タケ・タケ・エヴリバディ!

当ブログは「竹と生きる・竹を生かす」をメインテーマに、管理人の田舎暮らしの様子をお届けします。

石を黙らせて

2022年04月15日 | 読みました!見ました!

李龍徳(イ・ヨンドク)の小説、「石を黙らせて」(講談社)を読了しました。この作者の小説を読むのは初めてです。なかなか難解な小説でしたが、心に残るものがありました。

この小説「石を黙らせて」は、主人公「私」が婚約者にある過去を告白する場面から始まります。彼は17歳の時、親友を含む仲間4人で女性を強姦した過去を持っています。忘れていた、忘れたい罪を彼は婚約者に打ち明けます。その事実を知り、婚約者は彼の前から去って行き、彼は彼女と同じだった職場を去ります。この小説は「私」が罪とどう向き合うかの物語です。

「私」はネットで自らの罪を公表し、いつか被害者女性と会ってどんな罰でも受け入れると、共に罪を犯した友人に伝えます。さらに家族(両親と姉)にもそのことを告白して責められ、さらに性被害の経験のある元同僚女性や、事件の主犯格だった現県会議員とも対峙します。

物語はドキドキ感を抱きながら読み進めることができたし、それなりに考えさせられることも多かったのですが、何か読みながら違和感を感じたのも事実です。なぜなら、なぜ主人公の「私」が順風満帆な人生を捨ててまで罪を告白しようとしたのかの過程や葛藤が描かれておらず、「私」は他人と対話しながらも彼らと心を交えていません。自らの独りよがりな意志を、自分勝手に独白しているにすぎないように感じたからです。相手の意見も聞く顔をしているだけで、まったくの独りよがりに思えるのです。

きっと作者は、この違和感を読者に与えることを計算しているののでしょうね。まぁ読んでいて、決して楽しい小説ではありませんでしたけど、「あらかじめ許されることを期待してする謝罪に何の意味があるのでしょうか?」というフレーズは、ボクの心にズッシリと残りました。

まぁ、たまにはこんな小説もいいですね。たまには…ですけど。

コメント
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