演劇知

劇的考察譚

怒涛のオペとは

2014-12-23 23:15:14 | Weblog
ありがたいことに仕事をいただき、大和メ組様の公演「ある冬の物語」の現場で音響をして参りました。



5団体オムニバス作品で、芝居あり、ダンスあり、歌あり、映像ありの内容盛りだくさんの公演。クリスマス前にちょっとしたパーティー気分です。

当日進行も盛りだくさんで、仕込みタイムスケジュールを組んだ舞監、おかださんと目が合った瞬間の「やってやりましょうよ」のアイコンタクトは終わった今でも脳裏に焼き付いています。サムライみたいな目してました。

当日はゲネプロ公演も含め実に多くのお客様にお越しいただき多くの笑い声、歓声に包まれました。歌の演目ではライブ会場も真っ青な「ウォイ!ウォイ!」が出ていました。


スケジュールてんこ盛りの環境ではスタッフのチームワークが物を言うと思っております。初めましての照明様、一見すると池田鉄洋氏に似ている百瀬さんと上手くいくかと不安でしたが、いざオペ卓について話をしてみるとこれがとても人間の出来た素晴らしい方で、一日を通してとても楽しく仕事が出来ました。怒涛の仕込み、場当たり、ゲネプロを終えた直後の

「F1みたい」

は言い得て妙の素晴らしいたとえでした。

そして映像オペをしていたたけいさんもこれまた素晴らしくいい子で、場当たり終わった直後にオペ二人に差し出してくれた



この珈琲の甘さは生涯忘れることはないだろう。この心にくる温かさ…わたしにも人としての心が残っていたのだ。お若いのになんて気が利く子なのかしら。

19時本番直前、気合入れとしてオペレーション三人組みで突き出した拳、とてつもないチーム感が出ていました。ワンピースのアラバスタ編ラストみたい。こんな現場、そうはないぞ。



場転処理、介錯担当のえぐち君も爽やか好青年で、謙虚で実にまじめに取り組んでおられました。突如お願いしたことにも嫌な顔をせず引き受けてくれる好青年。こちらもお若いのにしっかりしています。弁当食った後に出したソーセージパン。結構食うのね


場内は基本的にわたしとお三人様の4人で過ごしていたのですが、本当にノンストレスで楽しい時間でした。一日約12時間のお付き合いでしたが、戦友が出来ました。



カレーとスプーンとは

2014-12-12 01:45:00 | Weblog


カレーが本当に好きで色々食べ歩いているのですが、秋葉原「カレーは飲み物。」で青天の霹靂的なショックを受けました。カレー自体は非常に濃ゆいカレーだったのですが、まぁそのスプーンが素晴らしい。深く幅広く、口に運ぶ過程で濃ゆいカレーのボリューム感をそのまま受けて口に流し込む素晴らしい補助をしてくれるのです。味覚としてもこれまでにない体験。今まで食器にそこまで思い入れはなかったのですが、確かに考えてみればスプーンなる口への仲介器具も「口に含むもの」。こだわって損はないはず、むしろ素材の味をより深めるのではないかと考える。

たしか漫画「将太の寿司」でも日本酒の飲み口の件で同じことが書かれていたはず。


かくしてスプーンを探す旅に出ました。


スプーンを売っている店に行っては大きさを見て買うかどうか迷う日々。というのもスプーンの触り口を調べるにはどうしても口に含ませるしかない。しかし売り物を無断で口に含むともれなくお巡りさんが来てしまう。


この葛藤をクリアするために「エア・口に含ませる」をした。つまりギリ口内に入れ、ギリギリまで口を閉じ「もしも咥えたなら…」という妄想をするのである。各店舗に行ってはこの「エア・口に含ませる」をした。ひたすらに繰り返した…従業員様にしてみたら奇人であろうこの行為。通報されてたら確実に処されいた。しかし、幸福を突き詰めるには多少の犠牲は仕方なし…この精神でひたすらに咥えていきました。



「エア・口に含ませる」を幾度となく実践し、また期待に応えられなかった無駄スプーンも購入することとなるのだが、その結果「KEYUKA」のディナースプーンに辿り着く。




これが理想どおりの口触りのするスプーンなのです。深く広く、口触りよく、素材に+αしてくれ、ゴージャス感もある。非常にお勧めです。カレー食べるならこれで間違いなし。

水曜一人芝居とは

2014-12-05 22:54:39 | Weblog
一方の水曜チーム。人数が14人とかなりの大所帯なので一人5分以内という厳しい制約を課す。蓋を開けてみると一人平均4分半という見事な組み立てとやる気。やるな、この子達。各作品のタイトルはやっぱりわたしが勝手に考える。

