前回少し語った、優樹(ユーシュー)に於ける5年に及ぶ持久戦も、渓谷に要塞を築いて人民解放軍の侵攻を防ぎました。
これはアメリカ-インディアンも取った戦法で、渓谷の両側に敷陣して敵を挟み撃ちにしました。(「リトルトリー」に描かれている)
ウラン鉱山も渓谷の奥にあり、そこへ行くには谷底の道路を通らざるを得ません。
「党」は戦車部隊を送り込んで来ますが、道路は岩で塞がれて、それを撤去しようと外へ出た兵士は狙い射ちされます。
この渓谷での戦いはチベット人の得意とする所で、要塞を築く時間はなかったので空からの攻撃で破られますが、戦いのプロであるタシの指示で挟撃のポイントは幾重にも敷かれ、人民解放軍はなかなかウラン鉱山まで進軍できません。
こうしてタシ達が時間を稼いでいる間に、ターシャは次々と囚人達の証言をアップして行きます。
彼女は3000人みんなを撮影しようとし、巧みにそれぞれの人生の「妙」を聞き出します。 それは彼等の生きて来た証であり、アップされた動画が増えるほどに「刺さる」視聴者も増えて行きます。
囚人達の中には漢族のクリスチャンも居り、彼等は「殺すなかれ」の教えを敬虔に守ります。 なので戦線を離脱して投降しますが、彼等はウラン鉱山内に警備兵がみんな生きて捕らえられているコトを伝えます。
これはウラン鉱山への激しい空爆を防ぐ効果があり、「党の軍隊」も仲間を生き埋めにする危険はさすがに犯しませんでした。
蜂起は持久戦となり、追い込まれたら直ぐにメーヴェで離脱するように指示されていたリタメイは、思わず永くウラン鉱山に留まるコトとなります。
彼女は銃撃戦には加わりませんが、メーヴェによる偵察を買って出ます。
1000m位まで舞いあがればもう鳥と区別が付かないメーヴェから、リタは敵の動きを俯瞰します。
それによって山越えルートで侵攻して来る敵を見つけ出し、待ち伏せで撃退するコトに貢献します。
持久戦は一月を越し、その間ずっと囚人側には死者が出て、その弔いはターシャが行います。
彼女は49日間のバルドゥ祭を完遂させるとみんなに誓い、それはチベット人にとって何よりの餞(はなむけ)でした。
彼等は死を恐れずに最期まで戦い抜き、己のカルマを全うしたという満足感の中で49日間のバルドゥ(中有)へと臨みます。