演劇知

劇的考察譚

結婚式打ち合わせとは

2012-03-31 14:52:45 | Weblog
4月末に演出を依頼された永野夫妻結婚式の打ち合わせで新宿に。

新婦である綾香さんが構成等しっかり計画を立ててくださったので、実際には現場監督と司会進行が主な役回り。そして、宣誓の儀の神父役という大役も回ってきた。

「病めるときも健やかなる時も…誓いますか?」

というコントでしかやらないであろう台詞を言える貴重な機会。


「誓いの…キッスを…」


というのだ。わたしが




当日はとても緊張するのだろう。

青砥「石松」とは

2012-03-30 17:46:14 | Weblog
修了公演のスタッフ作業をフォローしたことで、わたしと尾崎さんに一杯ずつ奢ってもらえるという約束を果たしに青砥の石松へ。


二階の桟敷席で楽しい時間を過ごしました。




店員さんの苗字を当てるゲーム



という途方も無いことをやり。迷惑この上ない客となったことだろう。



アテマチガイパーマネントの話や多少婦人次回公演の話をしたり、髪をショートにした㈱ゆとりが北乃きいに似ているという話をしたり。


前回は楽しい楽しい言っていたが一体何が楽しかったのか全く覚えていない状態となったが、今回は記憶しっかりしたまま楽しかった。

卒業証書とは

2012-03-29 23:53:19 | Weblog


2の子どもたちから卒業証書を貰う…あれ、




これ、感謝状だ!





今のいままで完全に卒業証書だと思っていました。考えてみれば確かにわたしは何から卒業するのだろう。

皆にも渡しました。皆のはちゃんと卒業証書だったな。これを用意した稲垣師匠、お見事過ぎます。ちなみに名前を自筆で書いたのですが、それを書いていたのは蟻さんの本番中。出来る瞬間がそこしかなかった。

本番後の舞台上で渡すことが出来ました。この大役を務めることが出来て本当に幸せでした。皆の顔はキラキラしていて、今でも目に焼きついています。


さて、こうして修了公演を長々と振り返ってきましたが、それぞれ本当に良い舞台になったなと感慨深くなります。明日は飲もう。

「Ms.frog」総括とは

2012-03-28 23:25:47 | Weblog
「Ms.frog」でいよいよ総括は最後。

年度始めから「修了公演は『水』をテーマにしよう」と思っていました。というのも舞台となる建物は周りを水に囲まれており、3月に起きた地震で地盤沈下の危険性も示唆(実際はそんなことなかったが)されていました。4月のとある日、朝潮橋を歩いていた時に水面を覗き見、「潜る話にしよう」と思い立ちました。

毎年近隣を舞台にしていまして、その川を舞台にしようとしたところ、橋を一度舞台にしていたためネタ被りの危険を感じ、「川がダメなら池だ」ということで池探しに。庭園があるので流石に池、または池の痕跡くらいはあるだろう。なんといっても庭園なんだから…と思い庭園を歩くも池なんてありゃしない。あるのはただただ小さな手水鉢のみ。

それなら手水鉢に潜ろうではないか、面白いではないか

と考え、構想。

加えてゲーム要素としてこれまでやってこなかった同音異語を取り入れることに。そこで言葉豊富であり、池にも縁あり、何よりも過去を振り返る言葉「かえる」を選び、この物語の全体像が出来上がりました。

各キャラにそれぞれの言葉を振ったのは、2年ないし1年間その人間を見てきて、芝居上でやって欲しいなと思ったことを考え。結果として皆が皆ハマッた内容になったと思う。


この芝居は笑わせ、そして泣かせるのが目標。35分という短い時間の中でどれだけ観客を揺さぶれるか、そのためには演じ手が「楽しむ」だけでなく、技巧的に芝居に取り組むことが大事になります。1、2、理論と時間を過ごした彼女たちならばそれが出来るという確信がありました。心を動かすためには「共感」させなければならないということを知ってる彼女達は見事にそれを体現しました。そして自らも舞台上で「共感」し涙を流したのです。この涙が伝わらないわけがない。本番中、オペレーション室にいたわたしも目頭が熱くなりました。


