A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

中身は同じでも・・・看板を架け替えると

2012-01-22 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
Giant Steps / Frank Foster and his Orchestra

最近はスーパーのプライベートブランド商品が増えている。陳列棚を見ても目に付く所にあるのはPB商品でメーカー商品はだんだん肩身が狭くなっている。高い宣伝費も掛けられず。大手の流通経路も絞られるとなるとメーカーのブランド商品を存続させるためにはますますハードルが高くなっている。メーカーは反対に作り手に徹してOEM商品を一手に作るという戦略もある。どの道を選ぶかは各社の経営判断だが、自社で製販一体の体制を維持できた時代が懐かしい。

ビッグバンドの世界も同じのような気がする。固定的なメンバーでレギュラーバンドを編成し、自由に曲作りや編曲を依頼して、レコード制作やコンサート、さらにはテレビや歌伴の仕事を毎日のように行えた時代は昔の話。今では単発の仕事に合わせてメンバーが集るだけのリハーサルオーケストラの形態になっている。ミュージシャンもいくつかのバンドを掛け持ちで演奏する。リーダーが替わっても中身は大体同じというということになる。また、昔はツアーに行った先でレギュラーグループを離れて別のセッションが行われたり、レコーディングの時、契約の問題で同じような編成でもリーダーが替わるということも良くあった。

68年に初来日したサドメルのオーケストラが、次に日本を訪れたのはそれから6年後。1974年のことだった。バンド自体はアメリカのみならずヨーロッパを含めて広く世界で有名になっていたが、その間日本への来日が途絶えたのも最初のトラブルが何らかの影響をしたのであろう。
‘74年の来日はメンバーこそ初来日時とは大幅に入れ替わっていたものの、相変わらず素晴らしい演奏を披露してくれた。そして、置き土産として日本でのコンサードライブのレコード”LIVE IN TOKYO“や、滞在中ローランドハナのアルバムも制作された。

それで安心したのか、翌’75年にも3度目の来日をした。74年のライブアルバムを作った日本コロンビアは2匹目のドジョウを狙って、再度アルバム制作を企画したが、その時は新たなA&Mとの契約が先行して残念ながら実現できなかった。しかし、スタッフはそこで諦めずにウルトラC技を使った。サドメルのオーケストラが駄目なら、他のメンバーをリーダーに仕立てて別のオーケストラにしてしまうことだった。もちろんメンバーはリーダーを含めて全員同じメンバーで。

白羽の矢が立ったのは、メンバーの一人テナーのフランクフォスターだった。ベイシーオーケストラに長く参加し、アレンジも提供してきたフォスターなので実現するのにはそれほど問題はなかった。メンバーの同意も得られて晴れで出来上がったのがこのアルバム。
公演の合間を縫って日本で録音されたアルバムだ。アレンジはもちろんフォスターが担当、サドジョーンズは表にでずにトランペットセクションの一プレーヤーに徹し、途中のソロでも登場しない。メンバーを見渡すと、8月にドイツにいたペッパーアダムスも元気にこのツアーに参加している。最初のメンバーは、リーダー2人を除くとあとジェリーダジオンだけになっていた。そして、VJOのリーダー、トロンボーンのジョンモスカはこの時からの参加だ。

フォスターのアレンジもお手軽に済ませたというのではなく、名曲”GIANT STEPS”を手始めにアレンジし、後は自分の曲を入念に。B面では2部構成で日本組曲という大作を書き上げて準備を進めた。
そして、出来上がったのがこのアルバム。バンド自体はサドメルオーケストラそのものだが、まさに看板をフランクフォスターに架け替えた「OEM」バンドに変身した。
ジミースミスのアルバムでサドメルは隠れバックをしたことがあったが、世に出ているアルバムも丹念に探すとこのようなアルバムがまだあるもしれない。

それにしても、当時は日本のレコード会社にこのようなアルバムを作り上げてしまうパワーがあった。それがミュージシャンをまた進化させていったような気がする。今は、レコード会社にそのような力は無いし、それを実現できるプロデューサーも居ない。結局、ミュージシャンの自費出版のようなアルバムしか出てこないのは寂しい限りだ。

1. Giant Steps
2. Now That She’s Away
3. Cecilia Is Love
4. Japan Suite
   Ⅰ.Shitsu-mon
   .Tan-kyu

Frank Foster (ts)
Al Porcino (tp)
Cecil Brigewater (tp)
Sinclair Acey (tp)
Wamon Reed (tp)
Thad Jones (flh)
Billy Campbell (tb)
Earl Mcintyre (tb)
John Mosca (tb)
Janice Robinson (tb)
Jerry Dogion (as,fl)
Ed Xiques (as,fl)
Greg Herbert (ts,a-fl)
Pepper Adams (bs)
Walter Norris (p)
George Mraz (b)
Mel Lewis (ds)

Arranged by Frank Foster
Produced by Takao Ishizuka
Recording Engineer Toji Sekiguchi

Recorded at Mouri Studio,Tokyo on Nov.13&15,1975



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