■ラスト場面の変更
四人 「あけてびっくり玉手箱、
ハハの情念 ここに極まれり
千年恨みも消えうせた
廻る廻る 輪廻は廻る
輪廻転生 かぐや 復活!」
BGM「スノードロップ」
舞台、徐々に明るくなる。
母、倒れている。かぐや、瓜子姫が重なっている。
その背後に医者。・・・病室。
医者「もうそろそろです。
次の入院患者が待ちくたびれています。
これで終わりにしましょうか。」
おと姫「先生、あなたこそ終わりにしましょう。
無念だったでしょう。知覧から飛び立って死ねなかったあなたは。
神風にもなれなかったあなたは無様でした。」
医者「え、君は何を言っているのだね。」
おと姫「ここは野戦病院ではありません。」
桃太郎「ここは大日本帝国の南の果てでもありません。」
医者「すると・・・!」
おと姫と桃太郎は気が狂ったように笑い始める。医者は鳥居の中へ連れ去られる。
起き上がる、母、かぐや、うりこ姫。⇒「月に吠える」を入れる。
「地面の底に顔があらはれ、さみしい病人に顔があらはれ。 地面の底のくらやみに、 うらうら草の茎が生えそめ、 鼠の巣が萌えそめ、巣にこんがらかつてゐる、かずしれぬ髪の毛がふるえ出し、 冬至のころの、さびしい病気の地面から、ほそい青竹の根が生えそめ、生えそめ、 それがじつにあはれふかくみえ、けぶれるごとくに視え、 じつに、じつに、あはれふかげに視え。 地面の底のくらやみに、さみしい病人の顔があらはれ・・・」
かぐや「過ぎた日々、あれから千年。 夢に見た 景色の向こうから。
誰かが今、わたしの名前を呼んでいる。」
母「かぐや。」
うりこ姫「心に嵐が吹き荒れていた。いつも爆弾を抱えていた。・・・私を呼ぶのは誰?」
母「そのむなしさに慣れていた。いつも過去にうなされながら 後悔が一歩先を歩いてい
た。」
かぐや「夢に見た景色の向こうから、だれかが今、わたしの名前を呼んでいる。
母「かぐや。」
うりこ姫「誰?あの人の名前を呼ぶのは?」
母「お前だ。お前たちが呼んでいたのだ。」
うりこ姫「夢に見た景色の向こうでは、あなたはかぐやの母であった筈だった。
あなたは一体、何者。」
母「さぁて。私は何者でしょう。さぁて、今日は何の日。」
BGM「スノードロップ」
うりこ姫「もうそろそろでございます。
月の都へ戻る時がやってまいりました。
……(月を見上げて)いよいよです!」
四人 「月が満ちて来ます!」
かぐや、泣いている。
うりこ姫、かぐやに近づく。手には天の羽衣。
箱女、よろよろと立ち上がる。
母 「わたしは空っぽになってしまった。
かぐや、今度はお母ちゃんが月へ帰る番だよ。
さあ、その羽衣を受け取るのです。
わたしのことを忘れておしまい!」
かぐや 「おかあさん、なんて美しい十五夜でしょう。
何もかもが美しい。
あの時のままです。
これで私とあなたの旅は終わったのですね?
空っぽになってしまったおかあさん、
祈りさえ届かない、遙か彼方の遠い世界に行ってしまうの
ですね。
お別れです、おかあさん!
やっと会えたのに、お別れです。
私の誕生日に、あなたは行ってしまうのですね。
あなたを忘れてしまうまで、
私は声を限りにあなたを呼び続けます。
おかあさん、おかあさん、おかあさん、おかあさん!」
うりこ姫、羽衣をかぐやの肩にかける。
その瞬間、母を呼び続けていたかぐやの体がストップする。
母 「(叫ぶ)かぐや!
さあ、私を箱に戻しておくれ!