芝居上に3.11の日にちを出さない方が良い、または取扱って大丈夫かというご意見を賜りました。まさしくその通りで、非常に繊細でデリケートな問題であると思います。が、しかしだからこそ目を背けたり、腫れ物扱いして欲しくない問題でもあります。日にちを台詞にしたのはわたしの決意でもあり、役者各人への決意でもあります。何より多感な時期にその瞬間を過ごした実の世代だからこそ、その思いを風化させることなく、記憶に留めて欲しいという思いで脚本に盛り込みました。


現実設定にSF要素が入る以上、どうしても説明台詞が多くなってしまうのが欠点。この芝居でも説明台詞として皆様の力をお借りすることに。わたしの今後の課題です。いかにシンプルに、また素早く設定を理解して頂けるかという、難しい問題です。


この作品を観て「悔しかった」や「泣かされた」という意見を聴けて作り手としてはニヤニヤ。しかしその功績は役者にある、そんな芝居になった。





冒頭の「ゆく河の水は~」は鴨長明、ラストの「古池や蛙…」は芭蕉の作品。川と池の対比、変わる水と変わらない水との対比、進むものと留まるものとの対比、わたしと創ったこの作品は過去となり、皆はこれから未来に向かって進むのです。水の質は代わりますが水は水。同じ硬度の水として、進みゆく彼女達を見守りたいと思います。







「カラ・ファイ」総括とは

2012-03-27 23:33:38 | Weblog
有志劇「カラ・ファイ」総括。




特に無し





というと身も蓋も無いが、劇作的、演出的共に捻りを入れないストレートな作品なだけに、みたまま「どうだぁ!」という内容。役者の個性、楽しさが伝わることが一番の作品なので無駄な味付けはしていないのです。そういう作品を創ったのが久しぶりだったので、脱稿もとにかく早かった。




そもそもMs.frogに出られない子で、やりたい意志を持った子を救おうと始めた企画。企画を立てたはいいが、さて内容をどうしようか悩む。感動系を持ってきてもMs.frogと被るし、Ms.frog出演者の中でも有志参加希望の子たちの台詞量が尋常でないものになってしまう。

どうしたものかと考えているところにたまたま出会った大熊師匠。


「どんなのやりたい?」


となんとなく聞いたわたし。



「考えてメールします」


という大熊師匠。



後日来たメールには


「閉ざされる密室! 疑心暗鬼の一同! 高らかに響く歓喜!」


みたいな内容であった。師匠らしいと言えばらしい。

そこから、密室→カラオケ→卒業公演終わり→持ち歌

と思い付き、ゲーム性としてカード引きを思い付き、歌の頭文字を取るとメッセージになるという微笑ましいエピソードも付け加え、ラストは歓喜の歌を熱唱というプロットがあれよあれよと完成した。

この思考の背景にはact orch「lab~亀井戸~」の打ち上げにおけるニッシー、大熊師匠、功己大塚の力と、保育園芝居「夢見るクリスマス」の打ち上げにおける体験が非常に活かされている。やはり打ち上げはやるものだ。ただ飲んでいるだけではないのだ、わたしは。




後日の感想で「パフォーマンスがどこか中途半端」という厳しいものを賜った。自由を優先させ、そして有志という性質上における稽古時の詰め甘さが原因と言える。そして演出としてのわたしの責任でもある。反省として真摯に受け止めたい。

ただ稽古時の本人たちは本当に楽しそうで、文字通りの「play(遊ぶ・演じる)」であったと思う。



ラストを片桐師匠と案浦師匠に託したのは、片桐師匠は蟻の分も出て欲しかったから。案浦師匠はチームを行き来した橋渡しのポジションから。

稽古での基本指示が「芝居をするな。狙うな」であったが、ここ一番の時にはバッチリ狙った演出をしてしまったのは申し訳ない。

音響ミスから本来は途中から歌う「ハレ晴レユカイ」を丸々流してしまったのだが、しっかり対応出来た金谷師匠は本当に凄いと思う。そしてミスをカバーしてくれた案浦師匠も然り。