○イライラロボット
ロボットのイライラ感情を一人二役、コント形式で展開。トリッキーな内容で展開すると思いきや最後は「人間の生誕」に持っていくにくらしさ。
ロボットマイム、稼動部分のロックが良く出来ている。衣装のピンと立っているリボンが可愛らしい。演者の普段の小粋さがにじみ出ている。

○選択
親に縛られる男子生徒。学校を休むことを願った彼だが、家を追放される。己の意志を持って生きていくことを決める。
独白形式でいくと思いきや、「追い出される」描写を自身の体を使って表現する。動作と台詞のズレ、流れるように動く身体に「おぉ」と思わされる。

○小鳥が死んだ。
「小鳥が死んだ」というライトモチーフで展開する不条理劇。言語が一音一音と削がれ、プレッシャーウォークやブランコなど身体表現も惜しげもなく披露。日常の感覚を詩的に表現。
まぁ寺山好きという演者ならではの表現。無音の叫びは見事。手を洗う時に二分割したように思えたのだがどうだろう。

○女子の本音
前半、ある女性の別れのシーンが繰り広げられ、そのまま終わると思いきや後半はそんな彼女の本音が語られる。「なんで振られたか分からない」という言葉に女性の怖さを思い知る。
文化祭作品でお世話になった演者。キャラクター芝居と思いきや何気ない会話劇も出来る器用な子。

○三分間の夢
深夜食べるカップラーメンが出来るまでの三分間の間に心に浮かんだ情景を表現。
これまで色々な作品がなされてきたが照明と音響と装置を全て含ませた「全部のせ」作品は史上初。練りに練ってきた作品なのだろう。レベルチェック出来ず台詞が一部聴こえなかったのが本当に悔やまれるがゲネをやる時間はない。わたしのカメラの精度がよければサイリウムの光をもっと捉えることが出来たのに…申し訳ない。

○UFOキャッチャー
リトルグリーンメンはUFOキャッチャーの景品として挑戦者を待つ。500円3回の挑戦を受け、見事に獲得される。
しっかりと着ぐるみ衣装は今回随一。よく用意した。演者のけだるいそうな雰囲気(褒め言葉)が待っている景品の感情と相成って独特の雰囲気となり観るものをひきつける。己の個性を良く分かっている。

○マフラーまたはストール
マフラー、またはストールの擬人化。しまわれているタンスから出され洗われ、巻かれ、そして再びしまわれる。
演者の普段のテンションの高さ、コミカルさが良く表われている。けれどそんな演者の実は繊細な部分、弱い部分もこの二年間で見てきているゆえ、よくここまで表現出来るようになったなぁと感慨深くなる。身体良く使えている。

○吹奏楽の想い出
自身のこれまで経験してきたであろう吹奏楽部での想い出を回想形式で表現。
さりげなく吹くクラリネットがお上手で嫉妬する。技術あることは素晴らしい。演者特有のぼやき、流れるような毒舌がツボで、笑いを我慢するのがとにかく大変だった。こういうやりようもあるのだなぁと勉強させていただく。

○お天気お姉さん
台風の天気情報、スタジオと現場の中継のやりとりを一人四役でコミカルに表現。台風後、台風中、台風前の各状況を上手く再現。
普段控えめに見える演者だが演技中に時折見せる爆発力があり、密かに注目していたが、自身のこの演目で見事に持続させたその爆発力を見せ付ける。ダンスやっているだけあり動きしなやかだが、小道具準備中のガニ股がたまらない

○コロ
捨て犬のコロは通りかかった飼い犬と話をする。女の子のくれるビーフジャーキーに満足していることを伝えるも胸のうちでは寂しさに溢れている。
動物の擬人化。演者は本当に幅の広い演技をしてくれる。嫌な奴から今回の純粋無垢まで、この二年間で色々なことに挑戦してもらった。今後の進路にも役立つと嬉しいなぁ。

○お客様コールセンター
お客様コールセンターとしてクレーム対応におわれる女性。お客様と会話中には丁寧な対応、電話を切った後は本音を露呈し暴言を吐く。
日常演技を好む縁者らしい演目。前半と後半の演技の差が良く出来ている。演者、普段は礼儀正しくわたしと接してくれているのだが影で同じように悪く言われているかと思うとなんだか切なくなる。演技がっぷり四つ指導の成果は出たか。

○いっぽ
倦怠期のカップル。心に思っていることを伝えられないまま彼女は交通事故でなくなる。それぞれが踏み出せなかった一歩に後悔が残る。
狸やら耳やら変な役ばかりやらせてきた演者であるが、今作品の感性をお持ちであることを観て圧倒的に反省。暗転演出はふつうに驚いた。今クラスで一番ドラマティックであった。

