タケ・タケ・エヴリバディ!

当ブログは「竹と生きる・竹を生かす」をメインテーマに、管理人の田舎暮らしの様子をお届けします。

桶川ストーカー殺人事件~遺言

2024年07月08日 | 読みました!見ました!

新潮文庫の「桶川ストーカー殺人事件~遺言」を読了しました。著者はジャーナリストの清水潔氏。この事件を、写真週刊誌「FOCUS」の記者として追い続けたジャーナリストです。

本書は、桶川ストーカー殺人事件の真相と、警察の不祥事を克明に描いたノンフィクション作品です。 著者の執念の取材により、警察の隠蔽体質や杜撰(ずさん)な対応が浮き彫りになり、被害者の無念さがひしひしと伝わってきます。単なる事件の記録ではなく、社会に警鐘を鳴らすジャーナリズムの力を感じさせる作品です。ボク自身が40代の頃に起きたこの事件。当時の報道を思い出しながら(忘れていたことがほとんどでしたが)、本書を読み進めました。

桶川ストーカー殺人事件は、埼玉県桶川市で、元交際相手の男性らからストーカー行為を受けていた大学2年の猪野詩織さん(当時21歳)が、男性の仲間に殺された事件です。警察の対応が問題視されるとともに、この事件によって、ストーカー犯罪の法整備が進むきっかけとなりました。遺族は今も、再発防止を訴えて講演活動などを続けているそうです。

1999年10月26日、埼玉県桶川市のJR桶川駅前で、大学2年の猪野詩織さん(当時21歳)が刃物で刺殺されました。猪野さんは元交際相手の男性(以後Aと表記)やAの兄らからストーカー被害を受けており、99年12月、兄ら4人が殺人などの容疑で逮捕されました。Aは指名手配後に北海道で自殺しているのが見つかりました。

猪野さんは最寄りの県警上尾署にストーカー被害を相談していましたが、署員らが告訴をなかったことにするため調書を改ざんしていたことなどが発覚。関与した元署員3人が懲戒免職処分を受ける不祥事に発展しました。元署員3人は虚偽有印公文書作成罪などで起訴され、いずれも有罪となっています。

事件を受けて2000年5月にストーカー規制法が成立し対策は進みましたが、警察の怠慢に対する遺族の怒りや憤りは決して払拭されることはないでしょう。

本書を読み終わった今、やりきれない気持ちと憤りで胸が苦しいほどです。詩織さんはどれほど怖かっただろう。一番の悪は犯人グループですが、埼玉県上尾署が警察として当然の対応をしていれば、詩織さんが命を奪われることは無かったのでは…と思います。本書の中にあった「警察官も普通の人達、みんなサラリーマンなんだぜ」この言葉、とても不愉快に感じました。確かにそうかもしれませんが、それを言ってはいけないと思います。そんな考えで就いていい職業ではありません。プロとしての職業のあり方も大いに考えさせられました。

この事件を機に「ストーカー規制法」が制定され、現在に至っています。この事件のことは日本人として決して忘れてはいけません。多くの人が読むべき本だと思いました。

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医師 中村哲の仕事・働くということ

2024年07月01日 | 読みました!見ました!

柏崎市産業文化会館で開催された、映画「医師 中村哲の仕事・働くということ」の上映会に行ってきました。

中村哲さんの生き方についてはこれまでにも断片的な知識はあったのですが、今回映画を見てあらためてその凄さに感銘を受けました。まずは中村哲さんのプロフィールを紹介しましょう。

戦乱と干ばつに苦しむアフガニスタンで、36年間にわたり人道支援を続けた中村哲さん。医師という立場を超えて井戸の掘削や用水路の建設にも取り組み、多くの命を救った。中村さんは昭和21年福岡県生まれ。九州大学医学部を卒業し精神科医に。昭和59年パキスタン北部ペシャワールの病院に赴任、医療支援に取り組む。アフガニスタンを大干ばつが襲って以降は水資源の確保にも取り組み1600本以上の井戸を掘削。さらに25キロ以上にもおよぶ用水路も建設し砂漠化した大地に緑を蘇らせた。令和元年、何者かに銃撃され死亡。貧困という荒野を緑豊かな大地に変えることを夢見た73年の生涯だった。

