これは語ればキリがないので、いつも通り七人のアーティストから、2曲づつフィーチャー(特別に起用)して語ります。
まずはやはりボブ・ディランからとすべきで、それは彼の初期のアルバム4作が全てアコースティック-ソロだからです。
ここでは4作目の「アナザーサイド·オブ·ボブ・ディラン」から2曲をフィーチャーし、まずは「モーターサイコ·ナイトメア」からにします。
これはディランが世に知らしめた「トーキング-ブルース」の歌で、一般アルバムに収録されているのはコレだけですが、ライブ-アルバムでは他にも「トーキング」の名曲が歌われており、以前紹介した「誰がデビット·ムーアを殺したのか?」もそれに当たります。
因みに「サイコ」と「サイクル」は英語では発音が殆ど同じで、私は今モーターサイクルで日本一周の旅をしているのでこれをフィーチャーしました。(今北海道のえりも半島にいます)
もう一曲は1番有名な「マイ·バックページ」にし、これは真心ブラザーズが日本語でカバーしていて、「光の雨」という浅間山荘事件を描いた映画の主題歌にもなっています。
この映画は山本太郎が主演で、同じ原作の漫画「Red」よりかは迫真的ですが、立松和平の原作「光の雨」には遠く及ばない気もします。
この小説では、浅間山荘で殺された女子の亡霊に取り憑かれた男の末路が描かれており、それには映画や漫画よりも遥かに深く心を抉られます。
話をボブ・ディランに戻しますと、彼は5作目からエレキ-ナンバーを主体とし、独自のロックを追究して行きます。
それでもアルバムのラストはアコースティック-ソロで締めるパターンが定着し、中でも後期の傑作「ああ!慈悲よ」のラストナンバー「流れ星」は、実に見事な「アコースティックへの回帰」と言えます。
2人目は新井英一とし、私は彼こそが日本で1番ボブ·ディランに近いアーティストだと思います。
ここでは以前に「聖なる歌」の回で挙げた「愛しい人」と「彷徨ホテル」をまた挙げますが、あれこれ語るよりも聴いてもらった方が良く納得して頂けるかと思います。
3人目はボブ·ディランの先輩ジョニー·キャッシュとし、この2人はデュオでも多く歌っています。
キャッシュは'50年代から活躍しているので当然アコースティックが主体で、代表作は「American Ⅱ」と「Song of our soil」です。
そこから一曲づつフィーチャーする積もりでしたが、長くなるので全部が名曲というコトで割愛させて貰います。
4人目は中島みゆきで、「ホームにて」と「泣きたい夜に」をフィーチャーします。
これは共に初期の作品で、シンプルなアコースティック-ソロですが実に味わい深く、中国では大ヒットしてカバーされています。
次に、「アコースティック」という傑作アルバムを出しているジョン·レノンから、「God」と「Watching the wheel」を挙げます。
それはオリジナルよりもアコースティック-バージョンの方が好きだからで、シンプルな弾き語りは歌が真っ直ぐに伝わって来ます。
6番目はスピッツとし、「仲良し」と「稲穂」を挙げます。
「仲良し」は高校生の頃に1番心に響いた曲で、「稲穂」は日本では珍しく「農」を謳っています。
エレキ-ナンバーが主体のスピッツのアルバムでは、こうした「アコースティックへの回帰」がとても上手く織り交ぜられています。
七人目に到達してホッとした所で、フィーチャーしようかと迷ったアーティストを挙げて置きます。
日本では河島英五、吉田拓郎、長渕剛、ミスチルなんかも良いアコースティック曲を歌っており、洋楽ではジョン·デンバー、ピンク·フロイド、サイモン&ガーファンクル、レッチリなんかも「アコースティックへの回帰」と言える名曲を歌っています。
これらの有名アーティストを尻目にしてトリを飾れるのは、「アコースティック-ギターの女王」と呼ばれるジャニス·イアンの他には居りません。
イアンの曲は全てアコースティックなので単に好きな曲を挙げますが、彼女のヒッピーとしてのバックページ(経歴)が歌われている「Guess you had to be there」が私は特に好きです。
そして締めには「Forever Young」が相応しく、これはディランの同名の曲とは別物で、女性ならではの詩が唄われています。
このジャニスの弾き語りを聴くと、彼女を超えるアコースティック-アーティストは女性ではもう現れないと思えるほど、オンリーワンの道を突き進んでおります。