A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

器用貧乏という言葉は良く聞くが・・・・

2012-01-26 | CONCORD
Where’ve You Been? / Billy Tailor Quartet Featuring Joe Kennedy

実際には、オールマイティーに何でもこなせる人というのは一番才能があるような気がする。現実には何かひとつの秀でていた方が目立つし、結果としても人気が出やすい。ジャズの世界も全く同じで、マイルスにしてもコルトレーンにしても、最初は色々やっても最後は一つの自分の世界を作っていった人が巨人として歴史に残っている。特に、日本では、何も巨人でなくとも何か一筋でやっていた人間に人気が集るようだ。その結果、アメリカでは人気があっても日本ではあまり評判にはならないプレーヤーがたくさんいる。

ピアノのビリーテイラーもその一人であろう。マニアックな愛好家には人気があっても、必ずしも一般受けしているピアニストとは言えない。特にテイラーの場合は、ピアニストとしての活躍に加えて、作曲、教育や放送での活躍が大きく、レナードフェザーは「ビリーテイラーはジャズのための世界有数のスポークスマンであることはほぼ疑う余地のない」とも語っている。

例えば、1958年、”The Subject of Jazz”というタイトルで、教育番組でジャズの歴史を紹介する番組の音楽監督を務め、若くしてすでにどんなスタイルもこなしている。





かと思えば、有名ピアニストを順番に招いて共演している映像も残されている。



このような演奏を聴くと、話だけではなく実際に彼のオールマイティーぶりがよく分かる。

さて、このアルバムはConcordに登場したTaylorの初アルバム。Concordレーベルの特徴はあまり飾りっけのない企画でミュージシャンの素顔を出すことを売りにしていた。テイラーが今回の共演者ジョーケネディーを紹介したのは、プロデューサーのカールジェファーソンの注文に、彼が多彩な才能を持っているのを知ってか、「何か変った事ができない?」という一言があったからだ。

そもそものきっかけは、このアルバムが録音された1980年、テイラーはバージニア州のリッチモンドに地元のリッチモンドシンフォニーとの共演に訪れたが、その時そのオーケストラの音楽監督をしていたのがジョーケネディーであった。その時はテイラーが書いた“Suite for Jazz Piano and Orchestra” の公演のためであったが、意気投合した2人はいつか一緒にやろうとう話になった。というのも、ケネディーが実はアーマッドジャマルともグループを組んだジャズバイオリンの一人者であったからだ。この手の話は、大体お互いリップサービスで、本当に実現することは少ないのが常だが今回は違った。ジェファーソンの申し出に、テイラーがこのケネディーとの共演を提案してとんとん拍子でこのアルバムが決まったという経緯だった。

という訳で、ここでの2人は普段の仕事を忘れて2人の真剣勝負。この類の顔合わせセッションだと曲はよくスタンダード曲が選ばれるが、このアルバムはすべてテイラーのオリジナル曲が提供されている。それだけでのこのアルバムへの気合の入れ方が分かる。
演奏も、いつもは軽いタッチの印象があるテイラーのピアノも迫力が増している。一方のケネディーも他の演奏は聴いたことがないが、グラッペリの演奏などに較べるとモダンなタッチのバイオリンだ。
いつもは色々お化粧をして登場している2人のスッピンでの勝負はいかにもConcordらしいアルバム作りになっている。活躍の場が広い2人なので、このようなアルバムは他の作品(活動)の影に隠れてしまうが、器用貧乏な人が損するということはこういうことだろう。

1. Where've You Been       Taylor 6:01
2. Night Coming Tenderly     Taylor 5:22
3. Ray's Tune             Taylor 3:14
4. Antoinette             Taylor 6:57
5. I'm in Love With You       Taylor 4:26
6. All Alone              Taylor 5:38
7. I Think of You           Taylor 5:02
8. Capricious             Taylor 3:29

Joe Kennedy, Jr. (violin)
Billy Taylor (p)
Keith Copeland (ds)
Victor Gaskin (b)

Carl Jefferson Producer
Phil Edwards Engineer, Remixing

Recorded at Soundmixers, New York City, December 1980
Originally released on Concord CJ-145


Where've You Been
Billy Taylor
Concord Records
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