お客様のアンケートで「最後はハッピーに終わって良かった」というものが多く、この世代のお客様の求めているものを深く感じた。



四畳半王国「千億の光」とは

2012-03-26 23:29:17 | Weblog
曽我さんが出演するとのこと。最後の舞台と言う彼女。わたしとしては波野平君劇作演出の作品をひとまずのラストとし感慨に耽っていた部分もあったので、この美しい思い出を塗り替えるのもどうかなと思っていたのだが、当の本人の「生霊を飛ばす」という素晴らしい誘い文句に乗っかり観に行くことに。この文句、相当使える。言葉通り殺し文句だ。



芝居としては女子の気持ちと宇宙の果ては分からないよねという、わたし納得の内容。確かに分からない。物語ラストには女子が自身の気持ちに気付くために己の中に飛び立ち、「宇宙=虚無」の中を進み、そこで本当の「己」を見つけるといった内容。作品自体は荒削りであり、大音量の中でリズムを取り狂う演出は出演者一同にとってはリリシズムであるが、観て側は置いていかれている感が否めない。わたしの席位置が悪かったのか、言葉が聞き取れないのである。以前竹田氏が「音に合わせる台詞は音楽となり流れていく」といったことを述べていた。自身の反省と共に、この作品にも当てはまるなと思った。



さて、曽我さん。演出の意図「ザ・幼さ」の役。彼女の容姿がこの役にしたのだろう。本当の彼女は目からビームが出せるのだ。宇宙芝居の場合、わたしならば確実に戦闘機の役にした。今回の演技、演出の要求通りの演技は出来ていたと思う。彼女の芝居はかれこれ5~6年くらい観ているが、成長が確実に見える。前回の透明度溢れる周りの演技を「受ける」芝居から、今回のキャラクター全開の放出系の芝居まで幅広く出来るようになった。彼女の青年期の成長と共に舞台の成長も観ることが出来、改めて感慨に耽るのである。舞台上でキスすることも出来たしね。わたしは父兄のごとく目を伏せてしまった…観て側としてはいかんのだがね。




主役の資質を垣間見ることが出来た今回の曽我さん。そう言えば彼女を主役で使ったことがなかった。毎度名脇役においてしまうのは彼女とわたしの距離感の問題か?彼女の見た目で普通に良い感じの役にするのが、どうもわたしは好かんのだが、いずれ主役で芝居をしたいですね。大丈夫、人生は長いんですから。気長に待ちますよ。




ひとまずお疲れさん。

「ピナ・バウシュ夢の教室」とは

2012-03-25 23:05:41 | Weblog


「ピナ・バウシュ夢の教室」

ストーリー(あらすじ)
ダンス経験のない40人の少年少女が世界的舞踏家ピナ・バウシュの下に集まり、バウシュの代表作として知られる「コンタクトホーフ」の舞台に立つまでの10カ月を追ったドキュメンタリー。演劇好きの少年や不慮の事故で父を亡くした少女など、バウシュの下に集まったティーンエイジャーは、性格も家庭環境も全く異なるが、ただひとつ共通するのはダンス経験がないこと。バウシュ自身によるこの企画に参加した少年少女は、厳しい特訓に時に弱音を吐きながらも、ひとつの目標に向かって成長していく。バウシュの貴重な指導風景や創作の裏側を映し出している。
キャスト・スタッフ
キャスト: ピナ・バウシュ、ベネディクト・ビリエ、ジョセフィーヌ・アン・エンディコット
監督: アン・リンセル
撮影: ライナー・ホフマン

作品データ
原題: Tanztraume - Jugendliche tanzen Kontakthof von Pina Bausch
製作国: 2010年ドイツ映画
配給: トランスフォーマー




こちらがわたしが観たかった映画。芸術と教育の中間にいる、ちょっと特殊な状況のわたしである。思うところがあるのだ。


観終わった際に思ったこと

・「教える」とは口立てである
・本気は伝わる
・表現の素晴らしさ


批評する映画ではなく、ただただ己に落とす映画であった。

「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」とは

2012-03-24 22:42:44 | Weblog


Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち
英題: PINA 3D
製作年: 2011年
日本公開: 2012年2月25日
上映時間: 1時間44分
配給: ギャガ