次に生まれ変わるまで、この箱の中でじっと時を待つ。
さあ、空っぽの私を箱に戻しておくれ。
再びかぐやがやってくるその日まで、
月の都の番人に、箱を預けておくれでないか」
音楽
母、骨箱に戻っていく。
四人 「あけてびっくり玉手箱、
ハハの情念 ここに極まれり
千年恨みも消えうせた
廻る廻る 輪廻は廻る
輪廻転生 かぐや 復活!」
BGM「スノードロップ」
舞台、徐々に明るくなる。
母、倒れている。かぐや、瓜子姫が重なっている。
その背後に医者。・・・病室。
医者「もうそろそろです。
次の入院患者が待ちくたびれています。
これで終わりにしましょうか。」
おと姫「先生、あなたこそ終わりにしましょう。
無念だったでしょう。知覧から飛び立って死ねなかったあなたは。
神風にもなれなかったあなたは無様でした。」
医者「え、君は何を言っているのだね。」
おと姫「ここは野戦病院ではありません。」
桃太郎「ここは大日本帝国の南の果てでもありません。」
医者「すると・・・!」
おと姫と桃太郎は気が狂ったように笑い始める。医者は鳥居の中へ連れ去られる。
起き上がる、母、かぐや、うりこ姫。⇒「月に吠える」を入れる。
「地面の底に顔があらはれ、さみしい病人に顔があらはれ。 地面の底のくらやみに、 うらうら草の茎が生えそめ、 鼠の巣が萌えそめ、巣にこんがらかつてゐる、かずしれぬ髪の毛がふるえ出し、 冬至のころの、さびしい病気の地面から、ほそい青竹の根が生えそめ、生えそめ、 それがじつにあはれふかくみえ、けぶれるごとくに視え、 じつに、じつに、あはれふかげに視え。 地面の底のくらやみに、さみしい病人の顔があらはれ・・・」
かぐや「過ぎた日々、あれから千年。 夢に見た 景色の向こうから。
誰かが今、わたしの名前を呼んでいる。」
母「かぐや。」
うりこ姫「心に嵐が吹き荒れていた。いつも爆弾を抱えていた。・・・私を呼ぶのは誰?」
母「そのむなしさに慣れていた。いつも過去にうなされながら 後悔が一歩先を歩いてい
た。」
かぐや「夢に見た景色の向こうから、だれかが今、わたしの名前を呼んでいる。
母「かぐや。」
うりこ姫「誰?あの人の名前を呼ぶのは?」
母「お前だ。お前たちが呼んでいたのだ。」
うりこ姫「夢に見た景色の向こうでは、あなたはかぐやの母であった筈だった。
あなたは一体、何者。」
母「さぁて。私は何者でしょう。さぁて、今日は何の日。」
BGM「スノードロップ」
うりこ姫「もうそろそろでございます。
月の都へ戻る時がやってまいりました。
……(月を見上げて)いよいよです!」
四人 「月が満ちて来ます!」
かぐや、泣いている。
うりこ姫、かぐやに近づく。手には天の羽衣。
箱女、よろよろと立ち上がる。
母 「わたしは空っぽになってしまった。
かぐや、今度はお母ちゃんが月へ帰る番だよ。
さあ、その羽衣を受け取るのです。
わたしのことを忘れておしまい!」
かぐや 「おかあさん、なんて美しい十五夜でしょう。
何もかもが美しい。
あの時のままです。
これで私とあなたの旅は終わったのですね?
空っぽになってしまったおかあさん、
祈りさえ届かない、遙か彼方の遠い世界に行ってしまうの
ですね。
お別れです、おかあさん!
やっと会えたのに、お別れです。
私の誕生日に、あなたは行ってしまうのですね。
あなたを忘れてしまうまで、
私は声を限りにあなたを呼び続けます。
おかあさん、おかあさん、おかあさん、おかあさん!」
うりこ姫、羽衣をかぐやの肩にかける。
その瞬間、母を呼び続けていたかぐやの体がストップする。
母 「(叫ぶ)かぐや!
さあ、私を箱に戻しておくれ!
次に生まれ変わるまで、この箱の中でじっと時を待つ。
さあ、空っぽの私を箱に戻しておくれ。
再びかぐやがやってくるその日まで、
月の都の番人に、箱を預けておくれでないか」
音楽
母、骨箱に戻っていく。