真の動物福祉牧場を目指して

I shall be free 弐

 「#本」としましたのは、ローヤでは本がとても貴重な存在に成るからです。

 前回、10日間ぶち込まれた内の4日は検察庁でシゴかれたコトを書きましたが、残りの6日は留置所で平穏に過ごせました。

 留置所は罪が確定していない囚人達の拘留場所で、ケーカン達もわりとフレンドリーに対応してくれ、ローヤには変わりありませんが手錠を掛けられるコトも発声を咎められるコトもなく、それだけでパラダイスの様に感じたモノです。

  

 ここでも10時間の放置プレイが行われるコトは前回述べましたが、六畳の部屋では自由に活動ができ、私は折り紙や手紙、ヨガやチベット体操、大学のサークルで習った空手と合気道の型、そして手を打ち声を出しての唱題(10通り)も行えました。

 唱題については南無妙法蓮華経とオムマニぺメフムの同義性を前に紹介しましたが、祈りのマントラ(真言)は「アーメンハレルヤ」でも「ラーイラッハインアンラー(イスラム教)」でも結局は同じに思え、他にもヒンドゥー教(二つ)やネイティブアメリカンの「ホーミタコヤシン」、中国やアフリカやオリジナルのマントラも唱えています。

 

 話を留置所での一日に戻しますと、残り14時間の内の1時間は食事や洗面に当てられ、あとの13時間は本が読めました。

 これは17才でアメリカに留学して以来、日本語の「活字中毒」になった私にとっては実に有難い時間で、周りの誰よりもアプリーシエイト(感謝、享受)出来たかと思います。

 今回はそうして出会えた、警察署公認の本について述べたいと思います。

 

 ロバート・ハイライン「夏の扉」: これは初めの2日間独房に入れられてた時に読み、検察庁でシボられた後に3時間ずつしか読めなかったのですが、私の心を実に Free にしてくれました。

 ストーリーは三回も前後にタイムスリップするハチャメチャなモノですが、人生の夏を謳歌する為にそれはやむを得ず、冒頭で「全ての猫好きの人々に捧ぐ」と書かれたワイルドな名作でした。

 

 村上龍「55歳からのハローライフ」: 次に読んだのはこれで、四つの職業をフィーチャーする中編から成っています。 一番印象に残ったのは最後の「トラベルヘルパー」で、これは職業についてラストまで明かされない構成でした。 主人公は元トラックドライバーの60男で、謎の美女と古本屋で出会って交際を始めますが、彼女は「トラベルヘルパー」であるコトを隠しており、それを探り当てた主人公は絶交されてしまいます。 自殺しようと故郷の岬にやって来た主人公は、そこでようやく彼女の気持ちを悟り、自分も「トラベルヘルパー」に成る決意をして物語は幕を閉じます。 私もヘルパー(介護)の仕事は10ヶ所程で経験しましたが、こんなジャンル(最期の旅をヘルプする)もあったのかと正直驚きました。

 

 重松清「とんび」: これもトラックドライバーが主人公の物語で、刑務所では定番の推奨本みたいです。 罪を否認し続けて2年の実刑をくらったホリエモンも獄中記で推奨しており、確かになかなかディーセント(慎み深い)な物語でした。 しかし私はホリエモンにもこの本にもそれ程共感を覚えず、昔のトラックドライバーがどんなに羽振りよく日本経済を盛り立てたかという話にも余り興味は沸きませんでした。 ホリエモンが獄中でも信念を曲げずに本を書いたコトは称賛しますが、私なら要領良く「ゴメンナサイ」を言って自由(執行猶予)を獲得したかと思います。

 

 カズオ・イシグロ「私たちが孤児だったころ」: ノーベル文学賞を取った彼の本は初めて読みました。 1930年代の魔都上海を主な舞台とし、そこで生まれ育ったイギリス人青年(クリストファー)が、日本人の幼馴染(アキラ)と一緒に冒険をくり広げる物語です。 それはアヘン貿易に反対して消された主人公の両親を探す冒険で、当時のイギリス・日本はアヘンをばら撒いて中国人をダメにしようと競争しておりました。 そんな醜い大人達に立ち向かう青年の冒険は潔く、当時の国民党も共産党も他の軍閥もみんな軍資金を得る為にアヘンをばら撒いており、四面楚歌の中で正義を貫く姿勢は感動を呼びます。

 

 特に心に残った小説はこんな所で、評論では櫻井よしこ「大人たちの失敗」や倉山満「保守とネトウヨの近現代史」が勉強になりましたが、長くなるので解説は省かせて貰います。

 とにかく私にとってローヤでの日々は、またと無い本と向き合えるチャンスで、とても良い経験になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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