本当は「夢の教室」を観たかったのだが、どう間違えたのか入ってしまった。そして3Dグラスを受け取ってしまった。これは観るしかない。が、結果として観て大正解だった。3D映画として意義のある、非常に凄いものを観た。芸術を志すものは観るべきである。

この映画を観て芸を極めることとは形式を突き詰めた上での自由なのであると感じた。世阿弥の能楽師の年代での戒めが頭に浮かんだ。本当の「花」は続けた上に咲くものだ。




最後のピナの台詞、「踊りなさい、自らを見失わないために」には、こみ上げるものがある。

「Witch trial tale」総括とは

2012-03-23 21:37:38 | Weblog


後日頂いた巨大大入り。でかいのなんのって。中には巨大五円。12日公演後の大入りで渡したものを、巨大にアレンジしてくれたのだ。あの時、役者分は用意していたのに何故か己の分を用意することをしなかったのは、単にド忘れしたのもあるが、己の立ち位置を何となく意識していたのではないか…と今になって思う。そこへこのような形で大入りを頂くことになり、なんというかただただ嬉しいの一言。1で頂くとは思っていなかったのでそれも重なり。皆のメッセージがイカす。

15日にもそれはそれは素晴らしものを頂いたので、それはまた後日。



「Witch trial tale」は1で初の公演、初の土日稽古、初のマルチシナリオととにかく初めて尽くしだった。「これくらいでいいだろう」とか「こんなもんだろう」とこちらが思っていると、その一つも二つも上をいく提案や要望がくることがしょっちゅうだった。公演もどうなることかと思ったが、滞りなく打て、上演したものも「発表会」ではなく「公演」になったと思う。意欲、行動、結果が揃ったものとなった。


公演内容が難しいというアンケートがあった。書き手であるわたしの至らなさもあるが、難しいものにした理由としてまずは童話をモチーフにすることでチープな内容にしたくなかったというのがあり、また難しいものがやりたいという要望も役者の中にあった。そして演じている彼彼女たちにも考えて欲しかった。「情報に操られる」とは、「国」とは、「魔女」とは。話の中でもそうであり、現実問題でもどうなのかと。上演されたエンディング、スパイである魔女の正体を鏡に問う白雪姫、その鏡を一斉に覗き込む一同。巨大な塊となる。鏡には恐らく全ての人間の顔が映されているであろう。恐怖心と好奇心と猜疑心が入り混じった顔。それを見て白雪姫は「あ、そういうこと…」と悟る。何を悟ったのか、是非白雪姫に聞きたいところだ。

余談として、ネットの発達かどうか分からないが、困るとすぐに答えを問うてくる傾向があると思う。わたしはそれを「攻略本的傾向」と呼んでいる。「この台詞はどうやったらいい?」「どう動いたらいい?」と、まぁ聞くのは簡単であるが、まずは己で考えること、それを望みたいし、わたし自身も気をつけたい。



今回の公演を通じて、より仲間と仲良くなったり、舞台上で表現することが好きになってくれたり、感情の開放ということがなんとなく分かったり、またはそれらに達せずとも、前段階の「動機付け」になったのであるならば、ただただ嬉しい限りである。



わたしと皆と、皆と皆とに再びの御縁があることを。

「Witch trial tale」連載とは4

2012-03-22 10:41:26 | Weblog
さて連載最終回。そしてこの芝居の肝でもあるアドリブ大会。ここの具合によって3パターンの流れになるため、役者も大変ですが照明、音響をしているわたしも大変なのです。探偵ゲーム(人狼ゲームともいうのか?)を模したこのゲーム、魔女が梟を殴ってしまうと一瞬で終わってしまいます。その合図として殴られた梟は豪快な悲鳴を上げると決めていたのですが、どうかこの悲鳴が上がらないよう、わたしも必死になって祈っておりました。11分の1の確率ですから、そう当たらないのですが万一ということもある。照明、音響の流れも全く変わるので気が気ではありませんでした。

