人村です!

舞台と結婚したと公言する「人村朱美」が綴る舞台生活 毎週火曜日更新・・・したいなぁ

ドラマシティ

2007年09月18日 | 舞台
 『熊谷ホテル物語』の各種打ち合わせ等、様々用事を詰め込んで、星ムクドリと二人、大阪ドラマシティへ観劇に行ってきた 
 ニューヨーク9,11テロの取材から生まれた、朗読劇『The Guys (ザ・ガイズ)』―消防士たち―だ。演者は、大好きな津嘉山正種(つかやま まさたね)と三田和代の二人だけ。予想を裏切らない演技で1時間40分を聞かせた。『熊谷ホテル物語』の照明をやって下さる、日高勝彦氏デザインのシンプルな照明も良かった。しかし物足りなさも残った。

 朗読は、奥深く年期のいる難しいジャンルにも関わらず、舞台で見るには地味である。動きがほとんどなく刺激が少ないからだ。ひたすら聴き入り、演者の放つ気を受け止める。その時の聞き手の集中力と価値観が問われる、ともいえる。だがその分、聴き手のイメージを無限に膨らませる事も出来るのだ。いずれにせよベストコンディションで臨まないと駄目だろう。

 その日私は、初めてお会いする方々との打ち合わせや、慣れない大阪での移動に疲れていた 追い討ちをかけるように残暑も厳しい で、つい始めのほうはウトウトと・・・ いや待て、7千円だぞチケット代はと、身を引き締めて姿勢を正す事数度。我ながら情けない。何たって席は最前列のど真ん中 演者の目には角度的に入りにくい席とはいえ、大先輩の名演に対して居眠りは失礼だ
 しかし、何だか最後まで入りきれないまま舞台は終わった。その理由はもう一つあった。

 9,11を語るものを見聞きする時、どうしても心に毒が回る感じがするのは私だけではあるまい。命の重さは同じと分かってはいても、アメリカが過去、日本で、南米で、ベトナムで、そして中東で今なお繰り返している何十万に及ぶ殺戮は、と問いたくなるのだ。肌に感じない国外での殺戮への痛みは感じないのか。どんな大義名分があっても、人間が人間を殺すならテロと変わりはない。現地の人々には日々が地獄だ。その世界一の殺人大国が、自国で起きたこの事件を錦の御旗にしているような錯覚を覚えるのだ。作者の、命への温かなまなざしに、真っ直ぐには共感出来ない。そんな自分の幼い正義感に、後ろめたいような面映(おもはゆ)さを感じて、何だか毒を飲んだような後味が残った。

 もっと質素な会場で聞いたなら、豊かな公演になったかも知れない。日本の商業ベース公演では望めない事かも知れないが、ニューヨークでの上演場所が、世界的大スター二人(シガニー・ウィーバーとビル・マーレイ)を使いながら、たった75席の小劇場だった事が、作者・演出家・出演者・制作者の意図を明確に現している。日本での上演にも、そんな心意気を感じられたなら、とふと思った。
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1 コメント

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ほんと,ホント・・・ (cheese)
2007-09-18 18:41:05
本当にそうですよね・・・。つらさが2倍3倍になります・・・。考え始めると何かベターっとしたものにからめ取られそうな感じ・・・。
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