早速「本」に入らせて貰いますと、まずは最近読んだ「コルチャック先生」が挙げられます。
これは同名の映画を観て感動して買った本で、この有名な児童文学作家の名前は「賞」にも成っています。
子供たちの為に己を犠牲にした彼の生涯はとても貴く、小児科医として子供の発育理論も書かれています。
次に、子供の視点で物語を綴るコトに掛けてはアメリカ1とされるウィリアム・サローヤンの「パパ・ユーアクレイジー」を挙げます。
これは「子供の心」を持ち続けていなければ出来ない芸当で、その純粋さに感銘を受けます。 「教育論」としても価値のある本で、子供の視点からそれを論じております。
日本の本では、宮崎駿の「シュナの旅」が挙げられます。 これは原作が「闇の左手」で紹介したル・グィン(国籍、性別不明)の「ゲド戦記」で、その始めの一章をグラフィック・ノベルにアレンジしています。
これは遠い未来のチベット高原が舞台の物語で、少年シュナは失われた大麦の種を求めて旅に出ます。 その過程で奴隷商人に捕らえられていた少女テアを助け出し、二人は後に助け合って人類の「最終戦争」を生き延びます。
子供が主人公の物語としては、キップリングの「キム」が有名です。 これは19世紀イギリス支配下のインド北西部が舞台で、キップリングはそこで生まれ育ちました。
キムはイギリス人の血を色濃く持つ孤児で、インド北西部の首都ラホールで逞しく自活し、冒険の旅へと出ます。
この物語の見処はやはり体制批判に在るかと思い、イギリス支配だけでなく権威的なイスラム教もキムは毛嫌いします。 彼が尊敬するのはラホール博物館で考古学を極めようとする学者や、パシュトゥン族キャラバンのリーダーなどで、パシュトゥン族というのはアフガニスタン東部に住むアレキサンダー遠征の末裔達です。
キムが冒険するのもこのアフガニスタン東部で、そこには昔「愛の国ガンダーラ」が在り、その痕跡を探し求めるチベットの老僧と旅を共にします。
この老僧はキムを善く導き、キムも老僧を善く介護して、子供と老人の美しい絆を描きノーベル文学賞を最年少で取りました。
ラストもノーベル文学賞を取った、カズオ・イシグロの「私たちが孤児だったころ」を挙げさせて貰います。
これは前にも少し紹介しましたが、日中戦争勃発間際の上海で生まれ育ったイギリス人少年クリストファーと、日本人の血を色濃く持つ孤児アキラとの友情と冒険の物語です。
クリストファーの父親は「東インド会社」の重役で豪邸に住んでいましたが、母親は阿片貿易に反対していて夫婦仲は最悪でした。 アキラは悩めるクリストファーの善きアドバイザーとなり、英語も習得し日本語と中国語も操る少年として、魔都上海で立派に自活します。
当時の上海では、イギリスと日本が競って阿片を流通させており、中国の軍閥(ギャング)もその手先と成っておりました。 クリストファーの母はそんな「悪」に対抗するクリスチャン組織を立ち上げ、父もそれを止められなかった為に二人ともギャングに拉致されてしまいます。
孤児となったクリストファーはアキラに助けられ、二人はギャング組織に対抗する為にそれぞれイギリスと日本に行って力を蓄え、逞しい青年と成って開戦間際の上海で再会します。
このストーリーの流れは現実的ではありますが、そんな悠長なコトをしていたので父はとっくに殺され、母も中国人ギャングの劣等感から慰め者にされて、助け出されますが精神を病んでしまいます。
「子供の本」としては多少リアリティーが欠けるとしても、アキラとクリストファーには即座に両親救出の行動を起こして貰いたく、子供たちの活躍で病んだ大人たちの「悪」を打ち砕いて欲しかったです。