まぁこんな感じです。

この映画は中村哲さんの実際の活動を追ったドキュメンタリーです。生涯をかけて、現地の人々と共に、現地の人々のために働いた中村哲さん。その軌跡を通し、“働く”とは何かを問いかける映画です。中村さんは自身のの活動について、「私たちに確乎とした援助哲学があるわけではないが、唯一の譲れぬ一線は、『現地の人々の立場に立ち、現地の文化や価値観を尊重し、現地のために働くこと』である。」と語っています。「人は人のために働いて支え合い、人のために死ぬ。結局はそれ以上でもそれ以下でもない。これは人間の仕事である。」中村さんの言葉がずっしりと心に響きました。

ただね。この上映会に参加している人たちの平均年齢は、明らかに70歳以上でした。もちろん高齢者にも多大な感銘と生き方のヒントを与えてくれる映画ではありますが、やっぱりこの映画は、これからの時代を生きる若者たちに見てほしい映画だよな…と思いました。でもまぁ65歳のボクとしても、「まだ自分も人のためにできることがあるんじゃないかな?」と、考えるきっかけにはなりました。

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朽ちないサクラ(映画)

2024年06月27日 | 読みました!見ました!

杉咲花が主演の映画「朽ちないサクラ」を見てきました。柚月裕子による警察ミステリー小説の映画化。杉咲演じる県警の広報職員が、親友の変死事件の謎を独自に調査する中で、事件の真相と公安警察の存在に迫っていくサスペンスミステリーです。

ボクはこの原作を、ちょうど1年ほど前に読んでいましてね。まぁ「柚月裕子の小説にハズレなし」って感じで夢中になり、続編の「月下のサクラ」も一気に読了した記憶があります。確か、ブログの記事にもしていましたよね。ありました、ありました。

 

朽ちないサクラ - タケ・タケ・エヴリバディ!

柚月裕子さんの「朽ちないサクラ(徳間書店)」を読了しました。実は半分以上は岡山からの帰路の新幹線の中で読んでいましたので、残りを一気に今日(2日)読んだって感じ...

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月下のサクラ - タケ・タケ・エヴリバディ!

柚月裕子さんの「月下のサクラ(徳間書店)」を読了しました。言わずと知れた、数日前に読み終えた「朽ちないサクラ」の続編です。2021年に発売された本なので、図書館の予...

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ストーリーは、こんな感じです。

たび重なるストーカー被害を受けていた愛知県平井市在住の女子大生が、神社の長男に殺害された。女子大生からの被害届の受理を先延ばしにした警察が、その間に慰安旅行に行っていたことが地元新聞のスクープ記事で明らかになる。県警広報広聴課の森口泉は、親友の新聞記者・津村千佳が記事にしたと疑うが、身の潔白を証明しようとした千佳は一週間後に変死体で発見される。後悔の念に突き動かされた泉は、捜査する立場にないにもかかわらず、千佳を殺した犯人を自らの手で捕まえることを誓うが……。

いやぁ〜原作の小説を読んでいて、内容をある程度知っていても面白かったです。警察、公安、報道、カルト宗教の暗部を描く重厚ミステリーって感じ。渋めながら複雑な構造のストーリーは見応え十分でした。やはり見どころは終盤の杉咲花と安田顕による静かなるバチバチなやり取りかな。タイトル「朽ちないサクラ」の回収もお見事でしたし、作品全体に繰り返し使われた満開の桜の映像も効果的でした。「大義の為の犠牲、それは正義なのか?」と視聴者に投げかけられたテーマも、重厚で考えさせられました。

主人公を演じた杉咲花のほか、安田顕、萩原利久、豊原功補らの俳優陣が、とてもいい味を出していた映画でした。続編の「月下のサクラ」も映画化してほしいな。

それにしても、最近は見たい映画が多くて困ります。テレビドラマで放送されてボクが大好きな「おいハンサム!!」、もうすぐ封切られる「キングダム:大将軍の帰還」や「長岡花火物語」。この夏は、映画も楽しみたいと思います。

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花桃実桃(中島京子)

2024年06月26日 | 読みました!見ました!

