ。このひと月のあいだに2回ありました。はじめて記憶を失ったときは、気がつくとハイド・パークのベンチに坐っていました。妹と昼食をとって いたことは覚えているのですが、そのあとのことはまったく覚えておらず、いつのまにか夕方になっていました。2度目はその2、3日後でした。その日の朝、わたしは弁護士のハイアラム・ ダヴェンポートに会いました。つぎに気がついたときにはリバプール街駅にいました。わたしは不安にかられ、かかりつけの医者に相談しました。メイスン先生です。しかし先生は原因がどうしてもわからないといって首をかしげておられました。よく休むようにとだけおっしゃいました」
「ピストルは、どこで手に入れたのですか?」
「警察はわたしのものにまちがいないというのですが、あんなピストルは見たこともありません」
「最後にもうひとつ。ジェラルド・ロックとはどんな関係ですか?」
「ジェリーは古くからのよいお友だちです。最近ちょっと仲たがいしているのが、とても残念です。 ジェリーがガイについてとても失礼なことをいったものですから」