見出し画像は、中国が最近「シャングリラ」として観光地化を進めている秘境の入り口です。
このコラムで語られている様に、ここは地球上で最後の「人類未踏地」で、シャングリラを描いた小説「失われた地平線」の舞台ともされているので、中国の主張には一応「神話的」根拠があります。
「失われた地平線」は1933年にイギリス人作家によって書かれて二度映画化されており、この手の「理想郷モノ映画」は後にも幾つかリメイクされました。
そこには古代文明の叡智が残っており、人々は非常に長寿で幸せに暮らしていると描かれます。
この「神話」は、「聖書」や「ギーター」なんかとは比べ物にならない程リアルで、宗教と科学を統合するという文学的野心も見られます。
私が今回描いた「Say - ヒマラヤの女王」もそんな「神話」で、一万年前の古代文明そのモノを描いています。
こうした古代の「神話」は世界中にあり、ネイティブ-アメリカンや日本のモノが辛うじて残っておりますが、そこには新しい息吹きが必要かと思います。
この「神話の必要性」については、星野道夫さんも「旅をする木」に書かれており、この題名は時を超えて「旅をする」アラスカのトーテムポール(枯れた木を彫刻したモノ)を指しています。
「旅をする木」には文字を持たなかった古代人の「神話」が刻まれており、チベット高原の木も生えない様な奥地では岩にそれが刻まれています。
もっともチベット文明は古くから文字を持っていたので、その神話は「埋蔵経」として洞窟の奥から発見されており、「チベット死者の書」もその一つとされています。
この書では人はみんな死んだ後に、人生を49日で総括するスピリチュアルな旅に出ると描かれており、仏教の輪廻思想を形作る原型になりました。
今でもチベット人はこの「古代文明の叡智」を引き継いでおり、彼等にとって人生は永遠に近いほど長いモノと成っております。
最後に見出しの写真で締めますと、ここに映っている木は桃の原種とされる杏子の木で、ヒマラヤ西端のシャングリラ地方にも多く植えられています。
杏子はコーカサス地方でも一番人気の果物で生で食べると実に美味しく、長寿にも大きく関わっているとされる「サットヴァ」な食物です。
因みに、中島みゆきに「あんず村から」という歌があり、日本の山里にもこんな景色が広がっております。