梟が即座に死ぬ①は謎未解決のまま終了。「魔女」という脅威のみが残る。バッドエンドでもありスッキリしないラスト。なら作るなと思いますが、それも一回性の奇跡。そしてお客様にもそうですが、役者である子どもたちにも舞台の緊張をしって欲しく、そして虜になってほしかった…というのが本音。

梟が魔女を当てる②は魔女裁判後の火刑。ある意味今回のタイトルどおりの内容。国家論に繋げ、ラストは全員の群唱で締めるというもの。子どもたちの中ではこの②が人気が高かったのが以外。まだ70~80年代の「動の演劇」、パッション芝居は受け入れられるということを知り一安心。このテイストは今後試せ…たら嬉しいな。

③がこの物語の新のエンディング。本番も無事③に辿り着き一安心。ラストの「鏡よ、鏡…」の解釈は、そしてこの物語全体の総括はまた後日。



※以下無断転載禁止

ハーメ  では、私も眠るとしましょう。どうか何事も起こらないように…

   ハーメルン眠る。暫時の沈黙。どこからか声が聞こえる。

  声  これよりゲームが行われる。先程配られたカードにより「魔女」と
     「奴隷」が決定された。「魔女」は眠りの力をその魔力で解き、場
     にいる人間を襲う。「奴隷」は一同に悟られないよう、「魔女」の
     手伝いを行う。誰が魔女で誰が奴隷か。犠牲者だけが増えていく。
     さぁ、ゲームの始まりだ。

   「魔女」「奴隷」起き上がる。

  声  「魔女」はハーメルンの笛で誰か一人を殴打する。犯行後、10秒で
     一同の目が覚める。目覚めた後「梟」は一同から証言を得、誰が「魔
     女」かを当てる。正解、不正解で物語の展開は大きく変わる。なお、
     仮に「魔女」が「梟」を殴打した場合、導き手を失った物語は即座に
     終わりを迎える。

   ゲームが行われる。アドリブで進行し、「梟」は一同の証言から「魔女」
   を当てる。ここから物語りは3パターンに分かれる。ゲーム中に「魔女」
   が「梟」を殴打した場合は即座に①に飛ぶ。「梟」が正解した場合は②へ、
   不正解の場合は③へ飛ぶ。




   「魔女」が殴打した直後、「梟」悲鳴を上げて立ち上がる。

「梟」  まさか…私が「梟」と見抜いて…一撃で…その力、やはり魔女…皆…
     起きて…逃げて…
「魔」  無駄無駄。「梟」の力無き今、こいつらは永遠に眠り続ける。まぁ、
     もっとも生かしてはおけないがね。殺りな、お前ら。
「奴」  はっ!

   「奴隷」達、眠っている一同の首を絞める。

「梟」  お前達「神の御子」は…何が…目的なの?
「魔」  さぁ…それは神のみぞ知るってことかね…ヒェヒェヒェヒェ!

   「魔女」、「梟」を笛で殴打。

「魔」  戦争も何かも忘れ、骸となってこの城で眠るがいい!ヒェヒェヒェ
     ヒェ!
  声  魔女の力により、ハオスメルヒェヴンの姫君達は命を落とし、男達も
     また「神の御子」の軍勢の手に掛かりその命を落とす。喪失に男も女
     も関係ない。戦争とはただ犠牲者を増やす愚かな行為である。犠牲と
     なりし姫君達。その骸は…冷たい。

   光がゆっくりと落ちていく。幕。




   「梟」が「魔女」を指す。暫時の沈黙。

「魔」  ……何故、何故分かった!
ハーメ  「魔女」と「奴隷」を捕らえるのだ!

   一同、「魔女」と「奴隷」達を捕まえる。十字架に括り付けられたように
   拘束される。

「梟」  何故分かったか…殺意が込められたその目を見れば一目瞭然。
ハーメ  死の前に問おう。お前達「神の御子」とは何だ。
「魔」  ならばまず問おう。お前達は一体何者だ?
「梟」  どういうこと?
「魔」  何故我々は戦う定めにあるのか?
ハーメ  お前達から攻めてきたのだろう。
「魔」  それは真実か?
「梟」  …どういうこと?
「魔」  何故我々は戦う?同じ形をしたものが、違う色、違う思想、違う環境
     により何故殺し合う?何の為に?
ハーメ  国を守るためだ。
「魔」  では再度問おう。その国とは何だ?国とは何によって造られている?
     民族とは何だ?博識なる「梟」よ、教えてくれ。お前には何が見えて
     いる?
「梟」  国とは…一定の領土とそこに居住する人々からなり、統治組織をもつ
     政治的共同体。
「魔」  …浅はかな答え…なんだい、私達はこんな奴に見破られたのか。我な
     がら情けないね。
ハーメ  御託はいい。魔女裁判はここに終結する。さあ、罪人をくくりつけ、
     火をくべよ!