○遊女
自由を夢見る遊女。気ままな生活の猫に憧れを抱く。客の男共に遊郭からの逃亡を図るがあえなく見つかり斬り捨てられる。
演者の柔和さ、どことなく溢れる艶は女性の演じる遊女よりも遊女らしい。抱きかかえられるところなど普通に「綺麗だなぁ」と思った。日舞などやっていたのだろうか。「品を作る」「女性の足運び」がしっかり出来ていた。

○ジャングルのある部族
ジャングルのある部族民の生態に迫る。素手で狩りをする部族民にジャケットを与えたらどうなるか。そんな調査の中、部族民に見つかり生命の危機に見舞われる。しかし部族民は言う
…「トモダチ
授業で行ったジブリッシュ(自分言葉)を巧みに使い部族民を表現。とにかく普通に面白い。やられた。エネルギー溢れる演者ならでは。



水曜チームは本当にバラエティ溢れる内容であった。先輩たちの動画を見たいとのことで様々な期のものを見せたのだが、擬人化系、リアル系、、独白系、授業内容反映系と歴代の先輩たちに負けない内容であった。これだけの内容がちゃんと一時間に収まったことが信じられない。

今年のそれぞれの一人芝居もわたしは忘れないであろう。


修了公演も彼、彼女たちに負けないように完成度上げて望みたいと切に思った。

木曜一人芝居とは

2014-12-05 09:38:33 | Weblog
今年も一人芝居の時期がやってきました。例年に負けない個性的な作品が出てきました。まずは木曜チームから。なおタイトルはわたしが勝手につけました。

○面接
ストーリーテラーと彼女が実際に体験した受験面接の失敗をコミカルに演じる。
あるあるネタからそんなことあるのかというネタまで。演者の普段からのフットワーク軽いコミカルさが演技に乗っかる。トップバッターとして緊張する環境の中きっちり演じ切る。木曜はコメディ系がこの一本のみだったので、その点でも良くやった。

○リハビリ
試合前のプレッシャーに押しつぶされ自傷した子と、そんな彼女を励ます子の一人二役。試合当日に自傷した彼女は、仲間の頑張りを胸にユニフォームを着てリハビリを始める。
普段落ち着いている印象の演者がここまで熱量を持っているとは、正直驚かされるとともに胸が熱くなった。きっと他の子にもそう映っていただろう。これ、演者の似たような経験を元にしていると思われるのだが、丸々虚構ならばなんとも大した女優だなぁ。

○私のワンピース
一人の女性の小中高の経験。周りと違うという感覚に戸惑う彼女の前に現れる一人の女性。アイデンティを得、自分は自分で良いという結論に至る。
演者とは論文大作でがっぷり四つであったが、その過程で彼女の中高での思いに触れる機会があった。その思いを見事に表出出来ていたと思う。本当の気持ちというものは人を動かす力がある。

○進路
受験面接の中で聞かれる志望理由。その中で彼女が思う情報への疑問。当たり前と思われていること、大人が「そうだ」と思っていることへの懐疑を自身でしっかり捉えるため、進路に向かう決意を固める。
これも演者の思いや経験を元にしているであろう作品。ゆっくりと進んでいく展開にも熱さが表れている。普段柔和な彼女の芯の強さを垣間見、思わず頬が緩くなる。

○イチネン
クリスマスへの想い、そこから始まる一年への期待を楽しげに独白。しかし一年巡ることは人生の終焉に一歩近づくこと。期待はいつしか不安へと変わる。
抽象テーマを技巧的に構成。もともとトリッキーな演技をする演者らしい作品。この期待から不安への変化というのはこの年代ならではのことだなぁと思う。

○地表と鼓動
有害物質により人が住めなくなった地表、放射能により巨大化した穀物、二つの太陽、自然を破壊した文明。その文明の恩恵を受ける調査員が大地の鼓動を感じ、そして大地に懺悔をする。
SF要素なのだが決して他人事ではなく、我々の社会にも起こりうる問題。やはりこの年代で思うことを技巧的に構成。「イチネン」が演技的技巧であるならばこちらは戯曲的技巧。壮大な世界観は演者がこれまで学んできて結果であろう。



振り返ると木曜チームは「己」を真摯に捉え表現しているように思える。人数少ないこともあり時間も充分にとれた。その中で今出来ることの全てを注ぎ込み表現する彼女たちの演技は胸に刺さる。


水曜チームへ続く。