中島京子さんの「花桃実桃」を読了しました。先日のこと、長岡市の中央図書館の映画会に行った時に、「自由にお持ち帰りください」って感じで「図書館の窓から」という広報誌が置いてあったのですが、その中で紹介されていたのがこの「花桃実桃」でした。作者は直木賞作家の中島京子さんです。

父親が遺したアパート「花桃館(はなももかん)」に入居しているのは、ひと癖ある住人ばかり。その花桃館を相続することになった花村茜は、大家としてそこで暮らすことになります。住人達と奇妙な毎日を過ごす中で、悩みながらも次第にやりがいを感じていく茜の姿に、清々しさを感じる1冊です。(「図書館の窓から」より)

主人公の花村茜は40過ぎ独身女性。個性あふれるアパート住人との日々を描くこの小説は、大きな事件が起きるわけではないけれど、 クスッと笑ったり、ドキッとしたり、ほんわかとしたりして読み終えました。昭和の香り漂うアパート「花桃館」の住人は、ウクレレをかき鳴らす青年や、韋駄天のように走る老女など、揃いも揃ってへんてこな人たちばかり。「ほんとうに味のある人だよ」と周りから評価される主人公の茜さんですが、彼女自身も昔は「袴みたいなスカート穿いて、眉剃ってた」という元ヤンキー。なかなか魅力的な女性だな…と思いました。

素っ頓狂な行動に出る茜さんに目を丸くしたり、くすくす笑ったりするうちに、気持ちが軽くなって、ボクらの人生の後半戦もけっこう面白かもしれないぞ、と思えてきました。そんな「穏やかな効き目」を感じられる作品です。映画化されたらきっと面白そうです。この役はこの役者さんが似合いそうだな…なんてことを楽しく想像しながら読みました。

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カレーライスを一から作る

2024年06月20日 | 読みました!見ました!

長岡市の中央図書館で開かれた映画会で、ドキュメンタリー映画「カレーライスを一から作る」を見てきました。

探検家・関野吉晴氏は、武蔵野美術大学で一風変わった課外ゼミ活動をしています。通称「関野ゼミ」。関野ゼミが2015年に始めたのが、「カレーライスを一から作ってみる」という試み。野菜や米、肉、スパイスなどの材料をすべて一から育てるというこの途方もない計画に、学生たちと取り組みました。この映画は、野菜の種植えからカレーライスが出来上がるまでの9か月間の記録です。

「カレーライスを一から作る」。関野氏の狙いは、「モノの原点がどうなっているかを探していくと社会が見えてくる。学生たちにはカレー作りを通して色々なことに“気づいて”もらいたい」ということです。

集まった学生たちは、知らないことや慣れないことばかりの現実に悪戦苦闘しながらも、野菜や米、家畜を一から育てていきます。思っていたよりも生育が遅い野菜を見て「化学肥料を使ってもいいのではないか」「いや、使うべきではない」と意見が分かれたり、一所懸命育てるうちに鶏に愛着がわいてしまい、「殺すのを止めよう」「いや最初から食べるために飼ったのだから屠るべきだ」と議論が巻き起こったり…。

これは「命を食べて生きる」という、人間にとってごく当たり前で、基本的な営みを見つめ直すドキュメンタリー映画です。

この映画、面白かったです。それはエンターテイメントとしての面白さとは違いますが、学生たちが悩みながら、でも意外なほどに淡々と決断をし実行していくドキュメンタリーとしての面白さに満ち、見ているボクも追体験しながらいろいろ考えさせられました。特に可愛がって育てた烏骨鶏の首を学生たちが捻るシーンには、息を呑みました。

こういう映画。大スクリーンではなく小さな講堂やコミュニティセンターで上映されるのが似合う映画も、なかなかいいですね。中央図書館の映画会に初めて参加してみたのですが、無料で映画を見れるのも気に入りました。これからも機会があったら参加したいと思います。

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