   「魔女」「奴隷」達の周りに火が付けられる。

「梟」  何故戦うかなんて分からない。ただ、魔女裁判で魔女を裁くことで、
     我々は一つとなり、それが国を守ることに繋がる。意味のある行為
     …のはずだ。
 一同  迷いは炎の中に消える。
赤い靴  魔女は業火に包まれる。
マッチ  その炎は浄化の力を持ち、何よりも強い。
 茨姫  しかしその炎は一体何を灰にするのだろうか。
 女王  果たして魔女か。いや、焼き尽くすのは同じ形をしたもの。
赤頭巾  彼女を焼くことで争いは留まらず加速する。罪が新たな罪を作り出す。
 モモ  罪を重ねる先に平穏があるのならば、その平穏とは正しいものであろ
     うか。
人魚姫  そもそも何故我らは争わねばならないのか。
 ホレ  民族観。宗教観。人生観、利害、復讐、計画。
 冠者  売られた喧嘩は買わねばならない。報復と攻撃に明確な差はない。
グレー  守る為の戦い。守る為の磔刑。守る為の火刑。何を守る為?
かぐや  人、家族、家、街、国、世界、私達を縛る鎖。
ラプン  鎖を守るために私達は罪を犯し、犠牲を払い、既存のものを打ち砕く。
 家鴨  瓦礫の中から産み出される新しい価値もまた幻想の鎖。
白雪姫  私達は主人公としてこの世界を生きる。幻想の鎖は魔女を縛り、そして
     浄化の炎は彼女達を包み込む。
 一同  神の御子をその手に掛け、私達は神に牙を向く。

   燃え盛る炎は彼女達を映し出す。光がゆっくりと落ちていく。幕。




   「梟」が指す。暫時の沈黙。

指名人  いえ、違いますけど。
「梟」  え?
指名人  魔女じゃありません。
「梟」  そうだよね、いや、そうだと思ったんだ。あははは…
ハーメ  「梟」の力を持ってしても見破れない。これはまずいですね。

   暫時の沈黙。

「梟」  気まずい…

   暫時の沈黙。

かぐや  思うんですけど。
 モモ  どうしました?
かぐや  …魔女はいるのでしょうか。
 モモ  アリスのトランプは絶対…だと思います。
かぐや  いえ、その…魔女は本当にいるのでしょうか?
赤頭巾  何が言いたいの?
かぐや  魔女ってなんでしょうね。
赤頭巾  それはあれでしょ、魔女って…魔の女でしょ。
 茨姫  相当アバウト。
 家鴨  ならあんた言えるの?
 茨姫  …さぁ…
マッチ  不思議な力を使える女性。
 茨姫  そうしたらさ、ここにいる人間、大体が魔女じゃない?
マッチ  私は何のとりえも無く、ただただ使えない女ですけど。
 茨姫  女性でしょ。あなたにもいいところ、あるわよ。
マッチ  え、何その目線。
 女王  そもそもの括りが違うのだ。この場合の魔女は神の御子と名乗る愚
     者じゃ。
赤頭巾  じゃあ、神の御子って何?
 女王  出たな、何故何故娘。
グレー  でも確かにそうね。神の御子って見たこと無い。ねえ。
 モモ  なんです?
グレー  何者?
 モモ  さぁ。
グレー  さぁって…
 モモ  私も見たことが無いのです。話でしか聞いたことが…
ラプン  私、分かっちゃった。
 家鴨  何を?
ラプン  これまでの話ってさ、全部情報だよね。
 家鴨  情報?そりゃ人から聞いた話は全部情報でしょう。
ラプン  情報しか受け取っていないのよ、私達は。
 家鴨  ん?つまり?
ホレ  何、じゃあ神の御子は実態が無いってこと?
白雪姫  ぶっ飛びすぎでしょ、その意見。
 ホレ  何、情報に踊らされていただけ?
白雪姫  でも、確かに後頭部殴られたよ。
赤い靴  踊らされる…あ。
 冠者  どうしました?
赤い靴  私達は本当に只踊らされていただけなのかもしれない。
 冠者  そりゃあなたは踊っているでしょうけど。
赤い靴  私だけじゃなく、私達全員。
人魚姫  踊らされる…全員を操れる…あ。

   一同、ハーメルンを見る。

ハーメ  ……どうしました?
人魚姫  つまり私達は笛の音によって操られていただけ?
赤い靴  何かの目的があって、ハーメルンは私達を呼んだ。その笛の音で。
マッチ  何の理由で?ていうかどうして私達が必要なの?
 茨姫  …戦争自体、根本的に怪しくなる。
 女王  どういうことじゃ?今は戦争ということで我らは集まっているので
     はないのか?
赤頭巾  それも所詮情報でしょ。誰か直接見た?神の御子。
 モモ  確かに、私も神の御子側のスパイがいるという情報だけでここに来ま
     した…
人魚姫  でもそれって、戦争の被害を直接肌で感じていないから、そう言える
     んじゃない?
 ホレ  一緒じゃない。それ。
 冠者  どういうことでしょうか?何と何が一緒なのですか?
グレー  実際にどこかで行われていることと、行われていないこと?
かぐや  でも、帝は犠牲になったのですよ。
ラプン  それも情報でしょ。目で見ていないでしょ?生き死にも情報…うわ、
     凄いこと気付いちゃった。ハーメルンが情報を操作して私達をこの城
     に呼んだのだとしたら…目的が私達自身だとしたら…
 家鴨  え、ここってあの青髭の城でしょ。青髭城って確かさ…女性の拷問室
     があるんでしょう?
ハーメ  皆さん、何を馬鹿なことを…

   白雪姫、歩き出す。  

ハーメ  何をするんですか?
白雪姫  確かめるの。そこの扉…開けてみるね。開けちゃいけないんでしょ、
     その部屋。ならそこに答えがある。
バーメ  馬鹿な、止めろ、止めろ!

   ハーメルン、笛を吹こうとする。モモ、時間を止めて笛を回収。時間が動き
   出す。雪の女王は足を凍らせ、赤頭巾は銃を構える。

ハーメ  止めるんだ!後悔するぞ!
白雪姫  確かめなくちゃ、真実を!

   白雪姫、後方にある扉を開く。騎馬の音、金属音、火器の音、号令、雄叫
   び、怒号、絶叫、悲鳴、歓喜の声、戦場の音が響き渡る。暫時の沈黙。

白雪姫  戦争は…起こっている。
ハーメ  あなた達女性に、現実を見せたくなかった…それだけなのです。

   暫時の沈黙。

白雪姫  戦争は起こっている…誰にも操られていない…ということはやっぱり
     この中に魔女が…
赤い靴  誰よ!?
マッチ  誰でもいいよ。
 茨姫  さて、誰かしらね。
 女王  誰じゃ!?
赤頭巾  誰なの!?
 モモ  誰ですか!?
人魚姫  誰!?。
 ホレ  だあれ!?
 冠者  どなたですか!?
グレー  どいつ!?
かぐや  いづれの方!?
ラプン  誰々!?
 家鴨   誰だよ!?

   白雪姫、鏡を取り出す。

白雪姫  鏡よ鏡。この中で…魔女なのは誰?

   暫時の沈黙。

白雪姫  …あ、そういうこと。

   暗転。この中に魔女はいるのか?いるとすれば誰なのか?戦争は本当に
   起こっているのか?神の御子とは?ハーメルンに真の目的はあるのか?
   果たして皆は操られていたのか?全ての謎は残るも、我々が観られるの
   はここまでである。光がゆっくりと落ちていく。幕。

(終わり)